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第二章 軍属大学院 入学 編
56.いざ、帝都!-Ⅲ
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また考えが少しそれてしまったが、要するにソフィアはそんな危険を伴う妙技を短時間ながらも成功させるのは凄い事で、それを否定する自分に異を唱えたいのであろう。
確かに魔力制御の特訓に関してはかなり努力をしたとは思う。
普通の人がどのように鍛えるのかを知らないから何とも言い難いが、おじいちゃんの居る日は毎日脳と体を酷使して、意識を失うまで多方面からの様々な攻撃をひたすら何時間もシエラで防いだり回避したりする特訓をしていたのだ。
おじいちゃんの居ない日だって、流石に意識を失った日はそれほど多くは無いが、それでも倒れる寸前まで魔力制御の特訓をしていた。
まだまだ未熟であるのは承知の上だが、自分の限界まで努力をしていたという自覚はある。
彼女はそのことを誇るべきだと言ってくれているのかもしれない。
「……うん、そうだね。ありがとうソフィア。でも、まだまだ未熟っていうのは本当なんです。たぶんですけど、お姉さんの方が僕よりもずっと強いですし」
そんな自分の言葉を聞いたお姉さんは少し驚いたような顔をした。
「あら、どうしてそう思うの? キーくんたちから何か誇張されたお話でも聞いたのかしら?」
「いえ、その、何というか……雰囲気、ですかね?」
別に侮っているわけではないが、サキトやソフィアやアイラの三人とそれぞれ一対一で戦うならば、自分が打ち倒すことは出来ずとも、持久戦に持ち込めば最終的には魔力量の差で勝つことは出来ると思う。
キュウの魔力頼りだが、それが自分の戦い方なのだからそれは良いのだ。
しかしおじいちゃんやテッチがその気になれば、自分なんて一瞬で倒されるというのはやらなくても何となくわかる。
明確に根拠があるわけではないのだが、本当に何となく"強者"というものはそういう雰囲気を纏っているのだ。
自分はその雰囲気を最初に見た時から彼女に感じている。
「おお! 流石はタケル! 見る目があるな! 義姉さんは確かに半端じゃなく強ぇぞ!」
「確かに、軍属大学院の臨時講師じゃなければ絶対に軍にスカウトされてるくらいには強いわね。私も魔力制御の特訓をたまにやってもらってるから知ってるけど、リオナさんの制御技術は……ヤバいわよ」
サキトは目を輝かせながら、アイラは若干苦笑しながら自分の感覚が正しい事を伝えてくれる。
というよりアイラの苦笑の理由が気になる。
いったい何があったのだろうか。
「もう! キーくんもアイラちゃんも人の事を"一瞬で街一つ滅ぼせる化け物"みたいに言って! お姉ちゃんはただ魔力制御がちょっと得意なだけなんだから!」
(なんだその例えは……)
というより今のサキトたちの発言にはそんな意図が組み込まれていたというのであろうか。
確かにおじいちゃんであれば街一つくらい簡単に消し去れそうな気はするが、流石にこのお姉さんがそこまで出来るとは――
(いや、二人がそう言うのであれば出来るのかもしれないな……。たぶんどころか絶対僕より強いじゃないか)
そう考えるとさっきの「僕よりずっと強い」発言が煽りと受け取られないか心配になってきた。
どうしよう、早めに謝っておいた方が吉だろうか。
しかしよく考えてみれば自分も村一つくらいなら消し飛ばせるかもしれない。
やらないけど。
「いや、義姉さん……流石にそこまでは言ってないから」
「流石にリオナさんでもそれは無理でしょ……無理よね? ってかタケルどうしたの? いきなりしゃがみ込んだりして……」
「……ちょっと地面が気になってね。いやぁ良い地面だ。硬度が素晴らしい」
「た、タケルくん……?」
よかった。
どうやらお姉さんの勘違いだったようだ。
危うくもう少しで無意識のうちに土下座で謝るところだったが、地面を褒め称える事でどうにかそんな醜態は回避できたようだ。
