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第二章 軍属大学院 入学 編
112.姉の願い-Ⅰ
しおりを挟む「うふふ、まさか本当に防ぎきるとは思わなかったわ。凄いわねタケル君」
「はぁ……はぁ……。防げないと思ったのに……やったんですか……?」
能天気にとんでもない事を言うリオナさんに対して、息も絶え絶えになりながらそう返答する。
まさか「早速始めましょうか」と言った途端に本当に大量の魔法による波状攻撃を放ってくるとは思ってもいなかった。
結果的に防ぎきれたのでまだ良かったが、ティストさんの時とは違い魔力探知のための魔力を拡散すらしていなかったのだ。
これは魔法についても言える事なのだが、ポルテジオを現出させる際の条件として、その現出させる地点にポルテジオを形成させられるだけの自分の魔力が存在している必要がある。
周囲数メートル程度であればすぐに魔力が拡散できるので問題はないのだが、遠くなればなるほど拡散するまでにいくらか時間がかかってしまうため、その分対応も遅くなってしまう。
そして、自分が扱える十のポルテジオのうち自由に操作できる三つに関しては、一度現出させてしまえばどこへだろうと動かすことができるのでそれなりな早さで対応も出来たのだが、他の七つに関してはそうもいかない。
つまり今回は、攻撃の初動を一早く抑える事は出来なかったわけだ。
そんな状態から本当によく防ぎ切ったものだと思う。
何より今回最も驚くべき点は――
「……というより、僕が防げなかったらリオナさんも巻き込まれてたと思うんですけど……」
魔法を放った本人であるリオナさんが自分のすぐ傍にいたという事だ。
魔法を込めた魔力自体は律義に離れた場所から飛ばしてくれたうえに、わざわざ自分が魔力を拡散できるだけのスペースも空けてくれてはいたのだが、不意を突く意図があったにしても些か危険な行為だと思う。
しかしリオナさんはあっけらかんと答える。
「うふふ、その時はその時で対応するわよ。魔法師が自分の魔法に巻き込まれるわけないじゃないの」
「そ、そうですか……」
フラグだろうか。
(まあ、あれだけの量の魔法を制御した直後にこんなに平気そうにしてるんだから、本当にどうとでも出来たのかもな……)
自分はようやく息が整ってきて冷や汗も引いてきた所だが、リオナさんに関しては呼吸すら乱していない。
アイラが「制御技術がヤバい」とか言っていたが、その一端を垣間見た気がする。
「さて、じゃああと三分くらいしたら次のセット行ってみようか!」
「えっ!? そんなハイペースでやるんですか!?」
「うふふ、十秒一セットだから休憩は五分くらいあれば充分でしょ? この後別の子の相手もしなきゃダメだからね。それにたぶん私の予想だと、あなたがこの特訓が出来るのはお昼頃までだと思うのよね……」
「た、確かにそれくらい休憩あれば大丈夫だと思いますけど……。でも寧ろちゃんと休憩貰えるならお昼までと言わず、もっと出来ると思いますよ?」
「ああ、そう意味じゃなくてね……。まあお昼になったらわかるわよ」
そう言ってリオナさんは意味深げな笑みを浮かべた。
お昼から何かあるのだろうか。
「それはそうと、聞いてはいたけどあなた本当に魔力の妨害が下手なのねぇ。さっきの感じだと魔力制御力はなかなかのものなのに、なんだかちぐはぐね?」
不穏な空気を感じていると、リオナさんがそんな事を言ってきた。
「ちぐはぐ……ですか?」
「ええ、本来は妨害の強さって魔力制御力に比例してより強くなるものなんだけど……どうしてかしらね?」
「寧ろ僕が聞きたいくらいなんですけど……。何かコツとかってないんですか?」
「コツ……コツぅ……。妨害しようってちゃんと思ってるのよね?」
「はい、もちろん」
「……どうしてかしらね?」
匙を投げられてしまった。
「まあわからない事は一先ず置いておきましょ! さあ、次のセット行くわよ!」
「は、はい、わかりました。よろしくお願いします!」
個人的には割と死活問題なのだが、確かに今は考えていても答えがでないのならば仕方がない。
そう心を入れ替えて、特訓に臨むのであった。
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