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第一章 カラハダル大森林 異世界転移 編
34.生きてこそ-Ⅳ
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今日のメニューは何かと覗き込んでみると、いつか見たことのあるシチューのようなスープとパンであった。
このスープはおじいちゃんの得意料理らしく、結構な頻度で食べているが未だに飽きない味だ。
「これ、昨日渡した鹿の肉使ってるの?」
「うむ。そいつとこの前の猪の残りを入れてみたぞい。ソフィア嬢ちゃんたちはあんまり食い慣れない肉じゃろうから若干クセがあって食べにくいかもしれんが、少し我慢してくれのぅ」
「あ、いえ、私は実家にいる時はよく食べてたので大丈夫ですよ、ぎん……セイル様」
「俺も昔炊き出しでよく食べてたから大丈夫ッスよ! むしろ結構好きッス!」
「ソフィアとサキトは食べたことあるんだ……。私は食べたことないからちょっと楽しみだわ」
「ほほほ。そうかそうか。では、食べるとしようかのぅ」
そうして、いつの間にか人数分の椅子が並べられていた食卓へと食事を運んで準備をする。
キュウもさすがに目が覚めてきたようなので、キュウ用の皿に小さくカットした果物をいれてやると、ロンドがその皿の近くへと降りたった。
「キュ?」
「ピィピィ」
「キュ」
「ピィッ!」
翻訳をすると、順に「欲しいの?」、「うん」、「ほらよ」、「さんきゅー!」って感じだ。
(そういえばなんでロンドの言ってることわかるんだろう……?)
キュウと一緒に過ごしすぎて精霊の言葉を理解できるようになってしまったのだろうか。
(そういえばテッチってあんまり喋らないよな……)
そう思いテッチの方を眺めていると、テッチも気が付いたようでこちらへと目を向けてくる。
そうしてしばらく見つめあっていると――
「ワウッ!」
少し居心地悪そうに「なんか用か!」って感じに吠えてきた。
やっぱりなんとなくだが理解できるようになっているようだ。
そもそもテッチが喋る機会が少ないだけで、わりと前からなんとなく理解できていた気がしなくもない。
「いや、ごめんごめん。何でもないよ」
そう言うと「何なんだまったく……」という感じに鼻を鳴らして果物を齧りはじめた。
自分もそろそろ空腹が限界だ。
さっさといただくことにしよう。
いつもより人数が多いことで明らかに手狭な食卓を囲み、食事を始めた。
スープからは湯気と共に食欲をそそる匂いが香り立ち、口の中で唾液が分泌され始める。
しっかりと感謝を込めて「いただきます」と口にし、さっそくスープに手を付ける。
空腹のためかゴロゴロとした具材がたっぷりと入っている中でも、三センチ角に切られた肉にひと際目を惹かれてしまう。
躊躇する理由もないので、さっそくスプーンで掬い、口で息を吹きかけて少し冷ましてから大口を開けて放り込むと、どうやら猪肉だったようで、豚肉に似た旨味が口いっぱいに広がる。
先ほどクセがあるなどと言っていたが、おじいちゃんはその辺の処理にも手を抜かずにしっかりと臭み取りなどをしているため、ほとんどクセなんて感じない。
この家で初めて食べた食事にも猪肉が入っていたらしいが、全く気が付かなかったほどだ。
そんな風に約一日振りの食事を堪能していると、茶髪の少年はスープを平らげたようで、しみじみと口を開いた。
「なんか、こうしておいしいもの食べてっと、本当に"助かったんだな"って実感がすげぇ湧いてくるな……」
「確かに……普通に死ぬ覚悟してたものね……」
「ちゃんと生きてるんですよね……私たち……」
