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第二章 軍属大学院 入学 編
58.帝都の街並み-Ⅱ
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それにしても、言語が同じ時点である程度予想が出来た事ではあったが、こうも前の世界との類似点が多いと、新しく覚える事が少なくてありがたくはあるのだが、何だか異世界という有難味が無いような気がしなくもない。
まあ実際に言語が違ってしまえばそんな贅沢を言っている余裕も無かったであろうから、自分の幸運に感謝するべきなのであろう。
疑問点がいくつかあれど、便利ならそれで良いと思ってしまうのはきっと人間の性なのだ。
「一応連れている精霊の属性も教えていただけますか? それと、帝都に来た目的は何でしょうか?」
「属性は光と火で、帝都に来た目的は軍属大学院に入学するためです」
「おお! では将来は私の後輩となられるかもしれないわけですね! 共に働ける日を心待ちにしておきます。それでは登録が完了しましたのでお入りください。――良い学院生活を!」
気持ちの良い青年の声に背中を押され、門の内側へと向けて歩を進める。
持ち物検査的な事をされたらどうしようかと思っていたが、よくよく考えればサキトたちも誰一人されていなかったから、そういう検査は無いのだろう。
馬車など用の大きな門ではあちら側の門番が何か魔道具と思わしき棒をかざしている光景もあったので、馬車側ではひょっとしたらあるのかもしれない。
何にせよ、ピカレスの枝を見られるような事態にならなくて幸いである。
門を潜ると陽光の眩しさに一瞬目がくらんだが、数秒もすれば目も慣れてきて、遂に自分とキュウは待ち望んでいた帝都の姿を目にした。
(――なんだ……これ……)
「キュウッ! キュキュウッ♪」
肩の上で尻尾を振り回しながらはしゃぐキュウとは対照的に、自分は目に映る景色に言葉を失っていた。
決して余りの美しさに対してであったり、見たことも無い景色に触れた事による感動のために言葉を失ったわけではない。
門を潜り抜けた瞬間から足元には石畳が敷かれており、所々にこれまた何かしらの魔法陣が刻まれた物が紛れているところを見るに、恐らくこの石畳も見た目通りの性能ではないことが窺い知れる。
馬車が通るわりに目立った破損が見当たらない辺り、何かしら強化の魔法がかけられているのかもしれない。
目の前はかなり広大な広場になっており、人や馬車でそれなりの賑わいを見せていた。
広場からは大きな通りが正面と斜め方向と壁沿いに合計五つ程伸びており、道沿いには遠くて良くは見えないが、恐らく何かしらの商店がいくつも連なっており、商店街といった様相を呈している。
それぞれの商店は木やレンガのような石材で作られ、三階建て前後の物が多く見受けられ、アイラの言っていた"貿易都市"という名前の通り、商業が盛んであることも窺い知れた。
それは良い。
問題はそこには無いのだ。
道が舗装されている点や賑わった商店街に関して言えば、流石は都市と言ったところなのだろう。
そう、問題は"都市"だという事なのだ。
(なんで……こんな……)
自分から言葉を奪ったその光景はまさに、"都市"と呼ぶに相応しいものだったのだ。
単純に今までの村や町と違い、建物の数が多いなどという話ではない。
自分の視線を捕らえて離してくれないその存在は、天高く聳える細長い巨大な四角いガラス張りの塔。
塔の側面は光を反射する一枚の巨大な鏡と化しており、そんな巨大な塔がいくつも並び立っている。
そんな建築物群のある場所を自分は――いや、自分の居た世界では"都市"と呼んでいた。
「なんで……ビルが建ってるんだ……」
そう、門を潜り抜けた先、"帝都ヴェルジード"には"高層ビル"が建ち並んでいた。
本当であればその奥に見える建築物に存分に目を奪われたいところであるのだが、今の自分にはそんな余裕はない。
奥に見える建築物とは、壁の外の街道を走っている時にも少しだけ見えた、遠く離れたこの場所からでもその巨大さが感じられる白亜の城の事であり、正面の大通りはその城まで一直線に伸びており、その両脇に聳え立つ高層ビル群の作り出す鏡が城を反射してなかなかの見応えがある。
見応えがあるはずなのである。
(確かに中世的な雰囲気の世界では無いのかもしれないとは思ってたけど……流石にこんな現代的な建物が堂々と聳え立ってるとは思ってなかったよ……)
いや、城や商店街に関して言えば、自分のにわか知識程度の感覚からすれば中世のような雰囲気を感じないという事も無い。
しかしどう考えても高層ビルの主張が激しすぎるのだ。
景観ぶち壊しも甚だしい。
誰がこんな違和感のある街づくりにゴーサインを出したのだ。
責任者を呼べ。
「やっぱり私の言った通り西門で正解だったでしょうサキト! タケルのあの驚いた表情見てみなさいよ! 北門側の"ネクサケイル"風の街並みも良いけど、やっぱり初めて見るならここで間違いないわ!」
「うっ……まあ確かに初見で一番インパクトがあるのはこっち側か……。でも俺は北側の方が好きなんだけどなぁ……」