ソフィアが何やら心配そうな眼差しを自分に向けてきているような気もするが、きっと気のせいだ。
地面を褒めるのをやめて起き上がると、お姉さんが何やらクスクスと笑っている。
「ぷふっ……あなた、地面が……ぶふっ……好きなのね。……キーくん、この子面白いわね」
どうやら何かがツボに入ったようだ。
「あなたの例えもなかなかですよ?」と返したいところではあるが、それでせっかく良くなった機嫌を損ねて「そんなに地面が好きなら今すぐたっぷりと舐めさせてあげるわ」などと言われてけちょんけちょんにされるかもしれないと考えると、余計な事は言わない方が良いだろう。
どの程度かは結局わからないが、お姉さんは自分よりも強い事は確かなのだ。
「改めまして、武っていいます。よろしくお願いしますお姉さん。あと別に地面は好きではないです」
怒らせる気は無いが、一応予防線は張っておこう。
「はい、よろしくね。お姉さんってなんだかよそよそしいから、私の事はリオナで良いわよタケル君」
「じゃあ、リオナさんって呼びますね」
ようやく自己紹介も終わったところで、人用の出入り口の方を見ると人だかりのせいで出来ていたであろう行列が無くなっていた。
今ならスムーズに入る事が出来るかもしれない。
「そういえばタケル、ずっと"帝都を早く見てみたい"って言ってたもんな! 悪いな待たせちまって」
「あら、そうなの? それは悪い事をしちゃったわねぇ。ごめんねタケル君」
「いえいえ、別に大丈夫ですよ」
サキトとリオナさんが申し訳なさそうにするが、二人の再会の方がずっと重要なものであったのだから別に良いのだ。
「それじゃあそろそろ入りましょうか。ロンドが暇すぎて寝ちゃってますし……。ほら、起きてロンド」
「……ピィ?」
伏せをしたテッチの背の上で呼吸の度に上下にゆっくりと揺られるのが気持ちよかったのかロンドは寝てしまっていたようだ。
ソフィアが寝ぼけ目のロンドを肩に乗せたところでテッチも起き上がり、全員で門へと向かう。
二人の再会が重要であったのは本当であるが、自分が帝都を楽しみにしていたのも本当である。
足取りは軽く、肩に乗るキュウも楽しみなのか尾をいつもより軽快に揺らしている。
家を出てから三日、ようやく自分は半年前から名前だけは知っていたこの"帝都ヴェルジード"へと到着したのであった。
確かに魔力制御の特訓に関してはかなり努力をしたとは思う。
普通の人がどのように鍛えるのかを知らないから何とも言い難いが、おじいちゃんの居る日は毎日脳と体を酷使して、意識を失うまで多方面からの様々な攻撃をひたすら何時間もシエラで防いだり回避したりする特訓をしていたのだ。
おじいちゃんの居ない日だって、流石に意識を失った日はそれほど多くは無いが、それでも倒れる寸前まで魔力制御の特訓をしていた。
まだまだ未熟であるのは承知の上だが、自分の限界まで努力をしていたという自覚はある。
彼女はそのことを誇るべきだと言ってくれているのかもしれない。
「……うん、そうだね。ありがとうソフィア。でも、まだまだ未熟っていうのは本当なんです。たぶんですけど、お姉さんの方が僕よりもずっと強いですし」
そんな自分の言葉を聞いたお姉さんは少し驚いたような顔をした。
「あら、どうしてそう思うの? キーくんたちから何か誇張されたお話でも聞いたのかしら?」
「いえ、その、何というか……雰囲気、ですかね?」
別に侮っているわけではないが、サキトやソフィアやアイラの三人とそれぞれ一対一で戦うならば、自分が打ち倒すことは出来ずとも、持久戦に持ち込めば最終的には魔力量の差で勝つことは出来ると思う。
キュウの魔力頼りだが、それが自分の戦い方なのだからそれは良いのだ。
しかしおじいちゃんやテッチがその気になれば、自分なんて一瞬で倒されるというのはやらなくても何となくわかる。
明確に根拠があるわけではないのだが、本当に何となく"強者"というものはそういう雰囲気を纏っているのだ。
自分はその雰囲気を最初に見た時から彼女に感じている。
「おお! 流石はタケル! 見る目があるな! 義姉さんは確かに半端じゃなく強ぇぞ!」
