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6.モルバーン学園(二年生編)
6-5.
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それから一週間経過し、月も変わって5月に入った。
アングレードの事が心配になっていたが、その結果を今か今かと待つしかなかった。
聖女の巡回も終わる頃だから、娘も王都に帰ってくる頃合いだ。
生徒会と店舗経営、国政と多忙な日々を過ごす中、学業だけが休息時間だった。
ぼ~っとして外を眺めていても教師は何も言わない。
クラスメイトも声をかけてこないと言った、何気に孤独感が際立っている。
友達だと思っていたレイラからも距離を置かれてしまった。
そんな事を少しだけ気にしつつ、誰にも邪魔されない時間を満喫していた。
そんな折、クラスメイトの噂話が耳に入る。
今年入学した生徒が休学して聖女巡礼に参加しているという。
そのこと自体は褒めるべき話なのだが、聖女の数がそこまで足りないという事は無いハズだ。
その為か、噂は軽い非難に変わっている。
「ウィリアム様狙いね」
「あざとい点数稼ぎ」
「実はまた魔族なんじゃない?」
様々な憶測。
悪意のある中傷。
純粋なものへの嫉妬。
不毛なゴシップが少し怖い。
それは来年入学する娘に向けらられるかもしれない言葉。
こんな言葉の刃を娘は耐える事ができるだろうか。
そんな不安が、そんな風潮が、そんな雰囲気が私を突き動かした。
「陰口ばかり叩いてんじゃねーよ。そう思うなら直接確認すればいいだろう」
うっかり出てしまった言葉でクラスメイトが怖気づく。
そりゃ、この国のトップから言われたらたまったものではないだろう。
迂闊な事が言えない相手だかこそ、孤立してしまうのも当然という事だ。
そして何の反論もない事に落胆した。
一人くらい言い返してくる骨のある奴が居たっていいのではないだろうか、と。
その日の夕方頃に教会から使いの者がやってきた。
なんでも娘が反省室入りしたという。
それは娘が他の聖女に対して暴行を加えたという罪状だった。
そしてその相手というのが、うわさの一年生だった。
その一年の名前はノーラ・ロング。
王都の外れにある小さな教会に彼女は居た。
「どういう事か聞かせてもらえないか」
「これは女王陛下、こんな寂れた教会にお越しいただき───」
スカートの裾を軽く持ち上げ、片足を斜め後ろに引いて挨拶を行うが、その言葉を遮った。
「堅苦しい挨拶は良い、何が起きたか教えてくれないか」
「それは───」
説明によると、帰りに立ち寄った村で娘は誰かと口喧嘩をしていたという。
傍から見れば村の者や少しガラの悪そうな男を味方につけて商人を追い払おうとしていた。
ただ事ではないとノーラも話に加わろうとするが、よそ者は口を出すなと無理矢理追い出されそうになった。
しばらく様子を見ていると、商人の一人が状況を説明してきた。
その人は商業ギルドの人で強欲な村人に生産物の適正な価格での買取を交渉していたが、あまりにも高い値段を突きつけてきたらしい。
そこでノーラは「強欲は身を滅ぼしますよ」と説得を試みた所、娘に突き飛ばされ馬乗りで殴られたと言う。
「本当なんです、私は暴力が嫌いで抵抗すらしてなかったのですが、本気で殴りかかってきたんです。元は平民だと言いますし、仕方がない事かもしれませんが、私はあのような方が陛下の妹になってる事が恐ろしいです、あんな小さな子があんな狂暴だなんて・・・」
娘は10歳、14歳のノーラを押し倒すには体格差が大きいので、普通なら考えにくい話だ。
が・・・娘には護身術なり色々教え込んでいるのでできない訳ではない。
「そうかそうか、じゃあちょっとフランチェスカと話をさせてもらえるかな」
「やめた方がいいですよ、ちょっと前まで凄く取り乱していましたから」
「大丈夫だよ、なんたって私はあの子の姉だからな」
そう言ってようやく娘と二人きりになる事が出来た。
反省室は薄暗く、ベッドと机があるだけで窓も高い所にしかない。
狭くて息苦しい、まさに反省する部屋と言った感じだ。
その部屋の中で、娘は膝を抱えていた。
私が声をかけるとようやく顔を上げてこちらを見る。
「フランチェスカさん、分かってますね」
「はい、拳で決着をつけます!」
「よし! いやいや、よしじゃない!」
「だって、父は正しい事をした時は絶対に謝るなって言っていましたよ?間違ってます?」
「だからといって殴るな、貴族になったんだぞ、しかも公爵令嬢だぞ、暴力より口で負かせるようになれ!」
「はぁ、貴族って煩わしい・・・」
一体誰に似たのやら、妻はそこまで血の気は多く無かったような気がするのだが・・・。
結局、娘は私が引き取ると言って連れ帰った。
当然ながらこれ以上の暴力沙汰は起こさせなかった。
だが、この事で少し風向きが変わったのは仕方がない事だった。
*
「これで良かったの?」
「よくやってくれた。これであの村も大人しくなるでしょう。まったく困ったものです」
「ロレンツォ様は回りくどい事するのね」
「おやおや、ノーラ嬢こそ、ノリノリだったと聞いていますよ」
「だってねぇ、あんな平民のガキが王族になるなんて有り得ないでしょ。アレが王妃なんかになったら荒れるわよ」
