アポロの護り人 ―異世界夢追成長記―

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第二章 軍属大学院 入学 編

55.いざ、帝都!-Ⅱ

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「ん……キーくん? 伝説の何なの?」

「えーっと、それは、ほら、あの、せ、せい……」

 きっと今サキトは脳をフル稼働させて上手く当てはまる言葉を探しているのだろう。
 冷や汗をだらだら流す姿からは焦りしか感じられない。
 旅の間で話を聞く限りは、サキトはあまり考える事が得意なタイプでは無いようなのだが、果たしてサキトはこの事態を乗り越えられるのであろうか。
 焦っているのはサキトだけではなく、ソフィアとアイラも誤魔化し方を考えているのか、パッと見は冷静そうにしているが頬には冷や汗が伝っている。
 サキトが言ったのが「伝説の」までであればまだどうとでもなりそうなものであるが、「伝説のセイ」まで言ってしまっている。

(普通に考えて無理だよな……。さあサキト、どうやって誤魔化す)

 焦る三人とは対照的に、そんな冷静な思考を自分はしていた。
 自分がこのちょっとした危機に対して何故こんなに冷静に傍観に徹していられるのかと言うと、いつでも助け舟を出すことが出来るからだ。
 助け舟というのは、実を言うと自分はおじいちゃんから、説明が必要だと感じた場面では別におじいちゃんの名前を出しても良いと言われているのだ。
 先程のサキトのように、こんな誰がどこで聞いているかわからないような場所で声を大にして言えば、世間に広まってしまうかも知れないが、別にサキトのお姉さん一人に言う分には、口外しないように言えば大丈夫だろう。
 とは言え説明しないで済むに越したことは無いため、サキトが思いつかないか眺めていたのだ。
 しかし案の定というか、サキトは未だにうんうんと唸って俯いており、上手い誤魔化し方を思いつかないようである。

(まあそりゃ無理だよな。あと一文字言えば完全におじいちゃんだもん)

 寧ろ察しが良ければ既にバレていてもおかしくないレベルなのではないだろうか。
 「伝説のセイル」を「伝説のセイ」まで言っているのだ。
 「カレーライス」を「カレーライ」まで言っているようなものだろう。
 バレるわ。

(仕方ない。説明するか……)

 そうやって自分が動こうとした時、唐突にサキトが目を輝かせながら顔を上げ、右の拳を空へと突き上げた。
 まるで脳に電流が走ったかのように、それこそ誰から見ても「思いついた!」という事が見てとれるかのように。

「そう! なんてたってあの伝説の"精霊術師"だからな!」

 声や表情からは喜色が満ち溢れており、上手く当てはまる言葉を見つけ出せた事がさぞかし嬉しかったのだという事がありありと感じさせられる。

(サキト……確かに上手く合わせたとは思う。よく思いついたとも思う。……思うんだけど、ただ――)

 そんなにあからさまな態度だと普通に誤魔化したのがバレるのではないだろうか。
 突き上げる拳は硬く握りしめられており、感動のあまりか小さく震えている。
 いわゆるガッツポーズという奴だろう。
 見事なものだ。

「へー! キーくんたちとそんなに変わらないくらいに見えるけど、精霊術が使えるって事? 確かにそれは凄いわねぇ」

 しかしお姉さんはサキトの態度に対して特に疑念を抱いた様子も無く受け入れたようで、そんな風に自分の事を持ち上げてくる。
 人に褒められたりするのはおじいちゃんである程度慣れていると思っていたのだが、何だか少し違う感覚がして、その慣れない感覚に何だかこそばゆくなり、つい訂正してしまう。

「いっ、いえ、短時間精霊化が出来るってだけであってまだまだ自分は未熟で……別にお姉さんやサキトが言うほど凄いわけでは……」

「タケルくんっ!」

 そんな照れ隠しの訂正をソフィアに遮られた。
 少しばかり勢いの強いその声に何事かとソフィアの方を見てみると、彼女は僅かに頬を膨らませてこちらを見ている。

「ど、どうしたのソフィア……お、怒ってる……?」

「え、いえ、別に怒っては……い、いえ! 怒ってます!」

 少し慌てた表情で否定したかと思えば、また少し頬を膨らませて肯定した。
 どっちなのだろうか。

「タケルくんは少し謙遜しすぎです! 精霊術はもちろんですけど、精霊化というのも出来る人が本当に数える程しかいない妙技なんです! 短時間でも出来る事自体が凄いんです! 生半可な魔力制御で使えば……死んでしまう事もあるんですよ……?」

(死ぬってそんな危険な……いや、危険か……)

 普通に考えれば、御しきれなかった魔力が周囲を融解させてしまうような行為が危険でないはずがない。
 あの融解に自分が巻き込まれなかったのは、何とか自分の魔力制御の練度がその段階に達していたという事なのだろう。
 ひょっとしたらおじいちゃんが自分に基本的な格闘術や身のこなし以外は魔力制御の特訓しかさせなかったのは、精霊化した際の危険性をいち早く排除するためだったのかもしれない。
 おじいちゃんもまさか祝詞を言っただけでいきなり精霊化をしてしまうとは思ってなかったようで、初めて精霊化してしまって森を融解させてしまった時は、珍しく大慌てで自分の安否を確認しに来ていた。
 というより今思い返せば、精霊化の魔力を抑えきれずに体から炎が噴き出した時にすぐ傍に居たのにちゃんと炎から逃れていた辺りは、流石はおじいちゃんだと思う。

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