アイラとサキトが何か言っているが正直まったく頭に入ってこない。
しかし、時間がそれなりに経ったおかげか流石に幾分か落ち着いても来た。
そもそもここは異世界だ。
ポロシャツ×馬車だってあるのだ。
白亜の城×高層ビルだってあるのだろう。
まあ実際に言語が違ってしまえばそんな贅沢を言っている余裕も無かったであろうから、自分の幸運に感謝するべきなのであろう。
疑問点がいくつかあれど、便利ならそれで良いと思ってしまうのはきっと人間の性なのだ。
「一応連れている精霊の属性も教えていただけますか? それと、帝都に来た目的は何でしょうか?」
「属性は光と火で、帝都に来た目的は軍属大学院に入学するためです」
「おお! では将来は私の後輩となられるかもしれないわけですね! 共に働ける日を心待ちにしておきます。それでは登録が完了しましたのでお入りください。――良い学院生活を!」
気持ちの良い青年の声に背中を押され、門の内側へと向けて歩を進める。
持ち物検査的な事をされたらどうしようかと思っていたが、よくよく考えればサキトたちも誰一人されていなかったから、そういう検査は無いのだろう。
馬車など用の大きな門ではあちら側の門番が何か魔道具と思わしき棒をかざしている光景もあったので、馬車側ではひょっとしたらあるのかもしれない。
何にせよ、ピカレスの枝を見られるような事態にならなくて幸いである。
門を潜ると陽光の眩しさに一瞬目がくらんだが、数秒もすれば目も慣れてきて、遂に自分とキュウは待ち望んでいた帝都の姿を目にした。
(――なんだ……これ……)
「キュウッ! キュキュウッ♪」
肩の上で尻尾を振り回しながらはしゃぐキュウとは対照的に、自分は目に映る景色に言葉を失っていた。
決して余りの美しさに対してであったり、見たことも無い景色に触れた事による感動のために言葉を失ったわけではない。
門を潜り抜けた瞬間から足元には石畳が敷かれており、所々にこれまた何かしらの魔法陣が刻まれた物が紛れているところを見るに、恐らくこの石畳も見た目通りの性能ではないことが窺い知れる。
馬車が通るわりに目立った破損が見当たらない辺り、何かしら強化の魔法がかけられているのかもしれない。
目の前はかなり広大な広場になっており、人や馬車でそれなりの賑わいを見せていた。
広場からは大きな通りが正面と斜め方向と壁沿いに合計五つ程伸びており、道沿いには遠くて良くは見えないが、恐らく何かしらの商店がいくつも連なっており、商店街といった様相を呈している。
それぞれの商店は木やレンガのような石材で作られ、三階建て前後の物が多く見受けられ、アイラの言っていた"貿易都市"という名前の通り、商業が盛んであることも窺い知れた。
それは良い。
問題はそこには無いのだ。
道が舗装されている点や賑わった商店街に関して言えば、流石は都市と言ったところなのだろう。
そう、問題は"都市"だという事なのだ。
(なんで……こんな……)
自分から言葉を奪ったその光景はまさに、"都市"と呼ぶに相応しいものだったのだ。
単純に今までの村や町と違い、建物の数が多いなどという話ではない。
自分の視線を捕らえて離してくれないその存在は、天高く聳える細長い巨大な四角いガラス張りの塔。
塔の側面は光を反射する一枚の巨大な鏡と化しており、そんな巨大な塔がいくつも並び立っている。
そんな建築物群のある場所を自分は――いや、自分の居た世界では"都市"と呼んでいた。
「なんで……ビルが建ってるんだ……」
そう、門を潜り抜けた先、"帝都ヴェルジード"には"高層ビル"が建ち並んでいた。
本当であればその奥に見える建築物に存分に目を奪われたいところであるのだが、今の自分にはそんな余裕はない。
奥に見える建築物とは、壁の外の街道を走っている時にも少しだけ見えた、遠く離れたこの場所からでもその巨大さが感じられる白亜の城の事であり、正面の大通りはその城まで一直線に伸びており、その両脇に聳え立つ高層ビル群の作り出す鏡が城を反射してなかなかの見応えがある。
見応えがあるはずなのである。
(確かに中世的な雰囲気の世界では無いのかもしれないとは思ってたけど……流石にこんな現代的な建物が堂々と聳え立ってるとは思ってなかったよ……)
いや、城や商店街に関して言えば、自分のにわか知識程度の感覚からすれば中世のような雰囲気を感じないという事も無い。
しかしどう考えても高層ビルの主張が激しすぎるのだ。
景観ぶち壊しも甚だしい。
誰がこんな違和感のある街づくりにゴーサインを出したのだ。
責任者を呼べ。
「やっぱり私の言った通り西門で正解だったでしょうサキト! タケルのあの驚いた表情見てみなさいよ! 北門側の"ネクサケイル"風の街並みも良いけど、やっぱり初めて見るならここで間違いないわ!」
「うっ……まあ確かに初見で一番インパクトがあるのはこっち側か……。でも俺は北側の方が好きなんだけどなぁ……」
アイラとサキトが何か言っているが正直まったく頭に入ってこない。
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