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5.モルバーン学園(一年生編)
5-63.回想より(ローレンス視点)
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竜騎士団が設立された当時、竜はヴァンデ、マーロン、モーゼズの三頭しかいなかった。
重装備になると一頭に一人しか乗れない以上、三人しか出撃出来ないのであれば予算など与える訳にはいかないと文句を言い出したのはこの国の宰相、トモンドモン侯爵だった。
そのような話を俺にするのは宰相ではなく、伝言役のカードウェリア子爵でまだ若い30代で爵位を継いだ者だった。
カードウェリア子爵は俺らに対して愛想がよく、仲介役を買ってくれていたのだ。
仲介と言っても、こちらの状況を良く言ってくれたり、怒れる宰相を宥めたり、予算の相談に乗って極力多く出すように話をしたりしてくれていたらしい。
宰相との面会は一度だけ。
竜騎士団設立の任命式で陛下に謁見した時に騎士団団長の証となるマントを手渡したのが宰相だったが、それは余りにも冷たい目線で見下したものだった。
後からカードウェリア子爵から聞いた話では、平民が団長に即位するのが気に食わなかったらしく、挙句その事を気にかけた陛下が一代限りの騎士爵を与える事を宰相に相談し、実績もないのに爵位を与えるなど言語道断と突っぱねたのだ。
当時、オーガスティンというカードウェリア子爵の弟にあたる者が竜騎士団に在籍していたのだが、カードウェリア子爵の手前、彼を副団長の座にするかどうかという話を、団内で話し合ったのだが誰も賛成しなかった。
問題としてはオーガスティンがどの竜にも懐かれず、むしろ上半身を咥えられ遠くに射出されるという事故が発生したからだ。
オーガスティン自身の素行にも問題があった。
上からの態度で竜に接したり、暴力を振るったりと、竜を相棒として見る気はさらさらなかったのだ。
オーガスティンに苦言を呈した事もあるのだが、平民ごとぎが偉そうに言うなと聞く耳を持たなかったのだ。
ある日事件が起きた。
オーガスティンと同時に入団した者が厩舎に火を放とうとしている所を捕まえた。
だが、その者も貴族の末席に連なる者でオーガスティンの学友だといい、オーガスティンはその者を処分するなど何事かと反発したのだ。
結果、当時の団員15人の内、貴族は二人、それに従う者は三人という貴族派が結成され、十人対五人の対立が生まれた訳だ。
その事態が内部分裂とみなされ、団長失格だと烙印を押したのが宰相だ。
そして、オーガスティンを団長として再編成するようにとお達しがカードウェリア子爵から伝えられたのだが、そんな事はカードウェリア子爵も望んでいないと、力及ばずと謝罪をする程だった。
それから俺は副団長の地位に落ちて半年を経過する事になったが、ヴァンテの奴が空気を敏感に感じ取ったのかオーガスティンを背に乗せた。
貴族派は歓喜に酔いしれたのだが、その日、オーガスティンは失踪した。
事の真相はヴァンテの奴がとある孤島に行き、オーガスティンを振り落として帰って来たらしい。
帰ってくるまでの二カ月の間、俺は不在となった団長に代わり、団長代理の任についていたのだが、その帰還直後、俺はヴァンテを使ってオーガスティンを陥れたとして牢獄に入れられた。
最早どうにもならんと思った。
団長でも、団長代理でも、副団長でもなくなった俺に残ったものなど何もない。
牢屋で暮らすようになってしばらくしてヴァンテを殺処分する事になりそうだと、カードウェリア子爵が教えてくれた。
それは宰相からの指示で覆せそうにない事案だという。
当然、俺の腹は煮えくりがえった。
その怒りは、いつの間にか牢屋の鉄格子を曲げてしまっていた。
やすやすと脱獄できる状況となったその時、お尋ね者になる事を覚悟した。
そして、それに同調するかの様にヴァンテが俺の元に現れた。
『一緒に逃げよう、ローレンス』
そう、言ってるように聞こえたのだ。
逃げた先、国境付近の森の奥で俺は狩をしてヴァンテと一緒に自給自足の生活を始める。
