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第二章 軍属大学院 入学 編
61.食べ物屋にはご注意を-Ⅱ
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そんな自分たちの会話を少し離れた所で見たいたリオナさんが、話が纏まったとみたのか、少し光悦としながら会話に入ってくる。
「若いっていいわね~。見てるこっちが照れちゃいそうだったわ。お姉ちゃんそういうのも好きよ」
自分たちが今話していた内容は照れるような内容だったのだろうか。
第三者の視点から見るとひょっとしたらそんな光景だったのかもしれない。。
周りを見てみると、ソフィアもアイラもサキトも一様に頬を少し染めている。
(え!? そんなに恥ずかしかった!?)
三人が照れているのを見ると何だか自分も恥ずかしくなってきた。
紛れもない本心を吐露しただけだったはずなのだが、そんなに恥ずかしかっただろうか。
照れる自分たちに向けてリオナさんは更に続ける。
「本当はこのままみんなとお茶にでも行って話を聞きたいんだけどねぇ。そういえばお姉ちゃんティスト様から頼まれたおつかいの途中だったのよ。キーくんたちの無事も確認できたわけだし、お姉ちゃんはそろそろ用事に戻るわ。お茶はまたの機会にでもしましょ! キーくんはまたお家でね。それじゃあね~」
そう言ってリオナさんは大通りの一つへと向かっていき、そのうちに人ごみに紛れて見えなくなってしまった。
残された自分たちの間に広がるのは、お互いに何だか照れてしまっているために誰も次の話を切り出せない様な妙な空気感。
(き……気まずい……)
そう思いながらも、何故だか自分はこの空気感の中に居られる事が少し嬉しいとも感じていた。
その事実だけ見ると、まるで辱めを受けて喜んでいるかのようだが、別にそういうわけではないと断じておきたい。
自分にそんな特殊な性癖は無いのだ。
無いったら無いのだ。
そもそも自分の性的嗜好なんて自分自身もよく知らないわけだが――
(……無いよね?)
自分に対する若干の不安を抱き始めていると、沈黙を破ってサキトが話し始める。
「な、なんかごめんな……。その……義姉さんが……」
「いや、それを言うならそもそも話を切り出したのは僕だし……」
「いや、それは別に……」
「…………」
再び広がる沈黙。
辺りには人の営みが織りなす喧噪が広がるなか、自分たちの間にだけは静寂が保たれていた。
「そ、そういえば! タケルくんはこの後どうするんですか?」
そんな沈黙に耐えられなくなったのか、遂にソフィアがやけ気味に声をあげた。
素晴らしいファインプレーだ。
本日のMVPを進呈したい。
「えーっと、実は僕もこの後どうするのかよく知らなくってさ。ソフィアたちは報告? に行くんだっけ?」
今度は会話を途切れさせないように気を付けて言葉を選ぶ。
「はい! 今回の事を学院に報告しに行くんですけど、タケルくんも一緒に来ますか? あ、でも先に宿探しとかしておいた方がいいですかね……?」
「うーん……まあ確かに先に宿を確保しておいた方がいいかもなぁ……」
そもそも自分はこれから住む場所も探さなくてはならないのだ。
軍属大学院とやらに寮でもあれば良いのだが、そういうことについて調べるにもまずは仮拠点となる場所が必要であろう。
まあ宿を探すにしても、土地勘の無い自分は結局ソフィアたちを頼る他ないわけであり――
(とりあえずソフィアたちについていくか)
「まあとりあえずソフィアたちについて――」
ついていく旨を伝えようとした時、右足の脹脛にぴりりとした極弱い電流が走る。
「ん? どうしたのテッチ?」
電流を自分へと流した犯人はテッチであり、これは常日頃から思考の渦に飲まれがちな自分をテッチが呼ぶ時の手法だ。
正直ひと手間をかけさせてしまって申し訳ない限りだ。
今の状況ならば普通に呼ばれても反応出来ていたとは思うが、きっとテッチももう癖になっているのだろう。
「ワウッ!」
「え? 『今から案内する』? どっか当てでもあるのテッチ?」
「ワゥ。ワウワウ」
「へぇ、おじいちゃんがそこに行けって言ってたのか……」
どうやら住居についてもおじいちゃんは手を回してくれているようだ。
ワンルームあれば暮らすには十分なのだが、テッチ曰くおじいちゃんが帝都に来る際に使っている一軒家らしい。
家が大きいと掃除なども大変そうではあるが、家賃がいらないとなると生活費の心配もだいぶ無くなるので、ありがたい限りである。
「ねえテッチ、その家ってどの道から行くの?」
そう聞くとテッチは鼻先で正面の大通りを示した。
「ソフィアたちはどの道を行くの?」
「私たちも城西……じゃなくて正面の通りですよ」
「じゃあどこまでかはわからないけど一緒に行こうか」
そう言うとテッチが先導するように歩き出したので、それについてみんなで歩き出した。
「若いっていいわね~。見てるこっちが照れちゃいそうだったわ。お姉ちゃんそういうのも好きよ」
自分たちが今話していた内容は照れるような内容だったのだろうか。
第三者の視点から見るとひょっとしたらそんな光景だったのかもしれない。。
周りを見てみると、ソフィアもアイラもサキトも一様に頬を少し染めている。
(え!? そんなに恥ずかしかった!?)
