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第一章 カラハダル大森林 異世界転移 編
15.長き人生-Ⅲ
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「さてタケル、特訓を再開するぞ。まずはとりあえず、手を扇ぎながら朝と同じことをしてみるのじゃ」
言われるがまま、枯れ草に向けて手を軽く扇ぎながら中の風を送ってみる。
「あれ?おかしいな……。あれ?」
しかし、出てくるのは中は愚か弱にすら満たないような風で、狙いも左右にぶれてしまう。
思い通りに行かない制御に困惑していると、セイルが声をかけてきた。
「どうじゃ、動きが加わるとまたさらに難しくなったじゃろ? 風か弱まるのはタケルが無意識に"手で扇ぐ程度の風"と認識してしもうとるからで、狙いがぶれるのは指先から魔力を放出しようとしておるからじゃ。指先が意識を集中しやすいというだけで、出そうと思えば鼻の先や腹の前からでも魔法は出せるのじゃ。試しにやってみぃ」
「なるほど。えっと……じゃあ」
意識を集中しにくいところはどこだろうかと考えて、右太腿の裏から放出してみた。
すると凄まじい風が後方へ吹き出し、地面の枯れ葉が吹き飛ばされていく。
予想だにしていなかった結果に慌てて出力を弱めた。
(こんなに強い風を出すつもりじゃなかったのに……難しいな……。あれ?)
「ほほほ。どうじゃ難しかったじゃろ?」
「ねえ、おじいちゃん。魔法って"反作用"が無いの?」
「ん? 反作用とな……?」
「えっと……今僕は後ろに向けて突風を出したわけなんだけど、僕自身はそれの影響を受けてないというか……。普通後ろに風を出したなら僕は前に進む力を受けると思うんだけど、それがなかったんだ」
「ううむ……。そうかのぅ……?」
「えーと……」
物理の基本的な内容であるが、やはり異世界だと感覚が違うのであろうか。
自分がかつてどんな例えで教えられたかを必死に思い出す。
「あ! そうだおじいちゃん! 試しにそこの木を、全力で押してみて!」
そう言ってセイルの傍にある一本の立派な太い幹を持つ木を指定する。
物を押した時に感じる力で反作用を例えるのだ。
「ん? 全力でか?」
「うん!」
――反作用を強く感じられた方が良いだろう。
そんな軽い考えであった。
「よくわからぬが、やってみるかの…………ハッ!!!」
セイルが繰り出したのは、それはそれは美しい掌底打ちであった。
凄まじい轟音と共に、木はくらった場所から粉々に砕け散り、後方にある木にまで罅が入っている。
後には切れ目の随分と粗い切り株と衝撃で抉れた地面だけしか残っていない。
「――えっと……木から何か抵抗を感じたり……した?」
「ほとんど感じんかったが、なるほど。何を言いたいのかなんとなくわかってきたぞい。今まで魔法は対象に影響を与えるものじゃとしか認識しておらんかったが、確かにそう考えると風を出したら進みそうなものじゃのぅ……。しかし……」
ブツブツと呟きながら思考の渦に飲み込まれていくセイルに慌てて声をかけて引き戻す。
「そ、それでおじいちゃん。魔法って反作用は無いのかな? もしあるなら風魔法を上手く使えば空とか飛べそうだなって思ったんだけど……」
「ん? おおっ! そうじゃったそうじゃった。基本的には反作用とやらは無いが、タケルの言うような魔法も作れぬ事も無いと思うぞ」
「本当に!?」
まさにファンタジーである。
出来るのならばやってみたいと思うのは人間の性であろう。
しかし現実は甘くないらしく――
「出来ぬことも無いが、魔法本来の性質を変えて、しかも人を上空へ吹き飛ばすレベルの風を出し続けるとなると……どう考えても最上級魔法の、しかも上位の領域じゃのぅ……」
「そっか……」
最上級とやらがどれ程難しいのかはわからないが、言葉の響きからして相当難しいのであろう。
「今のタケルでは難しいだろうのぅ……。しかし方法が無いわけではないぞ。魔方陣魔法を使うのじゃ」
「魔方陣魔法だったら僕にも使えるの?」
「魔方陣魔法は魔法と魔力の"制御"を魔法陣で肩代わりする魔法じゃから、魔力さえあれば誰でも使えるぞい。まあ作るのに知識は必要じゃが、わしは魔方陣魔法を作るのが趣味じゃからの。わしが作ってやろう」
「やった! ありがとうおじいちゃん!」
「まあこれまでの魔法の常識を覆す可能性があるほどには難しいじゃろうから、そんなにすぐには作れぬぞ。気長に待っておいてくれのぅ」
「うん!」
(空を自由に飛べるんだ。いくらでも待とうじゃないか!)
