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第一章 カラハダル大森林 異世界転移 編
25-A.魂の交差地点-Ⅳ
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「よし、これで大丈夫だよ!」
「サンキューソフィア! アイラ! 交代だ!」
サキトは呪いの軽減と傷の治療が終わると直ぐ様一番近い大土竜へと駆けて行く。
「やっときた! っあんたは止まってなさい! 『パラライズ』!」
出の早い魔法を駆使して回復の時間稼ぎをしていたアイラは、突進をしてこようとした大土竜に目掛けて雷属性初級魔法『パラライズ』を使う。
精密なコントロールで胴体に当てると、大土竜の動きが一瞬硬直した。
初級魔法故に中型種の魔物に当てたところでダメージはほぼ皆無であったが、速度があり、コントロールの効くこの魔法は、魔法を分解されない部位を正確に狙えるため、今の戦況では非常に有用であった。
しかしそれが出来るのは偏にアイラの制御の賜物であろう。
速度が速ければ速いほどコントロールが難しくなるのは自明の理であり、魔物に反応を許さない速度ともなればその難易度は一入である。
無防備な人間に当てれば十数秒は動きを止められるこの魔法も、中型種の魔物相手ともなると僅かに二、三秒程度しか止める事は出来ない。
しかし今は、それだけあれば――
「十分だ!」
サキトが全力の身体強化を施して地面を蹴る。
一点のみに力の集中を受けた地面の土は舞い上がる事はなく、押し固められ、力の殆どを外部に洩らさなかった。
そうして力の殆どを推進力として得たサキトの体は爆発的な加速を見せ、僅か一瞬のうちに大土竜の懐へと滑り込んだ。
「っ――――!」
サキトは歯を食い縛り、加速で得た運動エネルギーをそのままに全力の拳を腹部に叩き込む。
「グォッ……」
爆発でもしたかのような轟音が響き、殴られた衝撃で大土竜の体は後方の木まで吹き飛ばされる。
殴られた腹部の外殻には僅かに亀裂が入っていた。
「くっ……」
大土竜へと明らかに大きなダメージを叩き込んだサキトの拳であるが、僅かながらその代償を支払っていた。
拳は砕け、速度を制御しきれなかったためか僅かに腕を大土竜の爪が擦ってしまい、傷口からは血が滴り、呪いが広がり始める。
そんな動きを止めたサキトに対して蜜蜂型二体が針を放とうと狙いを定めた。
「させません!」
ソフィアは素早くその二体へと銃口を向け、引き金を引く。
純白のボディに翠色の魔力が螺旋を描き、唸りをあげ、銃口から風の魔力が弾となって放たれる。
速射であるため威力は低めだが、それでも当たれば中級魔法下位程度の威力はある攻撃だ。
ソフィアの攻撃に気がついた蜜蜂型は回避行動をとり弾を避けたが、そのお陰で狙いから外れたサキトが未だに怯んでいる大土竜を見据え、思考する。
(右腕の怪我はひとまず後回しだ)
怪我ならば後でソフィアに治して貰えば良いからだ。
続いて最上級魔法を放ってきた雀蜂型の魔物に目を向けたサキトは、休んでいるのか動く気配がないことを確認した。
(あの雀蜂型が動き出す前に少しでも数を減らさねぇと……)
もう一度全力の身体強化を施したサキトは、先程自身が吹き飛ばした大土竜に向けて地面を蹴り、一瞬で接近すると今度は左の拳を振り翳し、ひび割れている腹部の外殻に向けて叩き込んだ。
再び轟く爆発音と共に腹部の外殻が弾け飛び、大土竜の体内を貫いた衝撃が背後の木にまで罅を入れた。
先程は後方へ飛ばされたことで衝撃が幾分か緩和されていたが、今回はそうもいかなかったようで、大土竜は意識を失ったのかもたれ掛かったまま動かなくなった。
「ぐぅっ……まだ死なねぇのかよっ!?」
そう、これだけやってもまだこの魔物は死んではいないのである。
魔物が死ねば、特殊部位以外は霧散する。
つまり霧散しないということは、まだ起き上がってサキトたちにその凶悪な爪を向けて来るかもしれないということだ。
