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奇跡は絶対に起こらない①
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「ハチに返り討ちにする方法でも伝えているのか。それともわたしの寿命切れまでの時間稼ぎか」
シイの左手と右足のあったところから流れる黒い液体が床を汚していく。
「どちらも考えていないよ。ゴウとロクがやられた時点で負けは確定したようなもの」
ナナの言葉を嘘だと思っているようでシイは警戒したまま。彼女が妙な動きをしないかチェックしている様子。
「本音を言えば、わたしは犯人が判明すれば喜んで殺されるつもりだったんだ。人間になる理由も必要もない」
「イチへの罪悪感か」
「それも多少はあるけど、ここほど面白い出来事が現実世界にあるとは思えなくてね」
博士から聞いた情報だと、人間の世界はルールやマナーが細かいようだしさ。ナナが普段よりも聞き取りやすい声で口にする。
「ナナらしくないな。人間の世界に行けるだけでも興味を持ちそうなのに」
「わたしはシイが考えるほどアクティブじゃない。可能だったら死ぬまでミステリー小説を読んで部屋に引きこもっていたいと」
「時間稼ぎは無駄だ。ゴウとロクが生きていても、歩くのが精一杯だろう。わたしの寿命切れも数時間はかかる」
片足だけでスキップする要領でナナのいる方向に近づいてきた。
「殺すなら苦しまないように首を切ってくれ」
「目的は人間になることなんだから、アンドロイドを痛めつける趣味はないよ」
ナナがこちらを振り向く。死ぬのが怖くないようで汗もかいていない。
「わたしはシイのために殺されるつもりなんだが、ハチはどうする」
「ナナと同じですよ。人間の世界に興味はなくて、そもそもこの館や外の肉体もシイの所有物で」
「だったら、どうしてハチは泣いているんだい」
シイがわたしたちを殺して、人間になってしまうというバッドエンドが嫌だったりするのかな。
と言っているがナナは矛盾に気づいてなさそう。
「わたしが泣いたのは花粉症ですけれど。ナナこそバッドエンドが嫌いなのにシイに殺されてあげようとするのは変なのでは」
まだ気づかれてないようだし、シイを食い止める手段も使えるはず。
「単純にわたしはシイが望むバッドエンドを選んだだけのこと。ハチも人間になりたくないんだったら邪魔をする理由もないだろう」
ナナの理屈は正しくて、誰も損しないと思うが。
「なんで、わたしにシイを食い止める手段を伝えたんでしょうか」
「ハチにそんな方法を教えた覚えはない」
仮にナナが嘘をついていたとしても、人間になりたいシイに貧乏くじを引かせるのは間違っている。
わたしの命はシイに捧げるのが一番。
「シイを食い止める手段は知らないが、ゴウはハチを生き残らせるために」
「そろそろ話を終わりにしてもらって良いか」
背後に立つシイのほうを見ないで、ナナはわたしの顔を凝視する。
「ゴウのために生き残ろうとするのも、シイのために死ぬのもハチの自由。ここは現実じゃなく夢の中なんだから誰にも責められないさ」
「ただの正当化でしかないのでは、多分」
「我儘ぐらい神様も許してくださる。館の出来事を知っていて公平な判断をする存在なんだから」
確かに館や外の肉体はシイの所有物だとしても、他のアンドロイドたちを殺したことを神様は許すのだろうか。
最初に殺されたサンは館の外に憧れただけで心臓を抜き取られて、肉体まで利用されている。
イチはありがた迷惑なところもあったけど、単純に皆に服を着せようとしていただけで脳味噌を破壊される理由がない。
博士は。逆さまの状態でナナの首がシイの掌の上に乗っていた。
「まだナナと話したいことがあったかもしれないが続きはあの世でやってくれ」
ナナの頭部を床に落として、シイは粉々にする。彼女の左目がわたしの足元に転がってきた。
「シイは本当はわたしが嫌いでしたか」
「間借りをしておいて、アンドロイドのくせに人間みたいに涙を流したのはむかついたが。基本的には好きだな、わたしのために死んでくれるし」
「他の皆も好きだったのに、殺せるんですね」
「殺した皆のためにも、わたしは人間にならないといけないからな」
無表情のシイがわたしの首も落とそうと右手を。
「なんで、動けなく」
シイの振り下ろした右手がわたしの首を切る直前で止まってくれていた。
「ゴウは自分が死にそうな時だったのに、わたしとナナのためにシイにスタンガンを投げました」
わたしが右のこめかみを指で押しているのを確認してかシイが目を見開く。
「頭電話か。考えついても、まともな神経で実行をできるのはゴウしかいないだろう」
シイの動きを止められるように、ゴウがそこまで思いやりのないアンドロイドなら本棚に潰されない可能性だってあったはず。
自分の命が消えそうな時ぐらい他人のことなんて考える必要もなかったのにゴウは。
「それでハチはここからどうするつもりなんだよ。ナナが生きていればわたしを殺せたが」
シイが粉々のナナの頭部に視線を向ける。
「まさか頭がなくても肉体を動かせるように改造をしたとか言わないよな」
「わたしはシイだけに貧乏くじを引かせるつもりはありませんよ」
なんとか肉体を動かそうとしてかシイの全身から音がしていた。
「ハチは人間になる気がないんだったらこんなことをしても無意味」
「だから、わたしは心中することにしたんですよ」
確かにわたしたちは館を間借りしていて悪かったとは思いますが、殺されるほどではない。
「誰かを殺す前に、全てを話していれば皆がシイのために絶対に死んでくれたとは言い切れませんが。わたしたちにもたった一つしかない自分の命の使い方を選ぶ権利はあったと思います」
ハチは正論しか言わないから耳が痛いね、シイがわたしから目を逸らす。
「正しいが、わたしが人間になることをハチは反対している訳でも」
「シイは本当に皆を殺したかったんでしょうか」
「人間になるためだ、仕方ないと割り切っている」
「人間に戻るため、ではないんですね」
「そこまで理解をしてくれているなら、答えを確認する必要もないだろうが。哀れなわたしのために命を使ってくれないか」
シイの左手と右足のあったところから流れる黒い液体が床を汚していく。
「どちらも考えていないよ。ゴウとロクがやられた時点で負けは確定したようなもの」
ナナの言葉を嘘だと思っているようでシイは警戒したまま。彼女が妙な動きをしないかチェックしている様子。
「本音を言えば、わたしは犯人が判明すれば喜んで殺されるつもりだったんだ。人間になる理由も必要もない」
「イチへの罪悪感か」
「それも多少はあるけど、ここほど面白い出来事が現実世界にあるとは思えなくてね」
博士から聞いた情報だと、人間の世界はルールやマナーが細かいようだしさ。ナナが普段よりも聞き取りやすい声で口にする。
「ナナらしくないな。人間の世界に行けるだけでも興味を持ちそうなのに」
「わたしはシイが考えるほどアクティブじゃない。可能だったら死ぬまでミステリー小説を読んで部屋に引きこもっていたいと」
「時間稼ぎは無駄だ。ゴウとロクが生きていても、歩くのが精一杯だろう。わたしの寿命切れも数時間はかかる」
片足だけでスキップする要領でナナのいる方向に近づいてきた。
「殺すなら苦しまないように首を切ってくれ」
「目的は人間になることなんだから、アンドロイドを痛めつける趣味はないよ」
ナナがこちらを振り向く。死ぬのが怖くないようで汗もかいていない。
「わたしはシイのために殺されるつもりなんだが、ハチはどうする」
「ナナと同じですよ。人間の世界に興味はなくて、そもそもこの館や外の肉体もシイの所有物で」
「だったら、どうしてハチは泣いているんだい」
シイがわたしたちを殺して、人間になってしまうというバッドエンドが嫌だったりするのかな。
と言っているがナナは矛盾に気づいてなさそう。
