魔法使いを夢見る少女の冒険譚

夢達磨

文字の大きさ
49 / 64
第4章 悪夢の王国記念日編

第10話 残された者たち

しおりを挟む

「楽しませてやるから、お前らも全力でかかってこいよぉ!?」

 アクィラはバロンとレオンの間に素早く飛び込み、鎌を力強く振り下ろしました。刃がバロン侯爵の武器とぶつかり合い、鋭い金属音が響きます。その後、アクィラは一瞬で距離を取り、ニヤリと笑いました。

 床に転がっているフィーダーが視界を邪魔するのを感じたのか、アクィラはフィーダーの襟を掴み、その体を周囲の空間に力強く投げ込みました。

「おい! もう一人の無能もさっさと中に入れ! 戦闘の邪魔だ!」と大声で叫びます。

 すると、玉座の後ろから「まったく、人使いが荒い奴だなぁ」とぼやきながら、一つの仮面が空間に入っていきました。仮面の正体は、パルスの本当の姿であるようです。

 その頃、ビーリスはグレイスの目線に合わせ、優しく告げました。「いいですか、グレイス。この場は危険です。決して離れないでくださいね」

 グレイスは力強く頷き、「分かりました、お父様」と応じました。

 ビーリスは忠告を終えると、すぐに空間へ向かって走り出しながら叫びました。

「レオン伯爵、バロン侯爵! リトニア国王の護衛は私に任せて、お二人は戦闘に集中してください!」

「ビーリス公爵! 国王様をどうかお願いします!」

 レオンの言葉に応えるようにビーリスは短く頷き、意を決して空間に飛び込みました。

「あ? 虫ケラ一匹に何ができる?」

 アクィラが冷笑を浮かべて挑発すると、レオンが怒りを込めて言い返しました。

「公爵を虫ケラなどと言うな。何故、リトニア国王を狙う?」

 アクィラは興味なさげに肩をすくめました。

「俺様たちのボスが、あの虫ケラの王に用があるんだとよ。細かいことは知らねぇが、ボスの役に立てば俺様もご褒美として力を与えてもらえるんだ。まあ、本当はハンターギルドの連中にここで暴れさせ、魔道具で城ごと吹き飛ばす予定だったのにな。それなのに簡単に懐柔されるわ、うちの無能どもはなんの役にも立たねぇしよー!」

 その時、グレイスの姿が視界の隅に映り、ゼルは声を張り上げました。

「グレイス嬢ーー! 戻ってきてください!」

 突如、ゼルの叫びが大広間に響き渡りました。

 なんということでしょう、グレイスが自ら空間の中へと飛び込んでしまったのです。その直後、その空間は静かに消えてしまいました。

「グレイス嬢!? どうして!?」

 バロンが気づいた時には既に遅く、動くこともできませんでした。

「んあ? 誰か空間の中に入ったのか? まったく気づかなかったぜ。まあ、虫ケラが一匹や二匹増えたところで問題ねぇだろう」とアクィラが嘲笑を浮かべました。

「グレイス嬢ーーーー!」

 ゼルは必死にグレイスを追おうとしますが、足がもつれてその場に倒れ込んでしまいます。

 メルジーナはゼルに近づき「大丈夫?」と声をかけました。

「俺様は問題ない。でも、グレイス嬢が!」
「ビーリス公爵が一緒にいるから大丈夫だ。君たちは黙って見てるがいい」とソフィアが冷たく言いました。

「ったくー、耳障りなガキだなー。ワープゾーンが消えてるんだから追いつけるわけねぇだろ。お前らの主人が連れ去られたってのに、案外落ち着いてるな? 心配はしねぇのか?」

 バロンは冷静に言い返しました。「国王様とビーリス公爵が、お前たちのような者に負けるはずがないのでな」

 レオンも続けて「その通りです。我々はここであなたを倒します」と、鋭い視線でアクィラを睨みました。

 アクィラは楽しげに笑い、「いいねぇ。俺様の任務はもう終わってるが、せっかくだから少し遊んでやるよ。いくぜ!」と叫び、勢いよく飛び上がると、力強く「はあぁぁぁ!」と声をあげながらレオンに攻撃を仕掛けました。

 レオンは瞬時に剣に炎を纏わせ、アクィラの攻撃を弾きます。

 その隙を見逃さず、バロンはアクィラのみぞおちに膝を打ち込みました。

 しかしアクィラは微動だにせず、不敵な笑みを浮かべて「効かねぇな」と呟きました。

 アクィラはそのまま鎌を振り回し、紫色の風を巻き起こしてバロンを吹き飛ばしましたが、バロンは見事に体勢を立て直して着地しました。

「魔力を奪われ、麻痺した体でここまで動けるとは驚いたぜ。だが、これで終わりにしてやる。最後に俺様の必殺技を拝ませてやろう!」

「それは光栄だ。では、我々も力を合わせよう。レオン伯爵、準備はよろしいですかな?」

「えぇ、もちろんです」

 アクィラは鎌を高速で回転させると、二人は魔力を高め、迫る戦闘に備えました。バロンとレオンはお互いの剣をクロスさせ、そこから溢れる魔力でアクィラを包囲するように、炎と闇のオーラが一周します。二つの魔力が混ざり合い、黒い炎が燃え上がりました。