「その時は、今の女王陛下もただじゃすまないでしょうな」
「あらあら、またこの国、荒れちゃうの?」
「そうなっても、それはクーデターではなく民意ですよ。我々にとって当然の権利です」
アングレードの事が心配になっていたが、その結果を今か今かと待つしかなかった。
聖女の巡回も終わる頃だから、娘も王都に帰ってくる頃合いだ。
生徒会と店舗経営、国政と多忙な日々を過ごす中、学業だけが休息時間だった。
ぼ~っとして外を眺めていても教師は何も言わない。
クラスメイトも声をかけてこないと言った、何気に孤独感が際立っている。
友達だと思っていたレイラからも距離を置かれてしまった。
そんな事を少しだけ気にしつつ、誰にも邪魔されない時間を満喫していた。
そんな折、クラスメイトの噂話が耳に入る。
今年入学した生徒が休学して聖女巡礼に参加しているという。
そのこと自体は褒めるべき話なのだが、聖女の数がそこまで足りないという事は無いハズだ。
その為か、噂は軽い非難に変わっている。
「ウィリアム様狙いね」
「あざとい点数稼ぎ」
「実はまた魔族なんじゃない?」
様々な憶測。
悪意のある中傷。
純粋なものへの嫉妬。
不毛なゴシップが少し怖い。
それは来年入学する娘に向けらられるかもしれない言葉。
こんな言葉の刃を娘は耐える事ができるだろうか。
そんな不安が、そんな風潮が、そんな雰囲気が私を突き動かした。
「陰口ばかり叩いてんじゃねーよ。そう思うなら直接確認すればいいだろう」
うっかり出てしまった言葉でクラスメイトが怖気づく。
そりゃ、この国のトップから言われたらたまったものではないだろう。
迂闊な事が言えない相手だかこそ、孤立してしまうのも当然という事だ。
そして何の反論もない事に落胆した。
一人くらい言い返してくる骨のある奴が居たっていいのではないだろうか、と。
その日の夕方頃に教会から使いの者がやってきた。
なんでも娘が反省室入りしたという。
それは娘が他の聖女に対して暴行を加えたという罪状だった。
そしてその相手というのが、うわさの一年生だった。
その一年の名前はノーラ・ロング。
王都の外れにある小さな教会に彼女は居た。
「どういう事か聞かせてもらえないか」
「これは女王陛下、こんな寂れた教会にお越しいただき───」
スカートの裾を軽く持ち上げ、片足を斜め後ろに引いて挨拶を行うが、その言葉を遮った。
「堅苦しい挨拶は良い、何が起きたか教えてくれないか」
「それは───」
説明によると、帰りに立ち寄った村で娘は誰かと口喧嘩をしていたという。
傍から見れば村の者や少しガラの悪そうな男を味方につけて商人を追い払おうとしていた。
ただ事ではないとノーラも話に加わろうとするが、よそ者は口を出すなと無理矢理追い出されそうになった。
しばらく様子を見ていると、商人の一人が状況を説明してきた。
その人は商業ギルドの人で強欲な村人に生産物の適正な価格での買取を交渉していたが、あまりにも高い値段を突きつけてきたらしい。
そこでノーラは「強欲は身を滅ぼしますよ」と説得を試みた所、娘に突き飛ばされ馬乗りで殴られたと言う。
「本当なんです、私は暴力が嫌いで抵抗すらしてなかったのですが、本気で殴りかかってきたんです。元は平民だと言いますし、仕方がない事かもしれませんが、私はあのような方が陛下の妹になってる事が恐ろしいです、あんな小さな子があんな狂暴だなんて・・・」
娘は10歳、14歳のノーラを押し倒すには体格差が大きいので、普通なら考えにくい話だ。
が・・・娘には護身術なり色々教え込んでいるのでできない訳ではない。
「そうかそうか、じゃあちょっとフランチェスカと話をさせてもらえるかな」
「やめた方がいいですよ、ちょっと前まで凄く取り乱していましたから」
「大丈夫だよ、なんたって私はあの子の姉だからな」
そう言ってようやく娘と二人きりになる事が出来た。
反省室は薄暗く、ベッドと机があるだけで窓も高い所にしかない。
狭くて息苦しい、まさに反省する部屋と言った感じだ。
その部屋の中で、娘は膝を抱えていた。
私が声をかけるとようやく顔を上げてこちらを見る。
「フランチェスカさん、分かってますね」
「はい、拳で決着をつけます!」
「よし! いやいや、よしじゃない!」
「だって、父は正しい事をした時は絶対に謝るなって言っていましたよ?間違ってます?」
「だからといって殴るな、貴族になったんだぞ、しかも公爵令嬢だぞ、暴力より口で負かせるようになれ!」
「はぁ、貴族って煩わしい・・・」
一体誰に似たのやら、妻はそこまで血の気は多く無かったような気がするのだが・・・。
結局、娘は私が引き取ると言って連れ帰った。
当然ながらこれ以上の暴力沙汰は起こさせなかった。
だが、この事で少し風向きが変わったのは仕方がない事だった。
*
「これで良かったの?」
「よくやってくれた。これであの村も大人しくなるでしょう。まったく困ったものです」
「ロレンツォ様は回りくどい事するのね」
「おやおや、ノーラ嬢こそ、ノリノリだったと聞いていますよ」
「だってねぇ、あんな平民のガキが王族になるなんて有り得ないでしょ。アレが王妃なんかになったら荒れるわよ」
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