ドラゴニック・ブラッド ~竜騎士だった俺の転生先は死んだ公爵令嬢だった。令嬢なんて面倒くせえ!勝手気ままに生きてやる!~

なのの

文字の大きさ
144 / 193
5.モルバーン学園(一年生編)

5-72.ファーヴニルの巣にて

しおりを挟む
 単身・・、ファーヴニルの巣にやって来た。
 何故一人なのかと言うと、突然の事変が発生したからだ。
 出発しようとした瞬間、ワイバーン便の兄ちゃん経由で急報を知らされた。
 近海にアレシフェルンの軍艦が来ているという。
 それも凡そ100隻もの勢力。
 グレッグが言っていたのはこういう事かと納得していた。

 それでも、同時に戦闘に入れるのは数隻なのだから、連戦にはなるが余程の事が無い限り現戦力の戦列艦で問題ないとオルドリッジ様は断言した。
 何かあれば、大聖女の防御術で護ると娘も胸を張っていた。
 オルドリッジ様に娘の事を頼んだと言うと、娘も一緒に旗艦に同乗する事となった。

 その事はそれ程心配している訳ではない。
 恐らくオルドリッジ様はどうにかしてしまうのだろう。
 だが、グレッグが忠告した事が本当に大軍だけと言うのだろうかという疑問を持っていた。
 その事に少し焦りはしたが、俺は俺に出来る事をするしかない。
 どのみち、海戦となれば俺は無力なのだから。

 ファーヴニルの目の前に来たというのに、ファーヴニルは眠っている様だった。
 鼻先を撫でて声をかけるが起きる気配はないので、殴ったりけったりしてみたがやはり反応がない。
 仕舞には激しいクシャミをされ、俺は全身鼻水だらけになってしまった。

「キタネエ・・・」

 鼻水の量が半端ないのは当たり前だ。
 大人でも入れる程の鼻の穴から出るのだから、物量はとんでもない。
 流石にこの状態で居るのは風邪を引きそうだと思ったが、タオルなんてものは持ち合わせて無い上に着替えだって無いのだ。
 どうしたものかと悩んでいると、宝物の山の中に布物の何かを見つける。
 着るものであれば、そのまま借りてしまおうなんて思って引っ張り出すと、それはバトルドレスだった。
 純白のロングスカート、胸当て、肩当、肘当てが縫い込んであり、調整用のベルトも付いている。
 ただし大人用なので、俺が着る事はできなさそうだ。
 正直、これに一目惚れした。
 カッコイイと言わざるを得ない。
 着てみたいところだが、俺の身長が1.5倍程伸びるまでお預けだと考えると、少しがっかりだ。
 だが、きっとタオル代わりにはなるだろうと借りる事にした。
 その時ふと、汚れた手で触っても触ったところが汚れていない事に気が付いた。
 試しに、鼻水でべとべとになってる顔を拭いたり、髪の毛に絡みついた鼻水を拭き取ってみる。
 そこまでしてもバトルドレスは一切汚れておらず、新品同様だ。

「これスゲぇ!」

 思わず感嘆の声を上げてしまう。
 これは、強請って貰うしかない。
 大きくなったら着るんだ。
 そう思ってると、なにやら暖かい空気が入り込む。
 その元をだどって行くと、巣から少し出た所に水たまりがあった。
 折角なので、鼻水を洗い流そうと近寄ると、それは温泉だった。
 丁度良い温度の源泉かけ流し温泉。

「こりゃあ、入るしかねーな」

 と言う訳で、聖杯みたいな器を宝の山から拝借して、桶代わりに使って湯を浴びた。
 一通り鼻水が流し終わった状態になり、温泉に浸かってファーヴニルが起きるのを待つ事にした。
 だがその時、激痛が走る。
 娘がかけてくれていた、魔法が解けてしまった。
 それが温泉の中だったのは幸運だったかもしれない。
 一瞬は湯が赤く染まったが、それは徐々に流れて行った。
 座る事も出来ず、湯につかりながら、中腰で我慢する。
 まるで用を足すような状態だが、それを気にしてられない程に痛みは酷かった。

 尻尾が徐々に大きくなるかと思えば、足と同じくらいの大きさにまで成長した。
 最早隠しようがない。
 次にオルドリッジ様と会ったら言うしかないのだ。
 それで、嫌われたらそれを受け入れるしかない。
 別に、絶対に結婚したいと思っているわけではないのだから。

 今度は胸の方に軽い痛みが走る。
 尻尾のついでに胸がでかくなるのかと期待するが、その変化は訪れなかった。

 そして、誰かがゆっくりと歩く足音が聞こえてきた。

 やって来たのは筋肉に無駄がない若い男性だった。
 さらに、裸なのはこの温泉目当ての客なのだろう。
 秘境も秘境という、寒く山奥にあるこんなところまで来る奴がいるだろうか。

「もしかして、ファーヴニルか?」

「正解だ、我が娘よ」

「なぁ、尻尾が生えてしまったんだが、これって本当に抜けるのか?」

「一人じゃ辛いだろうな、抜いてやろう」

 尻尾と言えば背骨の延長だと思っていたのだが、どうなのだろうか。
 グレッグが抜けるという以上、別物だと思うが勢い余って背骨ごと抜かれたらどうしようなんて不安になった。
 だが、餅は餅屋と言うように、この件は任せた方がいいと俺の直感が言っている。

「わかった、頼んだ」

 ファーヴニルは湯の中で尻尾を掴むなのだが、その瞬間全身の力が抜けて行った。
 踏ん張る事もできずに、ぐったりと、湯船のへりにもたれ掛かった。
 直後内臓を引きずり出される様な感覚と共に俺の喘ぎ声が山の中に響きわたった。
 まるで性行為をしてるような声を出してしまったが、そういう感覚は一切ない。
 終った時には息切れし、まるで事後のようにぐったりとしていた。
 まさに腰が抜けたような感じだ。

「これで、尻尾は無くなったのか」

「無くなったというのは語弊があるな」

 そっと差し出された、ゴツゴツした尻尾をスッと撫でられると、ゾクゾクした感覚が全身を過ぎる。
 その尻尾は体と離れて尚、感覚が繋がっていた。

 *

「うああああ・・・これ、どうなってるんだ」
「離れてるように見えて、お前の体の一部だ。その内固まると撫でられてもなんでもなくなるぞ」
「なんだそれ、今はただの弱点じゃねえか」
「今はな、だが便利だぞ。強度は申し分なく硬くなるし、サイズも見た目も自在だ」
「つまり、ぽっけに入れたり、髪の毛の中に隠したり、髪飾りのようにする事も出来るのか」
「そうだな。髪飾りが良いだろう、尻尾とそれ以外の間に物理的な繋がりはないからな、慣れれば遠くの敵をなぎ倒すのに便利だなんだがな」
「ほう、どれくらい遠くても操れるんだ?」
「ざっと、視える範囲ならどこでも、大きさも、人の身の10倍くらいにはできよう」
「ほえええええ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主

雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。 荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。 十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、 ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。 ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、 領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。 魔物被害、経済不安、流通の断絶── 没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。 新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

処理中です...