「さて、魔法の基本中の基本は教え終わったし、そろそろシエラを確かめるかのぅ」
「そういえばそうだったね……」
危うく本来の目的を忘れるところであった。
「シエラを出した時の感覚を思い出して魔力を使ってみるのじゃ」
「う、うん……」
(あの時の感覚……キュウを護りたいと……願いを籠めていたあの時の感覚を……)
「……おじいちゃん。」
「ん? どうした?」
特訓を開始してから苦節数時間。
ここまで来て自分のシエラ発動の道は――
「ちょっと……出し方わかんないや……」
「…………」
結局発動の仕方がわからないという大きな壁にぶつかったのであった。
言われるがまま、枯れ草に向けて手を軽く扇ぎながら中の風を送ってみる。
「あれ?おかしいな……。あれ?」
しかし、出てくるのは中は愚か弱にすら満たないような風で、狙いも左右にぶれてしまう。
思い通りに行かない制御に困惑していると、セイルが声をかけてきた。
「どうじゃ、動きが加わるとまたさらに難しくなったじゃろ? 風か弱まるのはタケルが無意識に"手で扇ぐ程度の風"と認識してしもうとるからで、狙いがぶれるのは指先から魔力を放出しようとしておるからじゃ。指先が意識を集中しやすいというだけで、出そうと思えば鼻の先や腹の前からでも魔法は出せるのじゃ。試しにやってみぃ」
「なるほど。えっと……じゃあ」
意識を集中しにくいところはどこだろうかと考えて、右太腿の裏から放出してみた。
すると凄まじい風が後方へ吹き出し、地面の枯れ葉が吹き飛ばされていく。
予想だにしていなかった結果に慌てて出力を弱めた。
(こんなに強い風を出すつもりじゃなかったのに……難しいな……。あれ?)
「ほほほ。どうじゃ難しかったじゃろ?」
「ねえ、おじいちゃん。魔法って"反作用"が無いの?」
「ん? 反作用とな……?」
「えっと……今僕は後ろに向けて突風を出したわけなんだけど、僕自身はそれの影響を受けてないというか……。普通後ろに風を出したなら僕は前に進む力を受けると思うんだけど、それがなかったんだ」
「ううむ……。そうかのぅ……?」
「えーと……」
物理の基本的な内容であるが、やはり異世界だと感覚が違うのであろうか。
自分がかつてどんな例えで教えられたかを必死に思い出す。
「あ! そうだおじいちゃん! 試しにそこの木を、全力で押してみて!」
そう言ってセイルの傍にある一本の立派な太い幹を持つ木を指定する。
物を押した時に感じる力で反作用を例えるのだ。
「ん? 全力でか?」
「うん!」
――反作用を強く感じられた方が良いだろう。
そんな軽い考えであった。
「よくわからぬが、やってみるかの…………ハッ!!!」
セイルが繰り出したのは、それはそれは美しい掌底打ちであった。
凄まじい轟音と共に、木はくらった場所から粉々に砕け散り、後方にある木にまで罅が入っている。
後には切れ目の随分と粗い切り株と衝撃で抉れた地面だけしか残っていない。
「――えっと……木から何か抵抗を感じたり……した?」
「ほとんど感じんかったが、なるほど。何を言いたいのかなんとなくわかってきたぞい。今まで魔法は対象に影響を与えるものじゃとしか認識しておらんかったが、確かにそう考えると風を出したら進みそうなものじゃのぅ……。しかし……」
ブツブツと呟きながら思考の渦に飲み込まれていくセイルに慌てて声をかけて引き戻す。
「そ、それでおじいちゃん。魔法って反作用は無いのかな? もしあるなら風魔法を上手く使えば空とか飛べそうだなって思ったんだけど……」
「ん? おおっ! そうじゃったそうじゃった。基本的には反作用とやらは無いが、タケルの言うような魔法も作れぬ事も無いと思うぞ」
「本当に!?」
まさにファンタジーである。
出来るのならばやってみたいと思うのは人間の性であろう。
しかし現実は甘くないらしく――
「出来ぬことも無いが、魔法本来の性質を変えて、しかも人を上空へ吹き飛ばすレベルの風を出し続けるとなると……どう考えても最上級魔法の、しかも上位の領域じゃのぅ……」
「そっか……」
最上級とやらがどれ程難しいのかはわからないが、言葉の響きからして相当難しいのであろう。
「今のタケルでは難しいだろうのぅ……。しかし方法が無いわけではないぞ。魔方陣魔法を使うのじゃ」
「魔方陣魔法だったら僕にも使えるの?」
「魔方陣魔法は魔法と魔力の"制御"を魔法陣で肩代わりする魔法じゃから、魔力さえあれば誰でも使えるぞい。まあ作るのに知識は必要じゃが、わしは魔方陣魔法を作るのが趣味じゃからの。わしが作ってやろう」
「やった! ありがとうおじいちゃん!」
「まあこれまでの魔法の常識を覆す可能性があるほどには難しいじゃろうから、そんなにすぐには作れぬぞ。気長に待っておいてくれのぅ」
「うん!」
(空を自由に飛べるんだ。いくらでも待とうじゃないか!)
「さて、魔法の基本中の基本は教え終わったし、そろそろシエラを確かめるかのぅ」
「そういえばそうだったね……」
危うく本来の目的を忘れるところであった。
「シエラを出した時の感覚を思い出して魔力を使ってみるのじゃ」
「う、うん……」
(あの時の感覚……キュウを護りたいと……願いを籠めていたあの時の感覚を……)
「……おじいちゃん。」
「ん? どうした?」
特訓を開始してから苦節数時間。
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「ちょっと……出し方わかんないや……」
「…………」
結局発動の仕方がわからないという大きな壁にぶつかったのであった。
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