「くそっ、こうなったら脚を潰してでも――」
「サキト危ないっ!」
「なっ――!?」
どうにか止めを刺そうとしていたサキトに向かって、二体の大土竜が爪を振り翳しながら突進を繰り出してきた。
蜜蜂型の相手をしていたためにアイラとソフィアの援護も間に合わない。
「ッ!?」
万事休すかと思われたが、サキトは冷静であった。
まず一体目の爪を上体を捻りながら後ろに反らす事で回避し、壊れた左手を地面につけて全力で押し上げ、捻った勢いをそのまま利用して体を錐揉み回転させながら空中に離脱して二体目の爪を避ける。
「くそっ……」
驚異的な反射神経と身体能力でどうにか致命の一撃は回避したサキトであったが、横腹と左腕にはそれぞれ呪い傷が刻まれており、無理をさせた左手は腫れ上がってしまった。
体は既に蜜蜂型と大土竜の二種類の呪印に犯されて、上手く動かせなくなってきている。
そんなサキトに向けてもう一体の大土竜が向かっていた。
「っ! やべっ……」
「『ロックグレイブ』!」
地面から突如飛び出した棹状の太い岩が、突進中の大土竜の腹部と衝突し、その動きを止めた。
アイラの繰り出した土属性中級魔法『ロックグレイブ』だ。
カウンター気味に入った魔法はしかし、大土竜の腹部の外殻に傷を負わせる程度にとどまっていた。
「やっぱりせめて上級魔法じゃないと……。でも、今の私の発動速度じゃ……」
この乱戦の中では魔物達はそんな隙を与えてはくれないだろう。
依然として大土竜の動きを止めていた『ロックグレイブ』に大土竜の爪が触れると無惨に魔力へと分解されてしまったのだが、その光景にアイラは疑問を抱いた。
「なんで……魔力を補食しないの……?」
魔物は魔力を補食することを本能に行動をしているはずだ。
だからこそ魔力を持つ人間の敵として見なされているはずなのだ。
事実、奴らの侵攻によって、人類の生活圏は大幅に狭まったと言われている。
確かにそれは疑問を感じて然るべき点であった。
だがしかし、タイミングが悪いと言わざるを得なかった。
「逃げろアイラぁぁぁああぁあぁっ!!!」
「えっ……」
サキトの警告も虚しく、いつの間にか背後に来ていた大土竜の硬爪が――アイラの腹部を貫いていた。
「サンキューソフィア! アイラ! 交代だ!」
サキトは呪いの軽減と傷の治療が終わると直ぐ様一番近い大土竜へと駆けて行く。
「やっときた! っあんたは止まってなさい! 『パラライズ』!」
出の早い魔法を駆使して回復の時間稼ぎをしていたアイラは、突進をしてこようとした大土竜に目掛けて雷属性初級魔法『パラライズ』を使う。
精密なコントロールで胴体に当てると、大土竜の動きが一瞬硬直した。
初級魔法故に中型種の魔物に当てたところでダメージはほぼ皆無であったが、速度があり、コントロールの効くこの魔法は、魔法を分解されない部位を正確に狙えるため、今の戦況では非常に有用であった。
しかしそれが出来るのは偏にアイラの制御の賜物であろう。
速度が速ければ速いほどコントロールが難しくなるのは自明の理であり、魔物に反応を許さない速度ともなればその難易度は一入である。
無防備な人間に当てれば十数秒は動きを止められるこの魔法も、中型種の魔物相手ともなると僅かに二、三秒程度しか止める事は出来ない。
しかし今は、それだけあれば――
「十分だ!」
サキトが全力の身体強化を施して地面を蹴る。
一点のみに力の集中を受けた地面の土は舞い上がる事はなく、押し固められ、力の殆どを外部に洩らさなかった。
そうして力の殆どを推進力として得たサキトの体は爆発的な加速を見せ、僅か一瞬のうちに大土竜の懐へと滑り込んだ。
「っ――――!」
サキトは歯を食い縛り、加速で得た運動エネルギーをそのままに全力の拳を腹部に叩き込む。
「グォッ……」
爆発でもしたかのような轟音が響き、殴られた衝撃で大土竜の体は後方の木まで吹き飛ばされる。
殴られた腹部の外殻には僅かに亀裂が入っていた。
「くっ……」
