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第一章 カラハダル大森林 異世界転移 編
32.生きてこそ-Ⅱ
しおりを挟む気が付くと、見知らぬ部屋に居た。
いや、見知らぬというわけではない気もする。
(この部屋をどこかで見たことがあるような気がするな……)
何か違和感があると思い、部屋をよく見まわす。
目の前には木製のダイニングテーブルがあり、同じデザインの椅子が四つ周りに置かれている。
その奥にはキッチンらしき場所があるようだ。
右にはどこかへ続く扉があり、左に目を向けるとガラス戸の向こうに庭が見え、ひまわりが咲いているのが見える。
陽光を反射して黄色く輝くその花弁を見て違和感の正体に気が付いた。
この部屋には鮮やかさがないのだ。
全てが灰色じみた色をしている。
ただ、ひまわりだけは眩く黄色に輝いている。
(なんだろうこの気持ちは……懐かしい?)
ふと何かの気配がした気がして後ろを向くと、大きなソファの向こうにテレビがあって、そのソファには誰かが座っていた。
テレビは電源はついているようだが、ひたすらに真っ暗な画面を映し続けている。
ソファに座る誰かは俯いていたのだが、ふと顔を上げて暗い画面に反射して映るこちらの存在に気が付くと慌てて立ち上がり、ソファを飛び越してこちらに近づいてきた。
(顔が……見えない?)
近づいてくる人は恐らく男性だと思うのだが、口元より上に何か靄がかかっていてよくわからない。
自分より身長は若干高いが、少し痩せ気味のように感じる。
手を伸ばせば触れられる距離にいるのにも関わらず顔が見えないだなんて、普通は不気味に感じそうなものであるが、胸に湧く思いは先ほどひまわりを見たときと同じか、寧ろそれ以上の懐かしさだけであった。
(なんだろう……この感情……)
男性は何か言っているのか、しきりに口をパクパクさせているが、何も聞こえてはこない。
「あなたは誰ですか?」
状況的に考えて部外者は確実に自分なのだが、思わず聞いてしまった。
しかしどうやら、相手の声がこちらに届かないように、こちらの声もあちらに届いてないようだ。
目の前の男性も状況に気が付いたようで、残念そうに口角を下げた。
しばらくそんな表情を浮かべた後、唐突にこちらに手を伸ばして来た。
普通誰かもわからない人に触られそうになったら避けようとするものだと思うのだが、何故か避ける気にはなれなかった。
伸びてきた手はそのまま自分の頭を撫ではじめる。
(なんで、こんなに安心できるんだろう……)
そのまま撫でられ続けていると、だんだんと瞼が重くなってきた。
(結局、誰なんだろうか……)
そんな疑問を抱いたまま、再び意識は沈んでいった。
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