もう、帰れなくなった竜騎士団の詰め所の事を思いながら、廃墟になりつつあった小屋で夜を明かす。
半月が過ぎたころだったか、森の様子がおかしい事に気が付いた。
ヴァンテの存在を嗅ぎ付けた王国の兵士が来たのかと、俺は単独で周りを捜索する事にした。
池の畔にたどり着いた時、バシャ、バシャと水の音が聞こえる。
そこには澄んだ空気の中、水浴びをする美しい女性の姿があったのだ。
小さくか細い悲鳴に俺は咄嗟に背を向けて謝罪した。
彼女はカオリと名乗り、行くあてもなく彷徨っていたという。
カオリはヴァンテと会うと、怖がることもなく興味津々で話しかけた。
彼女のその行動力が気に入ったのかはわからないが、カオリとヴァンテはすぐに仲良くなった。
それから、一カ月ほどは二人と一頭の生活が始まったのだが、その間に俺とカオリの距離も縮まってゆく。
身寄りのないカオリは寂しさを紛らわせるかのように俺に身を寄せてきた。
俺もそれに応え、次第にそれは愛へと変わっていった。
ある日、遠くに竜が飛ぶ姿が見えた。
カオリと二人でヴァンテの背に乗り、竜を追いかけた。
その先ではソルレーン軍が小国プルサウンに押し入っていた。
プルサウンは早々に降伏し、その勢いでバーランド王国に攻め入ろうとしていた。
そこにマーロン、モーゼズに乗った貴族派の二人が低空飛行でソルレーン軍に火を吐けと命令した。
飛び交う弓矢の雨に二頭の竜は上空に上がろうとするが、それを搭乗者は上がるなと命令する。
二頭の竜は命令を聞けないと二人を振り落とし、その場を去ってしまった。
敵軍に取り囲まれた二人を見殺しにも出来なかった俺は地上に飛び降りた。
大剣を振りまわし、風を起こし周りを吹き飛ばすとその勢いで二人を逃そうとしたが、その二人はオーガスティンとその子分だった。
「脱獄犯!どうしてこんなところに!丁度いい、お前、俺らを助けろ!」
「何寝言を言ってやがる、お前らだと知ってたら助けに入らなかったぞ」
「全く、ドラゴンもお前も役立たずだ!帰ったら殺処分だな!」
「じゃあ、お前らを助ける義理はないな。俺は逃げるからお前らはとっとと捕まって処刑されろ」
「待て!」
「待つもんか、あばよ」
俺は跳躍し、建物の屋根に登り二人を見下ろした。
二人は絶望的な表情を浮かべ、命乞いまで始める始末。
あまりにも情けなくて、俺は再び敵軍との間に割り込んだ。
「もう懲りただろう?ドラゴンは生き物で、お前らが上から目線で指示したところで素直に従わねーんだよ。これに懲りたらさっさと退団する事だな」
「わかった、わかったから、助けてくれるんだよな!?」
「ああ、その言葉忘れんなよ」
それから、軍を一人で押し返した。
遅れて意外な援軍が来た事で撤退を始め、さらに後から遅れて騎士団がやって来たのだが後の祭りだ。
俺は脱獄した事を帳消しとなり、陛下から武勲を称えられ勲章を受理する事になったのだが、その際も騎士爵の話は宰相によって握りつぶされた。
まぁ、その直前が脱獄犯だったのだから仕方ない事ではあると、期待すらしていなかった。
そんな孤軍奮闘している時にヴァンテは何をやっていたかと言うと、見かけたドラゴンをカオリと共に追いかけていた。
その先では傷を負ったドラゴンが居たらしく、それをカオリが治療するとカオリに懐いたのでヴァンテとそのドラゴン達共に帰って来たのだ。
その複数のドラゴンに恐れをなして敵軍は撤退を決断したのだから感謝してもしきれない。
カオリと俺は結婚する事になり、竜騎士団の近くの借家で一緒に住む事となった。
それから、子供を身籠った時、俺の生まれ故郷で育てたいというので引っ越ししたのだが、それはまた別の話。
その時に連れてきたドラゴンは今でも竜騎士団で元気に活躍している。
ドラゴンの頭数が増えたお陰で宰相との摩擦は減ったのだが、未だにヴァンテに対して殺処分を下した事は許せないでいた。
*
「ヴァンテはすぐカオリに懐いたな、どこが気に入ったのだろうか」
「なに?そんな事も分からないの?」
「すまん、本当にわからない、教えてくれるか?」
「それはねぇ、主人公補正って奴よ。主人公が思った通りに物事が動くのは世界のルールなのよ」