そうしてしばらく空の皿を見つめた後、少年がこちらに顔を向けてきた。
「改めて、本当に助けてくれてありがとうございますッス。この御恩は絶対に一生忘れないッス。その、タケルさん? でよかったッスか?」
なんともぎこちないというか、違和感のある敬語である。
それに、恐らく同年代である彼らにずっと敬語で接せられるのもなんだか嫌である。
せっかくこの世界に来てからようやく会うことの出来たおじいちゃん以外の人間だ。
出来ることならばもっと仲良くしたい。
「たぶん同い年くらいでしょ? 無理に敬語使わなくって良いよ。僕ちょっと色々あって、恥ずかしながら同年代の知り合いがいなくってさ。もし良ければ普通に友人として接してほしいかな。ちなみに僕の名前は『須藤 武』。歳は昨日も言ったけど十九歳だよ」
「そ、そうか? じゃあ普通に話させてもらうぜ。どうも敬語ってのがよくわからなくってな。俺の名前は『サキト・アヤサキ』ってんだ。サキトって呼んでくれ! 歳は十八だ」
「わかった。サキト、だね」
隣にいる少女らにも期待を込めた視線を送ってみる。
すると、翡翠の少女が先に口を開いた。
「あ、あの、私は敬語が癖になっちゃってるので、敬語以外でお話するのが苦手なんですけど……それでも良いですか?」
「うん。話しやすい方で良いよ」
「ありがとうございます。私は『ソフィア・リブルス・ラグルスフェルト』と言います。ソフィアって呼んでください。歳はサキトくんと一緒で十八歳です。その……タケルくん、でいいですかね?」
「うん! ありがとうソフィア!」
しばらくおじいちゃん以外の人との接点が無かったからか、同年代の友人が増えるのがとても嬉しく感じる。
向こうの世界に居た頃はこんなに心躍るような感覚はあっただろうか。
そんな事を考えながら、最後に金髪の少女へと視線を向ける。
「あなたなんか変な人ね……いや、悪い意味じゃないわよ! 何というか、まあちょっと想像と違ってたってだけよ。私は『アイラ・グランツ』よ。歳は二人と一緒で十八歳。私もアイラで良いわ。その、"タケル"が名前ってことで良いのよね?」
「うん。それがどうかしたの?」
「いや、家名が先に来るって事は北西部の出身なのかなって思ってね。別に大した疑問でも無いから気にしなくても良いわよ」
「うーん。違うかな……たぶん」
せっかくできた友人を、「出身は異世界です!」なんてとち狂った発言で失いたくはないので、ここはお茶を濁すことにしよう。
このスープはおじいちゃんの得意料理らしく、結構な頻度で食べているが未だに飽きない味だ。
「これ、昨日渡した鹿の肉使ってるの?」
「うむ。そいつとこの前の猪の残りを入れてみたぞい。ソフィア嬢ちゃんたちはあんまり食い慣れない肉じゃろうから若干クセがあって食べにくいかもしれんが、少し我慢してくれのぅ」
「あ、いえ、私は実家にいる時はよく食べてたので大丈夫ですよ、ぎん……セイル様」
「俺も昔炊き出しでよく食べてたから大丈夫ッスよ! むしろ結構好きッス!」
「ソフィアとサキトは食べたことあるんだ……。私は食べたことないからちょっと楽しみだわ」
「ほほほ。そうかそうか。では、食べるとしようかのぅ」
そうして、いつの間にか人数分の椅子が並べられていた食卓へと食事を運んで準備をする。
キュウもさすがに目が覚めてきたようなので、キュウ用の皿に小さくカットした果物をいれてやると、ロンドがその皿の近くへと降りたった。
「キュ?」
「ピィピィ」
「キュ」
「ピィッ!」
翻訳をすると、順に「欲しいの?」、「うん」、「ほらよ」、「さんきゅー!」って感じだ。
(そういえばなんでロンドの言ってることわかるんだろう……?)
