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第二章 軍属大学院 入学 編
54.いざ、帝都!-Ⅰ
しおりを挟む「ね、義姉さん……そろそろ……」
サキトのお姉さんがソフィアとアイラの二人に抱きついてから二、三分が経過した頃、サキトが自分の方をチラチラと見ながらそう口にした。
別に自分に関してはそれほど急いだ旅でもないうえに、実のところこの後自分がどこに向かえば良いのかすら知らない状態だ。
(気が済むまで再会を喜びあっていてもらって構わないんだけどなぁ。あんなに喜んでるんだし)
当のお姉さんは、未だに小さくえぐえぐと泣きながらもサキトの言葉に反応する。
「うぅ……ごめんね。お姉ちゃん本当に嬉しくって……話したいこともいっぱいあって……。でも……本当に……無事で――」
本当の本当に三人の事を心配していたのだろう。
感情がぶり返してきたのか、また泣き出しそうになってしまうお姉さんをサキトが慌てて諌めて落ちつかせようとする。
「あぁもう! 話なら家でたっぷりと聞くからさ! 俺たちも色々と報告に行かなきゃいけないことがあるし、タケルも待たしてるからさ! 一旦離れて! ほらっ!」
「うぅ……キーくんがお姉ちゃんに冷たい……。というより、タケル? って誰のことー……?」
サキトに捲し立てられたお姉さんは、ソフィアたちから離れつつハンカチで目元を拭いながら、辺りをキョロキョロと見回し始める。
名乗り出ようかとも思ったが、その視線が自分を捉えたところでピタリと止まった。
(まあこれだけ側で眺めてる奴いたらわかるか)
「ひょっとして、あなたがタケル君とやらかな?」
改めて向き合って見てみると、その顔立ちがどことなくサキトを連想させる部分があることに気がつく。
特に彼女が少し泣き腫らしてしまっている少しつり上がり気味の目元などそっくりであるし、腰まで伸びたストレートの髪など、質こそサキトのツンツンの剛毛と違い柔らかそうであるが、色などはほとんどおなじである。
寧ろ義理の姉弟だと言う方が不自然に感じるくらいだ。
しかし、サキトの男らしく整った顔立ちに似ているとは言え、髪が長かったり、仕草が柔らかかったりするおかげかしっかりと美しい女性として認識できる。
(つまりサキトも仕草を柔らかくしてウィッグでもつければ……)
そんな風に思考が脱線仕掛けた時、肩に乗るキュウが尻尾で後頭部を軽く叩いてきた。
現実に引き戻されて慌てて問いに対して答える。
「あっ、はい。そうです。僕が武です」
まさか人との対話でキュウにフォローを入れられるとは思いもしなかった。
ありがたいが何だか複雑な気持ちだ。
(人との会話中にすぐに色々と考え込んでしまう癖はどうにかするべきだよな……)
などとまた考え込んでしまいそうになったので、癖を直す第一歩としてさっそく意識を自己紹介へと向けるようにする。
「三人とはついこの間知り合いまして、その、とも……友達、です。ちょっと訳あって知らない事だらけなので、色々教えてもらってます」
言っていて、"友達"という言葉の響きに何だかくすぐったい気分になる。
前の世界でも普通に居たのだが、何故であろうか。
そんな自分の自己紹介を聞いたサキトは、どこか引っかかる所でもあったのか少しだけムッとして、口を開いた。
「タケルは俺たち三人の友達で、命の恩人だ! 詳しくは帰ってから話すけど、タケルはすげぇんだぜ! タケルが居なかったら、確実に俺たちは死んでたってくらいすげぇんだ! 何てったってあの伝説のセイ――」
「ちょっ!? サキト!」
「ぐぇっ」
サキトがおじいちゃんの名前を口にしかけたところで慌ててアイラがサキトの襟首を引っ張って止めた。
何故アイラがそんな事をしたのか。
それは至極単純でおじいちゃんから森で会ったという事を一部の人以外には言わないようにと口止めされているからだ。
と言うのも、何やらおじいちゃんがあの森に居ることが下手に世間に広まってしまうと色々とまずい事が起きるかもしれないらしく、それを未然に防ぐためなのだとか何とか。
正直理由がどこかふわっとしている気がしなくもないが、ともかくそういう事らしい。
一部の人と言うのはソフィアの曾おじいさんや、自分が通うことになる軍属大学院とやらの学院長をしている人の事であり、サキトのお姉さんはその中には含まれていないのだ。
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