「シュジンコウホセイ、か。いいな、俺もそれ手に入るかな」
「さあね、次の人生では手に入るかもよ」
「まぁ、期待しないでいるよ、今生はカオリと結婚で来た事で良しとするよ」
「もうっ・・・」
重装備になると一頭に一人しか乗れない以上、三人しか出撃出来ないのであれば予算など与える訳にはいかないと文句を言い出したのはこの国の宰相、トモンドモン侯爵だった。
そのような話を俺にするのは宰相ではなく、伝言役のカードウェリア子爵でまだ若い30代で爵位を継いだ者だった。
カードウェリア子爵は俺らに対して愛想がよく、仲介役を買ってくれていたのだ。
仲介と言っても、こちらの状況を良く言ってくれたり、怒れる宰相を宥めたり、予算の相談に乗って極力多く出すように話をしたりしてくれていたらしい。
宰相との面会は一度だけ。
竜騎士団設立の任命式で陛下に謁見した時に騎士団団長の証となるマントを手渡したのが宰相だったが、それは余りにも冷たい目線で見下したものだった。
後からカードウェリア子爵から聞いた話では、平民が団長に即位するのが気に食わなかったらしく、挙句その事を気にかけた陛下が一代限りの騎士爵を与える事を宰相に相談し、実績もないのに爵位を与えるなど言語道断と突っぱねたのだ。
当時、オーガスティンというカードウェリア子爵の弟にあたる者が竜騎士団に在籍していたのだが、カードウェリア子爵の手前、彼を副団長の座にするかどうかという話を、団内で話し合ったのだが誰も賛成しなかった。
問題としてはオーガスティンがどの竜にも懐かれず、むしろ上半身を咥えられ遠くに射出されるという事故が発生したからだ。
オーガスティン自身の素行にも問題があった。
上からの態度で竜に接したり、暴力を振るったりと、竜を相棒として見る気はさらさらなかったのだ。
オーガスティンに苦言を呈した事もあるのだが、平民ごとぎが偉そうに言うなと聞く耳を持たなかったのだ。
ある日事件が起きた。
オーガスティンと同時に入団した者が厩舎に火を放とうとしている所を捕まえた。
だが、その者も貴族の末席に連なる者でオーガスティンの学友だといい、オーガスティンはその者を処分するなど何事かと反発したのだ。
結果、当時の団員15人の内、貴族は二人、それに従う者は三人という貴族派が結成され、十人対五人の対立が生まれた訳だ。
その事態が内部分裂とみなされ、団長失格だと烙印を押したのが宰相だ。
そして、オーガスティンを団長として再編成するようにとお達しがカードウェリア子爵から伝えられたのだが、そんな事はカードウェリア子爵も望んでいないと、力及ばずと謝罪をする程だった。
それから俺は副団長の地位に落ちて半年を経過する事になったが、ヴァンテの奴が空気を敏感に感じ取ったのかオーガスティンを背に乗せた。
貴族派は歓喜に酔いしれたのだが、その日、オーガスティンは失踪した。
事の真相はヴァンテの奴がとある孤島に行き、オーガスティンを振り落として帰って来たらしい。
帰ってくるまでの二カ月の間、俺は不在となった団長に代わり、団長代理の任についていたのだが、その帰還直後、俺はヴァンテを使ってオーガスティンを陥れたとして牢獄に入れられた。
最早どうにもならんと思った。
団長でも、団長代理でも、副団長でもなくなった俺に残ったものなど何もない。
牢屋で暮らすようになってしばらくしてヴァンテを殺処分する事になりそうだと、カードウェリア子爵が教えてくれた。
それは宰相からの指示で覆せそうにない事案だという。
当然、俺の腹は煮えくりがえった。
その怒りは、いつの間にか牢屋の鉄格子を曲げてしまっていた。
やすやすと脱獄できる状況となったその時、お尋ね者になる事を覚悟した。
そして、それに同調するかの様にヴァンテが俺の元に現れた。
『一緒に逃げよう、ローレンス』
そう、言ってるように聞こえたのだ。
逃げた先、国境付近の森の奥で俺は狩をしてヴァンテと一緒に自給自足の生活を始める。
もう、帰れなくなった竜騎士団の詰め所の事を思いながら、廃墟になりつつあった小屋で夜を明かす。
半月が過ぎたころだったか、森の様子がおかしい事に気が付いた。
