87 / 163
第二章 軍属大学院 入学 編
78.熱々クソ雑魚殲滅パンチ-Ⅰ
しおりを挟む「いや……精霊化って……」
自分が精霊化して出来る攻撃――というか出来る事はたった一つだ。
制御しきれない膨大な魔力を、地面をも融解させるほどの超高温の炎としてただ放出するだけの魔法。
あんなものを人に向けて撃とうものなら――
「ティストさん……流石にそれは……」
「んあ? なんだよ。出来るんだろ? 精霊化」
「で、出来ますけども……魔力を制御しきれなくて、最終的に周囲に大量の炎を噴き出しちゃうんですよ」
「指向性はあるし、ボウズのまともな攻撃魔法ってのはそれしかねぇんだろ? それを見てやるっつってんだからさっさとやれ」
「知ってるなら尚更何言ってるんですか! ティストさんがどれくらい知ってるかわかりませんが、あんなもの人に撃ったら……撃ったら……」
「んあ? ……ああ、そういやそんな事も書いてあったな。――おいボウズ、お前は魔物と戦う事についてどう思う」
急にどうしたのだろうか。
「なんで今……そんな事を……?」
自分の疑問に特に答える事は無くティストさんは続ける。
「魔物ってのは二千年以上前に現れてからずっと、魔力あるもの――つまり人間や精霊を喰らってきた化け物だ。まあ精霊に関しちゃ魔物より出現が後だなんて説もあるが、二千年も前の事なんて確かにわかりっこねぇし正直どうでもいいわな」
それは知っている。
精霊が魔物より後などという情報は初耳だが、二千年程前に魔物が現れて人間を襲い出したという話は前におじいちゃんから聞いていた。
「そんな昔の事なんか私は正直知ったこっちゃねぇ。奴らに対抗するためには奴ら自身の事を知る必要があるっていう奴もいる。確かにそれも一理あるだろうな。だけど、奴らの事をどれだけ知ろうが絶対的に変わらねぇ事がある。それが何かわかるかボウズ?」
一拍呼吸を置いてからティストさんは続ける。
「魔物が人類にとっての"敵"って事だ。――なあボウズ、もう一度聞くぞ。お前は魔物と戦う事についてどう思う? 別に答えを試験の評価に含むつもりなんて無ぇから正直に答えてみな」
本当に何故、ティストさんは今自分にこの質問を投げかけるのだろうか。
(魔物と戦う事について……僕がどう思うか……)
ティストさんはきっと自分があの森でソフィアたち三人を助けるために魔物と戦った事を知っている。
つまりその時自分が思った事を言えと言っているのだろう。
あの時自分は――
「本当は……戦わなくて済むならそれが良いです……。でも、こちらを殺そうとしてくるなら――僕が生きるために殺します」
だが決して、"殺しても仕方ない"だなんて思わない。
自分にもっと力や技術があれば、あの時もソフィアたちを連れて逃げる事だって出来たはずなのだ。
だが、そうできるだけの力や技術は自分には無かった。
だから殺したのだ。
その罪から言い逃れをする気はない。
「"生きるために殺す"ねぇ……。私らのそれとは少しニュアンスが違う様な気もするが、まあ奴らと人類が"互いに殺しあう関係"って認識自体に変わりはねぇわけだ」
物騒な物言いだが、確かに"互いに殺しあう関係"で間違いはないだろう。
これからも、自分の生きる意味を――"誰かを護る"という想いを護るために魔物と戦う事は避けられないだろう。
(でも、それと精霊化して攻撃をする事に何の関係が――)
「でもなぁボウズ。軍人が"互いに殺しあう関係"にあんのは、何も魔物だけじゃぁねぇんだぜ?」
それを聞いてドキリとした。
試験を受けるうちに、もしかしたらと感じていたある"可能性"があったからだ。
軍人を育成するための学校である軍属大学院。
その機関の長であるティストさんは、ちゃんと聞いたわけでは無いがきっと軍人かもしくは軍に関係のある人なのだろう。
まだ出会ってから一時間も経っていないであろうが、それでもこの人が良識を持った人である事はわかる。
大事な試験だから厳しくしているが、所々にその優しさが垣間見えるからだ。
おじいちゃんやテッチの事を甘いと言っていたが、この人もあの二人と同じで重要な時にはちゃんと真面目に取り組んで、普段は口調は少しアレだが優しい、そういう人なのだと思う。
そんな人が「犯罪者に殺意を向けられる事なんてざらだ」と言って自分に殺意を向けたのだ。
少なくとも自分は普通に生活をしていて、"相手に殺意を感じさせる"という様な芸当が出来るようになるとは思えないし、どうすれば出来るのかすら想像出来ない。
やった事が無いから知らないが、前の世界で警官に「殺意を向けてください」なんて言って、その警官は実際に何の言葉も無しに殺意を自分に感じさせることが出来ただろうか。
たぶん出来ないと思う。
精々が出来ても"怖い"と思わせられるくらいなのではないだろうか。
つまり裏を返せば、軍人がそれを出来るのは、日常的にそれが必要になる、つまりは――
「私ら軍人は、テロリストや異教徒みたいな犯罪者たち――要するに人間とも"互いに殺しあう関係"なんだぜ? 今のボウズにそれが出来るか?」
0
あなたにおすすめの小説
ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした
むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。
配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。
誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。
そんなホシは、ぼそっと一言。
「うちのペット達の方が手応えあるかな」
それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』
チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。
その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる