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第二章 軍属大学院 入学 編
79.熱々クソ雑魚殲滅パンチ-Ⅱ
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「ッ――! こ、殺さなくっても、人間なら話し合えるじゃないですか! 言葉が通じるなら説得も――」
「話が通じるならいいんだけどなぁ……。ボウズは見た事ないだろうけどよぉ、アレはもう言葉が通じないようなもんだぜ? ただこちらを殺そうとしてくる――言葉を喋る魔物みてぇなもんだ。もう一度聞くぜ? ――お前に人を殺す覚悟があるか?」
「…………」
何も言えない。
つまりは今この場で精霊化して攻撃をしろというのは、その覚悟があるかの確認なのだろうか。
――『あの劫火で、人間を焼き殺す事ができるのか?』と。
断言しよう。
少なくとも今の自分にはあれを人に向けて撃つ事なんて出来ない。
そんな想像をする事すらしたくない。
魔物の命をすでに九つもこの手で奪っておいて何を言っているのだと思われるかもしれないが、相手がどんなに悪人でどんなに人から憎まれていようと、自分にその命を奪う事は出来ないだろう。
『魔物ならいいのに人はだめなのか?』と、『命に差をつけるのか?』と、そんな思考が頭を巡るが、その思考が答えに辿り着く瞬間は一向に訪れない。
自分は夢を必ず叶えると誓った。
でもそれならば、"人を護る"ために"人を殺す"事が必要なのだとしたら、自分の夢は誰かの命を奪う事になるのだろうか。
自分は人を殺さねばならないのだろうか。
――もしそうなのだとしたらこの夢を抱いた自分は――
――抱くきっかけになった両親の姿は――
「――だぁぁっ! 悪かったよちょっと言い過ぎた! 流石に今のボウズにそこまでの覚悟なんか求めちゃいねぇよ……。別に泣くこたぁねぇだろうが……」
「え……?」
また自分は泣いているのだろうか。
手を当ててみると確かに頬は濡れていて、キュウはまたそれを舐めとり始める。
泣いているつもりは無かったのだが、両親の死が結果的に誰かの命を奪う事になるのだとしたらと考えると、何だか無性に悲しくなったのだ。
父と母は、もし自分が誰かを殺したとしたら、例えそれが誰かを護るためだったとしてもどう感じるだろうかと思うと辛くてたまらなくなったのだ。
「ったく……ジジイの言う通り泣きみそ野郎だなぁ。確かに軍人になったらそういう覚悟も必要になってくるが、魔物を殺すのとはわけが違うって、そういう上手く言えねぇ感情があるのもわからねぇわけじゃねぇ……。だがら別に今すぐにしろって話じゃねぇよ」
一拍呼吸を置いてティストさんは続ける。
「でもなボウズ。いつかはその覚悟がいる時がくるかもしれない。ってかきっと来るんだ。別に殺さなくても無力化できればどうにかなる事もあるが、死ぬ気でこっちを殺しにかかってくる奴らってのは簡単に無力化なんて出来ねぇし、アホみてぇに強ぇ奴らもわんさか居やがる。そういう時に今のボウズに使える力ってのはそれしかねぇんだろ? だったら制御できねぇうちは、撃てるようになっとくしかねぇだろ」
確かに、もしティストさんみたいな強い人が殺そうとしてきたら、ポルテジオと自分の使える魔法程度では絶対に無力化なんて出来る訳も無い。
だとしたら、自分にはもう精霊化をして炎を撃ち放つ事しかできないだろう。
「でも……あんなものを撃ったら流石にティストさんも……」
「んあ? ああ、んな事気にかけてたのかよ」
そう言って鼻で笑った後にティストさんは続けて口を開く。
「最初の方に言った事をもう忘れたのか? ボウズ程度の力量でこの私に攻撃が掠るわけねぇだろ。人を殺せねぇってボウズには、絶好の練習相手じゃねぇか。良いからやってみろよ。私の言う事が信じられねぇってんならテッチにでも聞いてみろよ」
そう言われて、離れた場所でハヴァリーさんと並んで試験の様子を見ているテッチに目を向けると、僅かに首を縦に振った。
ティストさんの方を再び見て、確認を取る。
「本当に……良いんですか……?」
「良いからありがたく姉弟子様の胸を借りとけ」
借りる程の胸も――いや、やめておこう。
テッチも大丈夫だと言っているんだ。
『やるの?』
キュウが問いかけてくる。
「ああ、やろう。やらせてもらおう」
正直怖くてたまらない。
テッチの事は信用しているし、ティストさんが強いという事もわかっている。
でも、どうしても怖いのだ。
あの感覚を――魔物を焼き尽くした感覚を知ってしまっているからこそ、それを人に向けるという行為がおぞましくて堪らない。
でも、いざという時に何も出来ない自分でいるのはもう嫌なのだ。
「それじゃあ、ティストさん。――お願いします」
「おう」