ヴァンテの存在を嗅ぎ付けた王国の兵士が来たのかと、俺は単独で周りを捜索する事にした。
池の畔にたどり着いた時、バシャ、バシャと水の音が聞こえる。
そこには澄んだ空気の中、水浴びをする美しい女性の姿があったのだ。
小さくか細い悲鳴に俺は咄嗟に背を向けて謝罪した。
彼女はカオリと名乗り、行くあてもなく彷徨っていたという。
カオリはヴァンテと会うと、怖がることもなく興味津々で話しかけた。
彼女のその行動力が気に入ったのかはわからないが、カオリとヴァンテはすぐに仲良くなった。
それから、一カ月ほどは二人と一頭の生活が始まったのだが、その間に俺とカオリの距離も縮まってゆく。
身寄りのないカオリは寂しさを紛らわせるかのように俺に身を寄せてきた。
俺もそれに応え、次第にそれは愛へと変わっていった。
ある日、遠くに竜が飛ぶ姿が見えた。
カオリと二人でヴァンテの背に乗り、竜を追いかけた。
その先ではソルレーン軍が小国プルサウンに押し入っていた。
プルサウンは早々に降伏し、その勢いでバーランド王国に攻め入ろうとしていた。
そこにマーロン、モーゼズに乗った貴族派の二人が低空飛行でソルレーン軍に火を吐けと命令した。
飛び交う弓矢の雨に二頭の竜は上空に上がろうとするが、それを搭乗者は上がるなと命令する。
二頭の竜は命令を聞けないと二人を振り落とし、その場を去ってしまった。
敵軍に取り囲まれた二人を見殺しにも出来なかった俺は地上に飛び降りた。
大剣を振りまわし、風を起こし周りを吹き飛ばすとその勢いで二人を逃そうとしたが、その二人はオーガスティンとその子分だった。
「脱獄犯!どうしてこんなところに!丁度いい、お前、俺らを助けろ!」
「何寝言を言ってやがる、お前らだと知ってたら助けに入らなかったぞ」
「全く、ドラゴンもお前も役立たずだ!帰ったら殺処分だな!」
「じゃあ、お前らを助ける義理はないな。俺は逃げるからお前らはとっとと捕まって処刑されろ」
「待て!」
「待つもんか、あばよ」
俺は跳躍し、建物の屋根に登り二人を見下ろした。
二人は絶望的な表情を浮かべ、命乞いまで始める始末。
あまりにも情けなくて、俺は再び敵軍との間に割り込んだ。
「もう懲りただろう?ドラゴンは生き物で、お前らが上から目線で指示したところで素直に従わねーんだよ。これに懲りたらさっさと退団する事だな」
「わかった、わかったから、助けてくれるんだよな!?」
「ああ、その言葉忘れんなよ」
それから、軍を一人で押し返した。
遅れて意外な援軍が来た事で撤退を始め、さらに後から遅れて騎士団がやって来たのだが後の祭りだ。
俺は脱獄した事を帳消しとなり、陛下から武勲を称えられ勲章を受理する事になったのだが、その際も騎士爵の話は宰相によって握りつぶされた。
まぁ、その直前が脱獄犯だったのだから仕方ない事ではあると、期待すらしていなかった。
そんな孤軍奮闘している時にヴァンテは何をやっていたかと言うと、見かけたドラゴンをカオリと共に追いかけていた。
その先では傷を負ったドラゴンが居たらしく、それをカオリが治療するとカオリに懐いたのでヴァンテとそのドラゴン達共に帰って来たのだ。
その複数のドラゴンに恐れをなして敵軍は撤退を決断したのだから感謝してもしきれない。
カオリと俺は結婚する事になり、竜騎士団の近くの借家で一緒に住む事となった。
それから、子供を身籠った時、俺の生まれ故郷で育てたいというので引っ越ししたのだが、それはまた別の話。
その時に連れてきたドラゴンは今でも竜騎士団で元気に活躍している。
ドラゴンの頭数が増えたお陰で宰相との摩擦は減ったのだが、未だにヴァンテに対して殺処分を下した事は許せないでいた。
*
「ヴァンテはすぐカオリに懐いたな、どこが気に入ったのだろうか」
「なに?そんな事も分からないの?」
「すまん、本当にわからない、教えてくれるか?」
「それはねぇ、主人公補正って奴よ。主人公が思った通りに物事が動くのは世界のルールなのよ」
「シュジンコウホセイ、か。いいな、俺もそれ手に入るかな」
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