「わたしが泣いたのは花粉症ですけれど。ナナこそバッドエンドが嫌いなのにシイに殺されてあげようとするのは変なのでは」
まだ気づかれてないようだし、シイを食い止める手段も使えるはず。
「単純にわたしはシイが望むバッドエンドを選んだだけのこと。ハチも人間になりたくないんだったら邪魔をする理由もないだろう」
ナナの理屈は正しくて、誰も損しないと思うが。
「なんで、わたしにシイを食い止める手段を伝えたんでしょうか」
「ハチにそんな方法を教えた覚えはない」
仮にナナが嘘をついていたとしても、人間になりたいシイに貧乏くじを引かせるのは間違っている。
わたしの命はシイに捧げるのが一番。
「シイを食い止める手段は知らないが、ゴウはハチを生き残らせるために」
「そろそろ話を終わりにしてもらって良いか」
背後に立つシイのほうを見ないで、ナナはわたしの顔を凝視する。
「ゴウのために生き残ろうとするのも、シイのために死ぬのもハチの自由。ここは現実じゃなく夢の中なんだから誰にも責められないさ」
「ただの正当化でしかないのでは、多分」
「我儘ぐらい神様も許してくださる。館の出来事を知っていて公平な判断をする存在なんだから」
確かに館や外の肉体はシイの所有物だとしても、他のアンドロイドたちを殺したことを神様は許すのだろうか。
最初に殺されたサンは館の外に憧れただけで心臓を抜き取られて、肉体まで利用されている。
イチはありがた迷惑なところもあったけど、単純に皆に服を着せようとしていただけで脳味噌を破壊される理由がない。
博士は。逆さまの状態でナナの首がシイの掌の上に乗っていた。
「まだナナと話したいことがあったかもしれないが続きはあの世でやってくれ」
ナナの頭部を床に落として、シイは粉々にする。彼女の左目がわたしの足元に転がってきた。
「シイは本当はわたしが嫌いでしたか」
「間借りをしておいて、アンドロイドのくせに人間みたいに涙を流したのはむかついたが。基本的には好きだな、わたしのために死んでくれるし」
「他の皆も好きだったのに、殺せるんですね」
「殺した皆のためにも、わたしは人間にならないといけないからな」
無表情のシイがわたしの首も落とそうと右手を。
「なんで、動けなく」
シイの振り下ろした右手がわたしの首を切る直前で止まってくれていた。
「ゴウは自分が死にそうな時だったのに、わたしとナナのためにシイにスタンガンを投げました」
わたしが右のこめかみを指で押しているのを確認してかシイが目を見開く。
「頭電話か。考えついても、まともな神経で実行をできるのはゴウしかいないだろう」
シイの動きを止められるように、ゴウがそこまで思いやりのないアンドロイドなら本棚に潰されない可能性だってあったはず。
自分の命が消えそうな時ぐらい他人のことなんて考える必要もなかったのにゴウは。
「それでハチはここからどうするつもりなんだよ。ナナが生きていればわたしを殺せたが」
シイが粉々のナナの頭部に視線を向ける。
「まさか頭がなくても肉体を動かせるように改造をしたとか言わないよな」
「わたしはシイだけに貧乏くじを引かせるつもりはありませんよ」
なんとか肉体を動かそうとしてかシイの全身から音がしていた。
「ハチは人間になる気がないんだったらこんなことをしても無意味」
「だから、わたしは心中することにしたんですよ」
確かにわたしたちは館を間借りしていて悪かったとは思いますが、殺されるほどではない。
「誰かを殺す前に、全てを話していれば皆がシイのために絶対に死んでくれたとは言い切れませんが。わたしたちにもたった一つしかない自分の命の使い方を選ぶ権利はあったと思います」
ハチは正論しか言わないから耳が痛いね、シイがわたしから目を逸らす。
「正しいが、わたしが人間になることをハチは反対している訳でも」
「シイは本当に皆を殺したかったんでしょうか」
「人間になるためだ、仕方ないと割り切っている」
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