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第二章 軍属大学院 入学 編
60.食べ物屋にはご注意を-Ⅰ
しおりを挟むソフィアに貰った一年水晶のペンダントの留め金を外して首につけてみる。
水晶を繋いでいる金属製のチェーンはピカレスの触媒を繋ぐ首紐より少し短めで、水晶が胸元辺りに当たってひんやりとして気持ちいい。
しかし、水晶自体は小さいためかすぐに温もってしまい、後には硬質なものが肌に当たる感覚だけが残る。
こうなると少しばかり気になってしまう。
しかしよく考えれば、無意識に他人から見られないように服の下に入れてしまったが、あまり人目につかない方が良いピカレスの触媒と違い別に人から見えても良いのだ。
服の外に出してみると、陽光を反射してキラリと輝いてなかなか綺麗だ。
つまんで角度を色々と変えてみると、その度に違った色で光を反射する。
この水晶の中にある種が一年間で成長していくのだと考えると、それだけでも毎日が楽しくなりそうだと思えてしまう。
農業や園芸をする人々は、作物の育っていく様を見るのが楽しみになると聞くが、これも似たような感覚なのかもしれない。
実際に手塩にかけて育てるわけではないが、思い入れに関しては引けを取らない自信がある。
「ふふっ、気に入ってくれたみたいで嬉しいです!」
そんな自分の様子を見てか、ソフィアが嬉しそうにそう言った。
そんなソフィアの隣でアイラが冗談めかして文句を口にする。
「これでソフィアが恩返しの単独トップじゃない。まあ私はこういうの思いつけそうにもないから、そこは流石ソフィアって感じだけどね」
「え!? あ、別にこれは恩返しってわけじゃなくてね!? その……ただしてあげたかっただけっていうか……」
アイラの冗談にソフィアはあたふたとしている。
(もうこの際だから、ちゃんと言っておいた方がいいかもな……)
三人が自分に恩義を感じてくれているのはよくわかる。
でも違うのだ。
自分が求めているのは――
「ねえ、その恩っていうかな……色々してくれるのは本当に嬉しいんだけど、本当にもう気にしなくていいよ? そういうの抜きにして三人と付き合いたいっていうか……」
自分のその言葉を聞いてアイラとソフィアが慌てて返答してくる。
「ちょ!? 別にそういうつもりでタケルと接してたわけじゃないわよ!? 確かに借りっぱなしは嫌いって言ったけどそれとこれは別っていうか……」
「そうですよ! 私も別に、今回の事無しでタケルくんと出会っててもきっと仲良くなってましたし……」
「う、うん……それはわかるんだけど、やっぱり気になるっていうか……」
二人の言う事は本当によくわかるのだ。
きっと恩義なんてなくても、みんなはみんなとして自分に接してくれる。
そういう人たちなのだという事はわかるのだが、どうしても"恩があるから"というのが間に入る事で生じる何とも言えないモヤモヤが嫌なのだ。
こんなのただのわがままだ。
自分でも面倒くさい奴だと思う。
(そうわかっていても僕は――)
「――よし、わかった!」
唐突にずっと黙っていたサキトが声をあげた。
サキトはそのまま続ける。
「じゃあ、タケルはこれからも俺の事を色々助けてくれ! 俺は出来ねぇ事がいっぱいあって、きっと色々迷惑かけるからよ! その代わり――」
サキトはこちらにサムズアップを決めてさらに続ける。
「――恩義とかそういうの一切関係なく、俺も俺に出来る事でタケルを助けるからよ! いつでも頼ってくれよな!」
そう、きっと自分が三人に求めるのはサキトの言う様な関係性なのだ。
お互いがお互いであるから助け合えるような関係性――それが友人、ひいては親友というものなのではないだろうか。
("親友"……僕が欲しいのはそう呼べる存在なのかもな……)
おじいちゃんという家族を得られた事で、自分は欲張りになってしまったのかもしれない。
「――うん! ありがとうサキト」
「おう! ソフィアとアイラも、それでどうだ?」
「え? は、はい! 私もそうします! というより、最初からそのつもりです!」
「私だってそのつもりだったけど……、まあ確かにタケルからしたらそうやって感じるものかもしれないわね……。わかったわよ。あ! でもせめて時計だけは受け取りなさいよね!」
アイラもそこだけは譲れないようだ。
しかしそれでこのモヤモヤをもう気にしなくてもよくなるのならば、甘んじて受け入れるとしよう。
「うん、わかった」
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