ドラゴニック・ブラッド ~竜騎士だった俺の転生先は死んだ公爵令嬢だった。令嬢なんて面倒くせえ!勝手気ままに生きてやる!~

なのの

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5.モルバーン学園(一年生編)

5-68.カードウェリア子爵邸より

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「カロリーナ!助けに来たぞ!」

 オルドリッジ様は、満面の笑顔で入って来た。
 その顔に緊張感なんてものは一切なく、まるで遊びに来たみたいな感覚だった。
 ドアを破壊しといて遊びに来ているとはこれ如何に。

「オルドリッジ様!お助けを!」

 歯が浮いて体が浮遊しそうなセリフだ。
 もしもの事を考えて、俺の力を見せないでおこうという配慮だ。
 心の奥底では、俺が殺してやりたいくらいで腸が煮えくり返ってるのは言うまでもない。
 こいつは妻を殺した犯人の一人なのだから、トドメだけはユズレネェ。

「執事!こいつらをどうにかしろ!」

「お任せを!」

「カードウェリア!逃げる気か!」

「カロリーナ様の相手はまた今度にしてあげます。精々、寝首を掻かれないようにしてくださいな」

 そう言うと明らかに人外じみた動きで部屋を抜け出した。
 追いかけようと体が反応した瞬間、娘がいない事に気が付いた。

「カロリーナ様!少女は敵が連れ去ったのだわ!」
「この執事、できるわね!カロリーナ様がアイツを追いかけるね!」

「わかった!」

 執事はオルドリッジ様と双子に任せ、俺はカードウェリアを追いかけた。

 廊下を走っていると、途中でドアが少し開いた部屋を見つける。

 そろりと覗き込むと、灯の一つもない。

 罠かもしれないがこの部屋に居ないとなれば早く探さなくてはならない。
 つまり、この部屋にあまり時間をかけてられないという訳だ。

 思い切ってドアを勢いよく開いた。
 暗い部屋の中からは、明らかな血の匂い。

 辺り一面が真っ赤に染まる中

 真っ赤に染まった 娘が 立ち尽くしていた

 そして静かにこちらを見てこう言った。

「カロリーナ様。ごめんなさい、私、我慢できなかったの」

 心ここに有らずと言った感じに、茫然としていた。

 近づこうとすると、ぴちゃりと水たまりを踏んだような音がする。

 そこには娘を中心にした あまりにも多量 血

 血の池が広がっていた。

「フランチェスカさんは・・・怪我をしてないのですか」

「うん」

「この血は・・・もしかして・・・」

「うん。あの人の血」

「どうして」

「だって、お母さんの仇だったから───」

 何故だ 何故知っているのだ?

 当時の娘は2歳だった。
 もし、見ていたとしても覚えている筈がない。
 あの時から妻の話題も出す事もしなかった娘が仇を知っている筈がない。

「いつから知ってたんだ・・・」

「遠くから見てたの。お母さんが殺されたところ。私ね、見た物を全部覚えちゃうみたい、だからすぐわかったよ」

 にわかに信じがたい話だが、娘が嘘をつくとは考えられない
 娘がそう言うのであれば、それはそうなのだ。

 俺はセブンフェイスを手ごろなサイズで呼び出して、刀身を血で濡らす。
 さらに適当に振り回し、血しぶきを周りの壁に飛ばした。
 まるで斬撃を繰り出したかのようにだ。

「カロリーナ様、何をされているのですか?」

「いいか、カードウェリア子爵は俺が殺した。その返り血は俺が殺した時に着いた物だ、分かったな」

「それは駄目です───」

 貴族を殺したのが平民と言う事が問題になりかねない。
 だから、俺がした事にすれば丸く収まると思ったのだが、娘はそれを拒絶した。

「常日頃から父は嘘はいけないと言っていました。似ていると思ったのですが、やはり父とは違うのですね」

「時と場合による!身を護る為の嘘は仕方がない嘘だ、その事を履き違えるな!」

「ですが父の言う事の方が絶対なのです。私はこの罪に向き合わなければなりません」

「───あああああ!その父が良いというのだから良いんだよ!!」

 直後、大変な事を言った事に気が付いた。
 気が狂っていると思われても仕方がない事だが、娘はその言葉を受け入れたのか抱き着いてきた。

「お父さん・・・本当にお父さんなのですか」

「信じてくれるのか・・」

「はい・・・父は貴族を嫌っていたのにカロリーナ様は父の事を知りすぎているんですよ」

 過去において貴族を嫌っていたのは事実だ。
 何もかも覚えているというのであれば、俺が貴族との摩擦に苦しめられていた事をボヤいている所を見られたことも考えられる。
 そのすべての言動を覚えているのなら、娘に対して嘘をつき続けた事は見抜かれていたのだろう。

「こんな嘘つきの父を許してくれるか」

「うん、だって、父は必要のない嘘はつかないもの。そうでしょう?」

「ああ、そうだな」

 こうして、娘と秘密を共有する事になった。
 娘はそれ以上の事を聞こうとしないのだが、俺がオルドリッジ様と結婚した場合にオルドリッジ様は娘の義父になるのかなんてどうでもいい事に悩んでいた。
 なんとも平和な悩みだな。
 そして、俺はこの体の父であるカートレット公爵に、さらなる借りを作る事を決意したのだった。

 *

「父よ、帰って来たぞ」
「カロリーナちゃんお帰り!待っていたよ」
「そんな事より頼みがあるんだ」
「そんな事とはつれないな。珍しく娘の頼み事だ、聞こうじゃないか」
「俺の養女を紹介する、フランチェスカだ!」
「フランチェスカです、よろしくお願いいたします。公爵様」
「ま・た・か!!!仕方がないな、その娘の養女の件は既に考えていた事だ。私の娘とするとね」
「ほう、ならば借りはなしだな」
「先に頼んできたのだから貸し一つだよ、忘れるんじゃないぞ」
「くっ」
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