アポロの護り人 ―異世界夢追成長記―

わらび餅.com

文字の大きさ
66 / 163
第二章 軍属大学院 入学 編

57.帝都の街並み-Ⅰ

しおりを挟む

「確か初めて入る時は魔力の個人登録がいるはずだから、ちょっと時間かかったわよね? 先にタケルから入る?」

「じ、時間がかかるって言っても確か一分くらいで済んだと思うよ! それにたぶん誰かがお手本見せてあげた方が良いから私が先に行くよ! タケルくんは最後の方が良いと思うな!」

「そ、そう? どうしたのよソフィア、そんなに慌てて……別にお手本がいるような事でも無いし……まあいいけど」

 アイラとソフィアが話している魔力の個人登録というのは、ひょっとして先ほど見たあの板石に魔力を注ぎ込む行為の事だろうか。
 そうであればやはり、この世界では魔力によって個人を特定して色々と管理しているのだろう。
 魔力で管理するとなると、宿屋の鍵では何も問題は起きなかったので大丈夫だとは思うが、何だか少し心配になってきた。
 きっと帝都への入場の管理なのだから、宿屋のドアなどとは比べ物にならないくらい精密で厳重なセキュリティなのだろう。
 この世界での魔力を使った生活に何も支障が無かったために今まで考えた事は無かったが、自分は異世界人――言わば不法入国者みたいなものだ。
 ひょっとしたら精密な検査をされると何かマズイ部分があるかもしれない。

(どうしよう……別に何も悪い事してないのに凄く不安になってきたぞ……)

 そんな不安を抱いている間にもソフィアたちは次々と専用の台の上に設置された板石に手を当て、許可を得てから門を潜り抜けていってしまう。
 板石に触れて魔力を少し流し、魔法陣が青色に光れば許可を貰えるようだ。

「次の方どうぞ」

「は、はい」

 自分の前にいたサキトも早々に手続きが終わったようで、遂に自分の番となった。
 笑顔の素敵な門番らしき青年に声をかけられて一歩進み出る。
 先ほどのモブロスとやらと同じ黒色の制服を着ているところから見るに、恐らく彼も軍人なのだろう。
 それにしても良い笑顔だ。
 常にニコニコとしたその表情からは門番というよりはどちらかと言うと受付といった印象を受ける。

「あの、すみません。初めて来たんですけど……」

「ご申告ありがとうございます。ではこれから魔力を個人登録いたしますので、こちらの魔証石ましょうせきに魔力を注いでいただいて、その後にいくつかの質問に答えていただくことになりますがよろしいですか?」

「は、はい。わかりました」

 門番の男性は至極丁寧な物言いで、例の板石を手で示した。
 板石は門の壁に取り付けられた灯りの仄かな光で光沢を放っており、どことなく高級感が漂っているが、光を持たず白く濁った魔法陣によって汚されている様にも見える。
 なるほど、この板石が魔証石という名前のようだ。
 言い知れぬ不安を抱えながら、サキトたちがしていたように魔証石へと手を触れる。
 磨かれた大理石のような見た目に違わず、手触りは滑らかでひんやりとしている。

(大丈夫、何も問題はないさきっと……)

 腹を括り、魔証石へと魔力を送る。
 送り出した魔力はすんなりと魔法陣に浸透していき、魔法陣は赤く光り出した。

(だ、大丈夫か? いや、たぶん初登録だとこういう色になるんだろきっと……)

 先ほどまでと違う魔証石の反応に戸惑いを隠せず門番の青年へと視線を送ると、先程まで笑顔を一切崩す事の無かった彼の眉間には皺がより、怪訝そうな表情になっていた。

(ッ!?)

 冷や汗が噴き出し、魔証石へと触れた手が緊張からか震える。

(やっぱり何かマズかったのか!? どうしようここまで来たのに入れないなんてなったら……。ここからまた家まで戻るのか――)

「――なーんて! 冗談ですよ!」

「……へ?」

 焦りに焦る自分の思考を門番の青年の明るい声が遮り、思わず素っ頓狂な声を漏らしてしまう。

「じょ、冗談ですか?」

「ええ、随分と緊張されていたご様子でしたので、僭越ながら一計案じさせていただきました。気分を害してしまったならお詫びいたします。申し訳ありません」

 門番の青年は再び笑みを浮かべた後、眉尻を少し下げて申し訳なさそうにそう言った。
 確かにちょっと心臓には悪かったが、こちらの事を思っての行動であるならば一概に責めるというのもおかしいだろう。
 かなり緊張していたのは事実であるし、寧ろ実際に問題が無いとわかった事で気分が楽になったまである。
 やはり感謝こそすれ、謝罪を求めるような事ではないだろう。

「い、いえ、確かにちょっと焦りましたけど別に気分を害するような事でもないですから……。寧ろ気にかけてくださってありがとうございます。おかげで少し楽になりました」

「そうでございますか。それならば一計案じた甲斐もあったというものですね! では緊張もほぐれた所で、個人登録の方を進めますのでまずはお名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」

「はい、須藤 武と言います」

「『スドウ タケル』様ですね。"スドウ"が家名でよろしいでしょうか?」

「はい」
「かしこまりました。では年齢と誕生月の方を教えていただけますでしょうか?」

「十九歳で師走の生まれです」

「ありがとうございます」

 一応、誕生月などは気にするのだと少し驚いた。
 というのも、おじいちゃんと暮らしていた頃は特に正確な月や日を気にした生活をしておらず、"秋の終盤"であったり"冬の中頃"という感じの感覚で過ごしていて、たまにおじいちゃんが「そろそろ霜月かいのぅ……」などと呟くのを聞いて月を把握していたので、この世界では月や日がそんなに重要視されていないのだと思っていたからだ。
 やはりあの森での生活が特別であったという事なのだろう。
 しかし誕生日については聞かれない辺り、やはりそこまで重要視されてはいないようだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした

むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~ Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...