高卒できなかったわたしは今日も時間が巻き戻る

赤衣 桃

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旧校舎

18話目

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 ざ……ざざぁ。
 ジロジロと見られている気がする。しかも半袖のセーラー服を着るようになってからさらに視線の数が増えたような。
「元気ないね。どうかしたの、ユニ」
 午前の授業が終了し、教室のはしっこの席で八雲ユニが昼食のメロンパンをかじっていると短い黒髪の彼女の前の席にブロンドの下北カホが座った。
「自意識過剰かもしれないけど、夏服になってから誰かに見られている気がして」
「ばれたか」
「カホちゃんだけじゃないと思う。多分」
「ユニもようやく男子から見られていることに気づいてしまいましたか」
 どういう意味かな? とでも言いたそうにユニが首を傾げたが、すぐにカホの言葉の意味を理解したのか短い黒髪の彼女があたふたする。

「からかわないでよ」
「ユニをからかったつもりはなかったんだけどな」
 スカートの中がクラスメートに見えるのも気にせずに制服を着崩したカホは、右手に持つオレンジの下敷きをあおいで風を送っていた。
「男の子もいるからスカートをひらつかせないほうが」
「大丈夫だって……見せパンだから。それにこうやってサービスしておくと、いざという時に頼みごとを聞いてもらいやすくなったりするしさ」
「だとしてもカホちゃんも女の子なんだから、男の子に襲われたりとかするかもしれないよ」
「襲われる? 具体的にはどんなことなのか、ぜひユニの口から聞きたいな」
 あからさまな下ネタにユニが顔を赤くする。下敷きを持ってないからか、短い黒髪の彼女は小さな左手を動かして自分の顔全体を冷やそうとしている。

「年頃の女の子らしい反応で。わたしが男の子だったら今すぐにユニを襲っていただろうね。お前のエロい身体のせいでチンコが息苦しそうにしているんだ、しゃぶれよ……とか」
「どこでそんな台詞を」
「高校生にもなったら自然と分かるものなんじゃない。わたしもどこで聞いたか忘れちゃったし」
 わたしが精神的に幼すぎるのかな。
 カホちゃんの話を信じるなら、クラスメートの男の子たちもエッチな……変なことは考えない。
「心配してくれるのは嬉しいけど、わたしよりもユニのほうが危ないと思うよ。大人しくて、頼みこんだらその大きな胸を触らせてくれそうな雰囲気だし」
「さすがに胸は触らせないから」
「揉ませてはあげるのか、ユニは心が広いね」
 カホの揚げ足を取るような言葉を聞いてかユニが不満そうな顔をした。



「心の奥底にある願いを叶えてくれる場所」
 メロンパンを完食し、残った袋をユニが小さく丸めている。マジックか短い黒髪の彼女が手を叩くと丸めた袋は消えてしまった。
「どんな願いも叶えてくれる場所じゃなくて?」
「らしいね……心の奥底にある願いを叶えてくれる場所があるんだって隣町の旧校舎の中に」
「ふーん」
 目の前に座るカホのつくり話だと思っているのか教室の自分の席に腰かけているユニが目を細めた。
「ユニは信じてなさそうだね」
「というか、どう驚けば良いのか分からない感じかな。心の奥底にある願いを叶えてくれる場所なんてなんだかしっくりこないし」
「だったら、わたしと一緒にその隣町の旧校舎に行ってみない? ちょうど夏休みも近いし、肝試しもかねて」
「二人だけで肝試しは危ないような」

 そもそも旧校舎とはいえ私有地とかだったりしないのだろうか? 肝試しだし、夜中だから警察とかに捕まる可能性だって充分にあるはず。ざ……ざざぁ。
「隣町に警察はいないから高校生が夜中に歩き回ったとしても全く問題ない。わたしとユニだけで肝試しをするわけじゃないし」
「警察がいないってどういうこと。カホちゃんとわたし以外にも誰かを誘う」
 カホにデコピンをされて……ユニが自分の額に両手で触れる。
「焦っているユニも可愛いけど落ち着いて。本人に説明をしてもらうから」
 目配せに気づき、肩幅が広いツーブロックの男子生徒がカホの隣に移動してきた。ユニと目が合うと彼は頭を下げる。

「もしかすると坂田くんも旧校舎の肝試しに参加をする予定だったりして」
「正確には肝試しとかもろもろの幹事役。主催者かな」
 坂田くんの両親はお金持ちだったはずだけど、財力で警察を動かすことなんて。
 ざ……ざざぁ。できてしまったからわたしは。
「誕生日に隣町を親からプレゼントをしてもらってさ」
「ごめん。もう坂田くんの話についていけそうにない」
「簡単にまとめると隣町の全ての所有権は坂田が握っているから警察とかの心配はないってこと」
「坂田くんは隣町の王様なんだね」
 ユニの言葉に坂田が苦笑いを浮かべる。
 会話の順番が変わっている? でも大まかには合っているのか。ざ……ざざざぁあ。
「坂田くんの他にも肝試しに参加するのは」

 わたし、カホちゃん、坂田くん、柏木くん、山本くんだったはず。肝試しに参加するメンバーなのだと分かりやすくするために制服で集まるように。
「今のところ確実に参加するのは下北さんにぼく、同じクラスの柏木と山本だね」
「どうしてわたしも誘おうと思ってくれたの」
「八雲さんも肝試しとか好きそうな感じがしたから」
 坂田くんがわたしを肝試しに誘ってくれた理由が違う気がする。
 わたしは坂田くんたちと肝試しには参加してない。
 ここにいる半透明のわたしは八雲ユニで合っているが肝試しに参加した理由とメンバーが違う。初恋の男の子がいたから怖いのが苦手なのに行ったんだ。
 だったら、半透明のわたしの目の前に座っている八雲ユニは誰なんだろう。ざ……ざざぁ。
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