アポロの護り人 ―異世界夢追成長記―

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第二章 軍属大学院 入学 編

63.寂しさのスパイス-Ⅰ

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 大通りの商店街を抜けると交差点になっており、左右にも大きな通りが湾曲しながら伸びている。
 交差点の角には見回りの軍人たちとは別に常駐らしき軍人が立っており、その前には人の腰程の高さの細長い石の円柱が地面から伸びている。
 上面に魔法陣が刻まれているので、何かしらを操る装置なのかもしれない。
 商店街側の道沿いには至る所から使い込まれた馬車が出入りしており、恐らくこちらが搬入口であるという事が推測できた。
 忙しなく動き回っている人々もいれば、立ち話に興じている人々もおり、活気に満ち溢れていた商店街とはまた違った人々の営みが感じられる。

(こっちの通りは馬車がいっぱい通ってるんだな……)

 視線を左右に振って交差点を渡れるタイミングを見計らってみるが、右が過ぎれば左が来てと、絶妙に渡れそうに無い。
 急げば渡れない事も無いのだろうが、わざわざそんな危険な事をする場面でもないので、大人しく良いタイミングを待つのが吉であろう。

(こう考えると信号機って偉大だよな……)

 場所によって時間に差はあれど、待っていればいずれは安全に道路を渡れるのだ。
 ずっとタイミングを見計らうために視線を巡らさせるのは少々疲れてしまう。
 しかし何度か首を左右に振ったところで、自分とキュウ以外の面々は一人として首を振っていないという事に気が付いた。
 どういう事かと不思議に思っていると、交差点の角でひたすら立っていた軍人が動きを見せ、目の前の石柱へと手を翳し、魔力を流す。
 すると五台ほど馬車が通り過ぎた後に、それより後ろの馬車は交差点から五メートル程手前でぴたりと動きを止めた。
 止まった馬車たちの御者台に設置されているランプの様な物が、淡いがはっきりと見て取れる光を放っている。
 馬車の動きが止まったのを確認した軍人が再び石柱に魔力を流すと、馬車の手前にある石畳と交差点ギリギリにある石畳がいくつか車止めのように地面から伸びて、簡易的な横断歩道のようなものを作り出した。
 それと同時に、商店街側の大通りで停車していた高級そうな馬車が交差点を進み始める。

(なるほど、一応信号機みたいなシステムはあるんだ……)

 進みだしたテッチたちに置いて行かれないようについていきながら、馬車やせり上がった石畳へと目を向ける。
 ちゃんとした仕組みはわからないが、恐らく最初に軍人が石柱に魔力を流した際に、御者台のランプが光り、それが馬車への停止信号になるのだろう。
 停止を目視で確認したら車止めを出して商店街側が進める。
 そういうことなのだろう。
 止まっている馬車たちは全部、御者台でランプが点灯しているので、馬車にはあの装置を取り付ける事が義務付けられているのかもしれない。
 高級そうな馬車が交差点を過ぎ、歩行者がある程度渡ったところで、まず交差点ギリギリでせり上がっていた石畳が元に戻る。
 交差点を渡ろうと走り込みそうになっていた子供を母親らしき人物が止めている様子から察するに、これが歩行者の停止信号なのだろう。
 交差点を渡る歩行者がいなくなると、馬車の手前にある石畳も元に戻り、再び馬車が動き出した。
 ランプの光は消えているので、恐らく自分の推測は正しいだろう。
 再び交通量の多くなった交差点から目を離し、前を向く。
 ビル側の道沿いには商店街側程の人はおらず、何だかあまり活気が感じられない。
 都会然としたビル側の方が閑散としている様子はなんだか奇妙である。
 自分たちと共に交差点を渡ってきた人々も、殆どはそのまま真っ直ぐと進み、曲がる人あまりいない。

「キュ……」

「え? ああ、そっか。キュウはまだ食べてなかったな……」

 キュウが空腹――というよりも、「何かを食べたい」というような欲求を伝えてきたのでマジックバッグの中を探る。
 本来精霊に食事は絶対的に必要なものではないらしく、"空腹"という概念は無いらしい。
 単純においしいから食事をするという感じである。
 さっきおいしそうな果物を見たせいで、口が寂しくなったのだろう。
 キュウに小さな木の実を与えながら、横に聳え建つビル群を見上げつつみんなについて大通りを直進する。
 一階部分は普通に石で作られており、全面ガラス張りなのは二階からのようだ。
 いや、これはひょっとしたらガラスでは無いのではないだろうか。
 角度の浅い二階付近も全く中の様子が見えないところから見るに、鏡張りと言った方が正確なのかもしれない。
 だがその割には、まだほとんど真上にある太陽の光をそれほど反射していないようにも感じる。
 鏡のように空を映しているのに、全く眩しくないのだ。
 また、ビル一つあたりの幅は二十五メートルと言ったところであろうか。
 ビル同士の間は五メートルくらいしか離れていないが、鏡張りのおかげなのか知らないがそれほど暗くない。
 そんな具合にひたすら同じような建物が並び立っている。
 隙間からは草木の生えた公園の様なものが垣間見え、その向こうには恐らく先ほどの交差点を曲がった通り沿いに並び建っているであろうビルたちが見えた。
 それでも十分すぎる程に量は多いのではあるが、どうやら内側までギチギチにビルが建設されているわけでは無い様だ。

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