キュウと一緒に過ごしすぎて精霊の言葉を理解できるようになってしまったのだろうか。
(そういえばテッチってあんまり喋らないよな……)
そう思いテッチの方を眺めていると、テッチも気が付いたようでこちらへと目を向けてくる。
そうしてしばらく見つめあっていると――
「ワウッ!」
少し居心地悪そうに「なんか用か!」って感じに吠えてきた。
やっぱりなんとなくだが理解できるようになっているようだ。
そもそもテッチが喋る機会が少ないだけで、わりと前からなんとなく理解できていた気がしなくもない。
「いや、ごめんごめん。何でもないよ」
そう言うと「何なんだまったく……」という感じに鼻を鳴らして果物を齧りはじめた。
自分もそろそろ空腹が限界だ。
さっさといただくことにしよう。
いつもより人数が多いことで明らかに手狭な食卓を囲み、食事を始めた。
スープからは湯気と共に食欲をそそる匂いが香り立ち、口の中で唾液が分泌され始める。
しっかりと感謝を込めて「いただきます」と口にし、さっそくスープに手を付ける。
空腹のためかゴロゴロとした具材がたっぷりと入っている中でも、三センチ角に切られた肉にひと際目を惹かれてしまう。
躊躇する理由もないので、さっそくスプーンで掬い、口で息を吹きかけて少し冷ましてから大口を開けて放り込むと、どうやら猪肉だったようで、豚肉に似た旨味が口いっぱいに広がる。
先ほどクセがあるなどと言っていたが、おじいちゃんはその辺の処理にも手を抜かずにしっかりと臭み取りなどをしているため、ほとんどクセなんて感じない。
この家で初めて食べた食事にも猪肉が入っていたらしいが、全く気が付かなかったほどだ。
そんな風に約一日振りの食事を堪能していると、茶髪の少年はスープを平らげたようで、しみじみと口を開いた。
「なんか、こうしておいしいもの食べてっと、本当に"助かったんだな"って実感がすげぇ湧いてくるな……」
「確かに……普通に死ぬ覚悟してたものね……」
「ちゃんと生きてるんですよね……私たち……」
そうしてしばらく空の皿を見つめた後、少年がこちらに顔を向けてきた。
「改めて、本当に助けてくれてありがとうございますッス。この御恩は絶対に一生忘れないッス。その、タケルさん? でよかったッスか?」
なんともぎこちないというか、違和感のある敬語である。
それに、恐らく同年代である彼らにずっと敬語で接せられるのもなんだか嫌である。
せっかくこの世界に来てからようやく会うことの出来たおじいちゃん以外の人間だ。
出来ることならばもっと仲良くしたい。
「たぶん同い年くらいでしょ? 無理に敬語使わなくって良いよ。僕ちょっと色々あって、恥ずかしながら同年代の知り合いがいなくってさ。もし良ければ普通に友人として接してほしいかな。ちなみに僕の名前は『須藤 武』。歳は昨日も言ったけど十九歳だよ」
「そ、そうか? じゃあ普通に話させてもらうぜ。どうも敬語ってのがよくわからなくってな。俺の名前は『サキト・アヤサキ』ってんだ。サキトって呼んでくれ! 歳は十八だ」
「わかった。サキト、だね」
隣にいる少女らにも期待を込めた視線を送ってみる。
すると、翡翠の少女が先に口を開いた。
「あ、あの、私は敬語が癖になっちゃってるので、敬語以外でお話するのが苦手なんですけど……それでも良いですか?」
「うん。話しやすい方で良いよ」
「ありがとうございます。私は『ソフィア・リブルス・ラグルスフェルト』と言います。ソフィアって呼んでください。歳はサキトくんと一緒で十八歳です。その……タケルくん、でいいですかね?」
「うん! ありがとうソフィア!」
しばらくおじいちゃん以外の人との接点が無かったからか、同年代の友人が増えるのがとても嬉しく感じる。
向こうの世界に居た頃はこんなに心躍るような感覚はあっただろうか。
そんな事を考えながら、最後に金髪の少女へと視線を向ける。
「あなたなんか変な人ね……いや、悪い意味じゃないわよ! 何というか、まあちょっと想像と違ってたってだけよ。私は『アイラ・グランツ』よ。歳は二人と一緒で十八歳。私もアイラで良いわ。その、"タケル"が名前ってことで良いのよね?」
「うん。それがどうかしたの?」
「いや、家名が先に来るって事は北西部の出身なのかなって思ってね。別に大した疑問でも無いから気にしなくても良いわよ」
「うーん。違うかな……たぶん」
せっかくできた友人を、「出身は異世界です!」なんてとち狂った発言で失いたくはないので、ここはお茶を濁すことにしよう。
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