「あの構え……!」

「ついに来るわね……!」

 ゼルとメルジーナはその構えに見覚えがあるようです。

「君たち、本当は元気だろ?」とソフィアは疑問を投げかけます。

「もう逃げ場はないぞ」とバロンが言い放つと、アクィラは「逃げるかよ! これが最後の一撃だ、『デッドエンド・パープルストーム』!」と叫び、鎌から紫色の竜巻を放ちました。凄まじい勢いで渦巻く紫の嵐が二人に向かって襲いかかります。

「受けてみろ!」とレオンが叫び、バロンが続けて「覚悟しろ!」

「「貴族の絶炎! 黒炎の支配ドミネーション・ブラックフレイム!」」

 二人が放った赤黒い火球は、大広間の半分を覆うほどの巨大な炎となり、まっすぐにアクィラの竜巻へと突き進みました。

 紫色の竜巻と赤黒い炎が大広間で激突し、爆発的な衝撃波が辺りに響きます。

「吹き飛ばしてやるぜ!」

 アクィラはさらなる力を込めて紫色の竜巻の勢いを強め、火球の勢いを押し返し始めます。

「いいねぇ! 手応えがあるぜ! もっと俺様を楽しませてみせろ!」

「レオン伯爵、魔力をさらに上げられますかな?」

「もちろんです!」

 二人は再び魔力を高め、片手を前に突き出して竜巻を力強く押し返し始めました。

「「はぁぁぁぁーーーっ!!!」」

「な、なにぃっ!? この俺様が押し負けているだとぉ!?」

 アクィラは鎌を回転させ、威力をさらに上げますが、二人の放った黒炎の火球は徐々にアクィラに迫っていきます。

 ついに彼は動きを止め、鎌を後ろに投げ捨てると、楽しげな笑みを浮かべました。

「はははっ! お前たち、なかなかやるじゃねぇか! いいぜ、今回は俺様の負けを認めてやる。だが、俺様がさらに力を得た時には――それが貴様らの最期だぁぁぁ! はははっ!」

 黒炎の火球がアクィラに触れると、激しい爆風と共に大広間は黒煙に包まれました。やがて煙が晴れると、そこにはアクィラが立ったままの姿で現れました。

「なにっ!? この一撃が効いていないのか!」と、バロンは驚愕の表情を浮かべました。

「確かにいい威力だったぜ。だが、俺様を倒すにはまだまだ足りねぇな。今日はお前らのコンビネーションに免じて見逃してやる。――あばよ!」

 アクィラは再び鎌を拾い上げると、バロンたちを大きく飛び越えて、出口へと向かって消えていきました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

九尾と契約した日。霊力ゼロの陰陽師見習いが大成するまで。

三科異邦
ファンタジー
「霊力も使えない。術式も出せない。 ……西園寺玄弥、お前は本当に陰陽師か?」 その言葉は、もう何度聞いたか分からない。 霊術学院の訓練場で、俺はただ立ち尽くしていた。 周囲では炎が舞い、水がうねり、風が刃のように走る。 同年代の陰陽師たちが、当たり前のように霊を操っている。 ――俺だけが、何もできない。 反論したい気持ちはある。 でも、できない事実は変わらない。 そんな俺が、 世界最強クラスの妖怪と契約することになるなんて―― この時は、まだ知る由もなかった。 これは―― 妖怪の王を倒すべく、九尾の葛葉や他の仲間達と力を合わせて成長していく陰陽師見習いの物語。

唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~

専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。 ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。

推しがラスボスなので救いたい〜ゲーマーニートは勇者になる

ケイちゃん
ファンタジー
ゲームに熱中していた彼は、シナリオで現れたラスボスを好きになってしまう。 彼はその好意にラスボスを倒さず何度もリトライを重ねて会いに行くという狂気の推し活をしていた。 だがある日、ストーリーのエンディングが気になりラスボスを倒してしまう。 結果、ラスボスのいない平和な世界というエンドで幕を閉じ、推しのいない世界の悲しみから倒れて死んでしまう。 そんな彼が次に目を開けるとゲームの中の主人公に転生していた! 主人公となれば必ず最後にはラスボスに辿り着く、ラスボスを倒すという未来を変えて救いだす事を目的に彼は冒険者達と旅に出る。 ラスボスを倒し世界を救うという定められたストーリーをねじ曲げ、彼はラスボスを救う事が出来るのか…?

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

処理中です...