こどくな患者達

赤衣 桃

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ここは②

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「サンの運動能力は疑ってないがハチの愛され体質のほうが楽に生き残れたかもしれない。ゴウとロクも仲間になってくれるみたいだし」
 ゴウが言っていたことが本当なら、サンの肉体を手に入れた今のシイの運動能力はこの館で一番。
「ハチが本物かどうか見抜けないほど、頭の回転は鈍くないわよ」
「ロクは相変わらず献身的だな。ハチからの矢印はそっちに向いてないのに」
 それで結構、天然娘が生き残れるんだったら矢印の向きなんてどうでも良い。むしろ、忘れてほしいぐらい。
 なんてロクの台詞を聞いてかシイがにやつく。
「ニイを殺しておいてだが、推理ショーは終わっていたよな。探偵役のナナさん」
「主役交代で、ここからはシイの殺戮ショーの開演だがそれなりに抵抗させてもらうよ」
「最低限、わたしが罪悪感を抱かない程度の無駄な努力をしてくれよな」



「ハチ。絶対に動くなよ」
 こちらに近づいてきたゴウが耳元で忠告すると、シイのところへ真っ直ぐに向かった。そんな彼女に連動するようにロクも背後から回りこもうとしてか駆け出す。
「双子で挟み撃ちね、息がぴったりだろうしコンビネーションも良いが」
「シイの頭上にソファーを設置してくれ」
 わたしを守るように移動したナナがナノマシンに命令して、五階のファッションルームにあった赤いソファーをシイの頭上から落下させる。
「ナナも絡んでくるし、さらに厄介だな」
 赤いソファーを避けて体勢が崩れたシイの顔面を殴ろうとしたゴウのパンチを片手で受け止めた。
 握り潰されかけた拳を素早く引っこめて、ゴウがシイに足払いをかけたがジャンプで避けられる。
 ナナがナノマシンに命令するのを警戒してかシイの鋭い視線がこちらに。
「残念、そっちじゃないから」
 背後から声をかけてきたロクを確認して、シイが空中で上半身を捻っていた。
「金属バットをわたしの手に」
 棒を振り回すような動きをしながら、ロクがナノマシンに命令をしているのか唇が動く。
「良い子ちゃんなのに悪知恵を働かせてきたな」
 突然、出現した金属バットを握りしめて、ロクは脳天をガードするシイに振り下ろした。
 コンクリートの壁にぶつけた時よりも金属バットから鈍い音を響かせ、シイを床に倒れこませる。
 再び金属バットを振り下ろそうとするロクを睨みつつ立ち上がろうとしたシイの顔面を、ゴウが蹴り飛ばす。
「金属バットにばかり頼るなよ。油断をしたらニイみたいに千切られるぞ」
 蹴り飛ばされたシイのところへ先回りをしたロクが、ゴウのアドバイスに従ってか彼女の顔面を。
「お姉ちゃんの言うことをきちんと聞くなんてロクも素直すぎて殺したくなくなるな」
 顔を踏みつけようとしたロクの右足を掴み、捩じ切ろうと彼女の足首を曲げられない方向に。
「意味を取り違えているようね。ナノマシンは小声でも反応してくれるから本当に便利だわ」
 ロクの持つ金属バットが斧に変わっていく。シイは彼女の右足を解放させて逃げようとしたが、風を切るような音とともに巨大な斧がシイの肉体を。
「最後はシンプルな性能の差が勝敗を左右するな」
 ロクが両腕で全力で振り下ろしたはずの斧の刃にシイが左手の親指と人差し指をめりこませていた。
 さっきのシイの動きは逃げようとしたんじゃなく振り下ろされる斧の角度や軌道を正確に把握をするため。
「真っ二つにしてくれようとしてくれて助かった。それともできるだけ早く決着をつけたかったのか」
「まだ勝負は」
 突然ロクが後方に吹き飛んだ。横たわった状態のシイがなにかを、床に穴が空いている。
 全く見えなかったがシイが右手で抉った床の一部をロクの顔面めがけて投げつけたのだろう。
 一瞬、意識を失ったのか仰け反ったロクが斧から手を放してしまったのと同時にシイが立ち上がる。
 仰向けに倒れこんだロクが起き上がれないように胸の辺りを踏みつけ、シイが片手で軽々と斧を自分の頭上に。
 怒号を放ち、見たことのない形相のゴウがシイに殴りかかろうとしていた。
「ゴウならこっちに来てくれると信じていたよ」
 近づくゴウにシイが斧を投げる。かろうじて避けられたと思ったが神経が切れたようで彼女の左腕が垂れ下がったまま動かない。
 左腕の違和感に気を取られた一瞬の間に、ゴウのお腹をシイの右足が貫いた。
「こっちも信じていたぜ、この長い足でわたしの腹を貫通させてくれるとな」
 ゴウが声をかける前に、ロクはすでに自分を踏みつけているシイの左足を両手で固定する。
 ゴウも右腕でシイの右足を動かないようにしつつナナに視線を送っていた。こちらからは見えないが今の彼女の表情はとても。
「三人を殺したことは許してやるよ。だから一緒に死のうぜ、シイ」
 悪いな、付き合わせちまってよ。とゴウがロクに謝っていた。
「お姉ちゃんの頼みを妹のわたしは断らないわ」
 シイとゴウの頭上に大量の本棚が出現をする。
「悪いね、ゴウ。わたしは一人で死にたい派だ」
 落下してくる本棚が直撃をする前にシイは自分の左手を千切りゴウの顔面に投げた。とっさに彼女は右手でガードしようとしたが間に合わない。
 ゴウのお腹から左足を引き抜いて、慌てた様子でシイが何回もロクの肉体を蹴りまくる。
「わたしたちの勝ちよ。一緒に死にましょう」
「残念だがプレゼントしてやれるのは右足だけだ」
 先程までの行動は演技だったらしくシイが冷静に手刀で自分の右足を太腿の辺りで切断した。
「ばいばい、ゴウ。ロク、最後から二番目に殺してやるつもりだったのに本当に残念だよ」
 左足だけで本棚の降ってこない位置まで移動したシイの右足のあった部分から黒い液体が出ている。
 こちらに背中を向けて分からないが潰されていくゴウとロクに黙祷でもしていて目を閉じていたか、大量の本棚の隙間を擦り抜けてシイの左のこめかみにスタンガンが当たった。
「やるじゃん、ゴウ」
 床に落ちたスタンガンを拾い、シイが握り潰す。
「ゴウとロクが確実に死んでいるかは後で確認するとして、残りはナナとハチか」
 なにかを伝えようとしているようでナナが横目でこちらを見ていた。
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