大土竜へと明らかに大きなダメージを叩き込んだサキトの拳であるが、僅かながらその代償を支払っていた。
拳は砕け、速度を制御しきれなかったためか僅かに腕を大土竜の爪が擦ってしまい、傷口からは血が滴り、呪いが広がり始める。
そんな動きを止めたサキトに対して蜜蜂型二体が針を放とうと狙いを定めた。
「させません!」
ソフィアは素早くその二体へと銃口を向け、引き金を引く。
純白のボディに翠色の魔力が螺旋を描き、唸りをあげ、銃口から風の魔力が弾となって放たれる。
速射であるため威力は低めだが、それでも当たれば中級魔法下位程度の威力はある攻撃だ。
ソフィアの攻撃に気がついた蜜蜂型は回避行動をとり弾を避けたが、そのお陰で狙いから外れたサキトが未だに怯んでいる大土竜を見据え、思考する。
(右腕の怪我はひとまず後回しだ)
怪我ならば後でソフィアに治して貰えば良いからだ。
続いて最上級魔法を放ってきた雀蜂型の魔物に目を向けたサキトは、休んでいるのか動く気配がないことを確認した。
(あの雀蜂型が動き出す前に少しでも数を減らさねぇと……)
もう一度全力の身体強化を施したサキトは、先程自身が吹き飛ばした大土竜に向けて地面を蹴り、一瞬で接近すると今度は左の拳を振り翳し、ひび割れている腹部の外殻に向けて叩き込んだ。
再び轟く爆発音と共に腹部の外殻が弾け飛び、大土竜の体内を貫いた衝撃が背後の木にまで罅を入れた。
先程は後方へ飛ばされたことで衝撃が幾分か緩和されていたが、今回はそうもいかなかったようで、大土竜は意識を失ったのかもたれ掛かったまま動かなくなった。
「ぐぅっ……まだ死なねぇのかよっ!?」
そう、これだけやってもまだこの魔物は死んではいないのである。
魔物が死ねば、特殊部位以外は霧散する。
つまり霧散しないということは、まだ起き上がってサキトたちにその凶悪な爪を向けて来るかもしれないということだ。
「くそっ、こうなったら脚を潰してでも――」
「サキト危ないっ!」
「なっ――!?」
どうにか止めを刺そうとしていたサキトに向かって、二体の大土竜が爪を振り翳しながら突進を繰り出してきた。
蜜蜂型の相手をしていたためにアイラとソフィアの援護も間に合わない。
「ッ!?」
万事休すかと思われたが、サキトは冷静であった。
まず一体目の爪を上体を捻りながら後ろに反らす事で回避し、壊れた左手を地面につけて全力で押し上げ、捻った勢いをそのまま利用して体を錐揉み回転させながら空中に離脱して二体目の爪を避ける。
「くそっ……」
驚異的な反射神経と身体能力でどうにか致命の一撃は回避したサキトであったが、横腹と左腕にはそれぞれ呪い傷が刻まれており、無理をさせた左手は腫れ上がってしまった。
体は既に蜜蜂型と大土竜の二種類の呪印に犯されて、上手く動かせなくなってきている。
そんなサキトに向けてもう一体の大土竜が向かっていた。
「っ! やべっ……」
「『ロックグレイブ』!」
地面から突如飛び出した棹状の太い岩が、突進中の大土竜の腹部と衝突し、その動きを止めた。
アイラの繰り出した土属性中級魔法『ロックグレイブ』だ。
カウンター気味に入った魔法はしかし、大土竜の腹部の外殻に傷を負わせる程度にとどまっていた。
「やっぱりせめて上級魔法じゃないと……。でも、今の私の発動速度じゃ……」
この乱戦の中では魔物達はそんな隙を与えてはくれないだろう。
依然として大土竜の動きを止めていた『ロックグレイブ』に大土竜の爪が触れると無惨に魔力へと分解されてしまったのだが、その光景にアイラは疑問を抱いた。
「なんで……魔力を補食しないの……?」
魔物は魔力を補食することを本能に行動をしているはずだ。
だからこそ魔力を持つ人間の敵として見なされているはずなのだ。
事実、奴らの侵攻によって、人類の生活圏は大幅に狭まったと言われている。
確かにそれは疑問を感じて然るべき点であった。
だがしかし、タイミングが悪いと言わざるを得なかった。
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