「確かに、軍属大学院の臨時講師じゃなければ絶対に軍にスカウトされてるくらいには強いわね。私も魔力制御の特訓をたまにやってもらってるから知ってるけど、リオナさんの制御技術は……ヤバいわよ」
サキトは目を輝かせながら、アイラは若干苦笑しながら自分の感覚が正しい事を伝えてくれる。
というよりアイラの苦笑の理由が気になる。
いったい何があったのだろうか。
「もう! キーくんもアイラちゃんも人の事を"一瞬で街一つ滅ぼせる化け物"みたいに言って! お姉ちゃんはただ魔力制御がちょっと得意なだけなんだから!」
(なんだその例えは……)
というより今のサキトたちの発言にはそんな意図が組み込まれていたというのであろうか。
確かにおじいちゃんであれば街一つくらい簡単に消し去れそうな気はするが、流石にこのお姉さんがそこまで出来るとは――
(いや、二人がそう言うのであれば出来るのかもしれないな……。たぶんどころか絶対僕より強いじゃないか)
そう考えるとさっきの「僕よりずっと強い」発言が煽りと受け取られないか心配になってきた。
どうしよう、早めに謝っておいた方が吉だろうか。
しかしよく考えてみれば自分も村一つくらいなら消し飛ばせるかもしれない。
やらないけど。
「いや、義姉さん……流石にそこまでは言ってないから」
「流石にリオナさんでもそれは無理でしょ……無理よね? ってかタケルどうしたの? いきなりしゃがみ込んだりして……」
「……ちょっと地面が気になってね。いやぁ良い地面だ。硬度が素晴らしい」
「た、タケルくん……?」
よかった。
どうやらお姉さんの勘違いだったようだ。
危うくもう少しで無意識のうちに土下座で謝るところだったが、地面を褒め称える事でどうにかそんな醜態は回避できたようだ。
ソフィアが何やら心配そうな眼差しを自分に向けてきているような気もするが、きっと気のせいだ。
地面を褒めるのをやめて起き上がると、お姉さんが何やらクスクスと笑っている。
「ぷふっ……あなた、地面が……ぶふっ……好きなのね。……キーくん、この子面白いわね」
どうやら何かがツボに入ったようだ。
「あなたの例えもなかなかですよ?」と返したいところではあるが、それでせっかく良くなった機嫌を損ねて「そんなに地面が好きなら今すぐたっぷりと舐めさせてあげるわ」などと言われてけちょんけちょんにされるかもしれないと考えると、余計な事は言わない方が良いだろう。
どの程度かは結局わからないが、お姉さんは自分よりも強い事は確かなのだ。
「改めまして、武っていいます。よろしくお願いしますお姉さん。あと別に地面は好きではないです」
怒らせる気は無いが、一応予防線は張っておこう。
「はい、よろしくね。お姉さんってなんだかよそよそしいから、私の事はリオナで良いわよタケル君」
「じゃあ、リオナさんって呼びますね」
ようやく自己紹介も終わったところで、人用の出入り口の方を見ると人だかりのせいで出来ていたであろう行列が無くなっていた。
今ならスムーズに入る事が出来るかもしれない。
「そういえばタケル、ずっと"帝都を早く見てみたい"って言ってたもんな! 悪いな待たせちまって」
「あら、そうなの? それは悪い事をしちゃったわねぇ。ごめんねタケル君」
「いえいえ、別に大丈夫ですよ」
サキトとリオナさんが申し訳なさそうにするが、二人の再会の方がずっと重要なものであったのだから別に良いのだ。
「それじゃあそろそろ入りましょうか。ロンドが暇すぎて寝ちゃってますし……。ほら、起きてロンド」
「……ピィ?」
伏せをしたテッチの背の上で呼吸の度に上下にゆっくりと揺られるのが気持ちよかったのかロンドは寝てしまっていたようだ。
ソフィアが寝ぼけ目のロンドを肩に乗せたところでテッチも起き上がり、全員で門へと向かう。
二人の再会が重要であったのは本当であるが、自分が帝都を楽しみにしていたのも本当である。
足取りは軽く、肩に乗るキュウも楽しみなのか尾をいつもより軽快に揺らしている。
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