アポロの護り人 ―異世界夢追成長記―

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第二章 軍属大学院 入学 編

78.熱々クソ雑魚殲滅パンチ-Ⅰ

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「いや……精霊化って……」

 自分が精霊化して出来る攻撃――というか出来る事はたった一つだ。
 制御しきれない膨大な魔力を、地面をも融解させるほどの超高温の炎としてただ放出するだけの魔法。
 あんなものを人に向けて撃とうものなら――

「ティストさん……流石にそれは……」

「んあ? なんだよ。出来るんだろ? 精霊化」

「で、出来ますけども……魔力を制御しきれなくて、最終的に周囲に大量の炎を噴き出しちゃうんですよ」

「指向性はあるし、ボウズのまともな攻撃魔法ってのはそれしかねぇんだろ? それを見てやるっつってんだからさっさとやれ」

「知ってるなら尚更何言ってるんですか! ティストさんがどれくらい知ってるかわかりませんが、あんなもの人に撃ったら……撃ったら……」

「んあ? ……ああ、そういやそんな事も書いてあったな。――おいボウズ、お前は魔物と戦う事についてどう思う」

 急にどうしたのだろうか。

「なんで今……そんな事を……?」

 自分の疑問に特に答える事は無くティストさんは続ける。

「魔物ってのは二千年以上前に現れてからずっと、魔力あるもの――つまり人間や精霊を喰らってきた化け物だ。まあ精霊に関しちゃ魔物より出現が後だなんて説もあるが、二千年も前の事なんて確かにわかりっこねぇし正直どうでもいいわな」

 それは知っている。
 精霊が魔物より後などという情報は初耳だが、二千年程前に魔物が現れて人間を襲い出したという話は前におじいちゃんから聞いていた。

「そんな昔の事なんか私は正直知ったこっちゃねぇ。奴らに対抗するためには奴ら自身の事を知る必要があるっていう奴もいる。確かにそれも一理あるだろうな。だけど、奴らの事をどれだけ知ろうが絶対的に変わらねぇ事がある。それが何かわかるかボウズ?」

 一拍呼吸を置いてからティストさんは続ける。

「魔物が人類にとっての"敵"って事だ。――なあボウズ、もう一度聞くぞ。お前は魔物と戦う事についてどう思う? 別に答えを試験の評価に含むつもりなんて無ぇから正直に答えてみな」

 本当に何故、ティストさんは今自分にこの質問を投げかけるのだろうか。

(魔物と戦う事について……僕がどう思うか……)

 ティストさんはきっと自分があの森でソフィアたち三人を助けるために魔物と戦った事を知っている。
 つまりその時自分が思った事を言えと言っているのだろう。
 あの時自分は――

「本当は……戦わなくて済むならそれが良いです……。でも、こちらを殺そうとしてくるなら――僕が生きるために殺します」

 だが決して、"殺しても仕方ない"だなんて思わない。
 自分にもっと力や技術があれば、あの時もソフィアたちを連れて逃げる事だって出来たはずなのだ。
 だが、そうできるだけの力や技術は自分には無かった。
 だから殺したのだ。
 その罪から言い逃れをする気はない。

「"生きるために殺す"ねぇ……。私らのそれとは少しニュアンスが違う様な気もするが、まあ奴らと人類が"互いに殺しあう関係"って認識自体に変わりはねぇわけだ」

 物騒な物言いだが、確かに"互いに殺しあう関係"で間違いはないだろう。
 これからも、自分の生きる意味を――"誰かを護る"という想いを護るために魔物と戦う事は避けられないだろう。

(でも、それと精霊化して攻撃をする事に何の関係が――)

「でもなぁボウズ。軍人が"互いに殺しあう関係"にあんのは、何も魔物だけじゃぁねぇんだぜ?」

 それを聞いてドキリとした。
 試験を受けるうちに、もしかしたらと感じていたある"可能性"があったからだ。
 軍人を育成するための学校である軍属大学院。
 その機関の長であるティストさんは、ちゃんと聞いたわけでは無いがきっと軍人かもしくは軍に関係のある人なのだろう。
 まだ出会ってから一時間も経っていないであろうが、それでもこの人が良識を持った人である事はわかる。
 大事な試験だから厳しくしているが、所々にその優しさが垣間見えるからだ。
 おじいちゃんやテッチの事を甘いと言っていたが、この人もあの二人と同じで重要な時にはちゃんと真面目に取り組んで、普段は口調は少しアレだが優しい、そういう人なのだと思う。

 そんな人が「犯罪者に殺意を向けられる事なんてざらだ」と言って自分に殺意を向けたのだ。
 少なくとも自分は普通に生活をしていて、"相手に殺意を感じさせる"という様な芸当が出来るようになるとは思えないし、どうすれば出来るのかすら想像出来ない。
 やった事が無いから知らないが、前の世界で警官に「殺意を向けてください」なんて言って、その警官は実際に何の言葉も無しに殺意を自分に感じさせることが出来ただろうか。
 たぶん出来ないと思う。
 精々が出来ても"怖い"と思わせられるくらいなのではないだろうか。
 つまり裏を返せば、軍人ティストさんがそれを出来るのは、日常的にそれが必要になる、つまりは――

「私ら軍人は、テロリストや異教徒みたいな犯罪者たち――要するに人間とも"互いに殺しあう関係"なんだぜ? 今のボウズにそれが出来るか?」

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