三人が照れているのを見ると何だか自分も恥ずかしくなってきた。
紛れもない本心を吐露しただけだったはずなのだが、そんなに恥ずかしかっただろうか。
照れる自分たちに向けてリオナさんは更に続ける。
「本当はこのままみんなとお茶にでも行って話を聞きたいんだけどねぇ。そういえばお姉ちゃんティスト様から頼まれたおつかいの途中だったのよ。キーくんたちの無事も確認できたわけだし、お姉ちゃんはそろそろ用事に戻るわ。お茶はまたの機会にでもしましょ! キーくんはまたお家でね。それじゃあね~」
そう言ってリオナさんは大通りの一つへと向かっていき、そのうちに人ごみに紛れて見えなくなってしまった。
残された自分たちの間に広がるのは、お互いに何だか照れてしまっているために誰も次の話を切り出せない様な妙な空気感。
(き……気まずい……)
そう思いながらも、何故だか自分はこの空気感の中に居られる事が少し嬉しいとも感じていた。
その事実だけ見ると、まるで辱めを受けて喜んでいるかのようだが、別にそういうわけではないと断じておきたい。
自分にそんな特殊な性癖は無いのだ。
無いったら無いのだ。
そもそも自分の性的嗜好なんて自分自身もよく知らないわけだが――
(……無いよね?)
自分に対する若干の不安を抱き始めていると、沈黙を破ってサキトが話し始める。
「な、なんかごめんな……。その……義姉さんが……」
「いや、それを言うならそもそも話を切り出したのは僕だし……」
「いや、それは別に……」
「…………」
再び広がる沈黙。
辺りには人の営みが織りなす喧噪が広がるなか、自分たちの間にだけは静寂が保たれていた。
「そ、そういえば! タケルくんはこの後どうするんですか?」
そんな沈黙に耐えられなくなったのか、遂にソフィアがやけ気味に声をあげた。
素晴らしいファインプレーだ。
本日のMVPを進呈したい。
「えーっと、実は僕もこの後どうするのかよく知らなくってさ。ソフィアたちは報告? に行くんだっけ?」
今度は会話を途切れさせないように気を付けて言葉を選ぶ。
「はい! 今回の事を学院に報告しに行くんですけど、タケルくんも一緒に来ますか? あ、でも先に宿探しとかしておいた方がいいですかね……?」
「うーん……まあ確かに先に宿を確保しておいた方がいいかもなぁ……」
そもそも自分はこれから住む場所も探さなくてはならないのだ。
軍属大学院とやらに寮でもあれば良いのだが、そういうことについて調べるにもまずは仮拠点となる場所が必要であろう。
まあ宿を探すにしても、土地勘の無い自分は結局ソフィアたちを頼る他ないわけであり――
(とりあえずソフィアたちについていくか)
「まあとりあえずソフィアたちについて――」
ついていく旨を伝えようとした時、右足の脹脛にぴりりとした極弱い電流が走る。
「ん? どうしたのテッチ?」
電流を自分へと流した犯人はテッチであり、これは常日頃から思考の渦に飲まれがちな自分をテッチが呼ぶ時の手法だ。
正直ひと手間をかけさせてしまって申し訳ない限りだ。
今の状況ならば普通に呼ばれても反応出来ていたとは思うが、きっとテッチももう癖になっているのだろう。
「ワウッ!」
「え? 『今から案内する』? どっか当てでもあるのテッチ?」
「ワゥ。ワウワウ」
「へぇ、おじいちゃんがそこに行けって言ってたのか……」
どうやら住居についてもおじいちゃんは手を回してくれているようだ。
ワンルームあれば暮らすには十分なのだが、テッチ曰くおじいちゃんが帝都に来る際に使っている一軒家らしい。
家が大きいと掃除なども大変そうではあるが、家賃がいらないとなると生活費の心配もだいぶ無くなるので、ありがたい限りである。
「ねえテッチ、その家ってどの道から行くの?」
そう聞くとテッチは鼻先で正面の大通りを示した。
「ソフィアたちはどの道を行くの?」
「私たちも城西……じゃなくて正面の通りですよ」
「じゃあどこまでかはわからないけど一緒に行こうか」
そう言うとテッチが先導するように歩き出したので、それについてみんなで歩き出した。
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