そう軽く返事をしてティストさんは自分から距離を取って槍を構える。
深呼吸をして気持ちを落ち着けてから、覚悟を決めて祝詞を口にする。
「――『太陽の精霊化』」
「話が通じるならいいんだけどなぁ……。ボウズは見た事ないだろうけどよぉ、アレはもう言葉が通じないようなもんだぜ? ただこちらを殺そうとしてくる――言葉を喋る魔物みてぇなもんだ。もう一度聞くぜ? ――お前に人を殺す覚悟があるか?」
「…………」
何も言えない。
つまりは今この場で精霊化して攻撃をしろというのは、その覚悟があるかの確認なのだろうか。
――『あの劫火で、人間を焼き殺す事ができるのか?』と。
断言しよう。
少なくとも今の自分にはあれを人に向けて撃つ事なんて出来ない。
そんな想像をする事すらしたくない。
魔物の命をすでに九つもこの手で奪っておいて何を言っているのだと思われるかもしれないが、相手がどんなに悪人でどんなに人から憎まれていようと、自分にその命を奪う事は出来ないだろう。
『魔物ならいいのに人はだめなのか?』と、『命に差をつけるのか?』と、そんな思考が頭を巡るが、その思考が答えに辿り着く瞬間は一向に訪れない。
自分は夢を必ず叶えると誓った。
でもそれならば、"人を護る"ために"人を殺す"事が必要なのだとしたら、自分の夢は誰かの命を奪う事になるのだろうか。
自分は人を殺さねばならないのだろうか。
――もしそうなのだとしたらこの夢を抱いた自分は――
――抱くきっかけになった両親の姿は――
「――だぁぁっ! 悪かったよちょっと言い過ぎた! 流石に今のボウズにそこまでの覚悟なんか求めちゃいねぇよ……。別に泣くこたぁねぇだろうが……」
「え……?」
また自分は泣いているのだろうか。
手を当ててみると確かに頬は濡れていて、キュウはまたそれを舐めとり始める。
泣いているつもりは無かったのだが、両親の死が結果的に誰かの命を奪う事になるのだとしたらと考えると、何だか無性に悲しくなったのだ。
父と母は、もし自分が誰かを殺したとしたら、例えそれが誰かを護るためだったとしてもどう感じるだろうかと思うと辛くてたまらなくなったのだ。
「ったく……ジジイの言う通り泣きみそ野郎だなぁ。確かに軍人になったらそういう覚悟も必要になってくるが、魔物を殺すのとはわけが違うって、そういう上手く言えねぇ感情があるのもわからねぇわけじゃねぇ……。だがら別に今すぐにしろって話じゃねぇよ」
一拍呼吸を置いてティストさんは続ける。
「でもなボウズ。いつかはその覚悟がいる時がくるかもしれない。ってかきっと来るんだ。別に殺さなくても無力化できればどうにかなる事もあるが、死ぬ気でこっちを殺しにかかってくる奴らってのは簡単に無力化なんて出来ねぇし、アホみてぇに強ぇ奴らもわんさか居やがる。そういう時に今のボウズに使える力ってのはそれしかねぇんだろ? だったら制御できねぇうちは、撃てるようになっとくしかねぇだろ」
確かに、もしティストさんみたいな強い人が殺そうとしてきたら、ポルテジオと自分の使える魔法程度では絶対に無力化なんて出来る訳も無い。
だとしたら、自分にはもう精霊化をして炎を撃ち放つ事しかできないだろう。
「でも……あんなものを撃ったら流石にティストさんも……」
「んあ? ああ、んな事気にかけてたのかよ」
そう言って鼻で笑った後にティストさんは続けて口を開く。
「最初の方に言った事をもう忘れたのか? ボウズ程度の力量でこの私に攻撃が掠るわけねぇだろ。人を殺せねぇってボウズには、絶好の練習相手じゃねぇか。良いからやってみろよ。私の言う事が信じられねぇってんならテッチにでも聞いてみろよ」
そう言われて、離れた場所でハヴァリーさんと並んで試験の様子を見ているテッチに目を向けると、僅かに首を縦に振った。
ティストさんの方を再び見て、確認を取る。
「本当に……良いんですか……?」
「良いからありがたく姉弟子様の胸を借りとけ」
借りる程の胸も――いや、やめておこう。
テッチも大丈夫だと言っているんだ。
『やるの?』
キュウが問いかけてくる。
「ああ、やろう。やらせてもらおう」
正直怖くてたまらない。
テッチの事は信用しているし、ティストさんが強いという事もわかっている。
でも、どうしても怖いのだ。
あの感覚を――魔物を焼き尽くした感覚を知ってしまっているからこそ、それを人に向けるという行為がおぞましくて堪らない。
でも、いざという時に何も出来ない自分でいるのはもう嫌なのだ。
「それじゃあ、ティストさん。――お願いします」
「おう」
そう軽く返事をしてティストさんは自分から距離を取って槍を構える。
深呼吸をして気持ちを落ち着けてから、覚悟を決めて祝詞を口にする。
「――『太陽の精霊化』」
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