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第二章 軍属大学院 入学 編
113.姉の願い-Ⅱ
しおりを挟む「はい、三十四セット目終了~。お疲れ様タケル君」
「ふぅ……。ありがとうございます。――おっと、これじゃないけど……ほれ、ついでにやるよ」
「キュウッ♪」
マジックバッグから水筒を取り出そうとして間違えて取り出してしまった木の実をキュウに与えると、服の中から飛び出してありつき始めた。
慣れというのは凄いもので、三時間近くも同じ特訓を繰り返していると疲労感に関してはどうしようもないが、最初の頃の様に「息も絶え絶え」という感じにはならなくなっていた。
「そういえばあなた精霊術師だったわね。かわいいパートナーねぇ。名前は何て言うの?」
「そうでしょうそうでしょう。ほら、自己紹介」
「キュ? キュウッ!」
「キュウっていいます。よーしよーし良い子だ良い子だ」
『食べにくい~』
もはや持ちネタと化したキュウの自己紹介を披露して、ちゃんと出来たご褒美に撫でまわす。
いつもならば撫でられるのが好きなので非常に喜ぶのだがしかし、今は木の実にご執心の様だ。
現金な奴め。
「あらあら、キュウちゃんはお利口さんねぇ」
自己紹介ネタは好評だった様で、リオナさんが褒めるのに頭を撫でると、キュウは木の実を齧るのをやめて目を細めて気持ちよさそうにした。
(あれ? 僕に撫でられるより嬉しそうじゃないか……?)
そんなちょっとしたジェラシーを感じていると、キュウの背中を静かに撫でながらリオナさんがこちらに顔を向けて話しかけてきた。
「そういえば、ちゃんとお礼言ってなかったわね。あの日帰ってからキーくんに何があったのかちゃんと聞いたわ。キーくんたちを助けてくれて、本当にありがとうね」
「い、いえいえ、僕の力で切り抜けられる類の状況で本当に良かったっていいますか……。呪い傷もたくさん受けてたぶん相当辛かったと思うと……どうにかもっと早く助けに行けてたら良かったんですけどね……」
初めて会った時のサキトたちの姿を思い出すと、胸が苦しくなってくる。
自分にはどうする事も出来なかったとわかっていても、どうしても「どうにかしてあげたかった」という想いは湧いてきてしまうのだ。
どうしようもない自責の念から俯いていると、ふと頭に何か柔らかなものが触れた。
前を向くと、リオナさんの腕が自分の頭の上へと伸びているのが見えた。
どうやら今自分は頭を撫でられている様だ。
「え、えっと……?」
困惑する自分を余所に、リオナさんは頭を撫で続けながら優しく語り掛けてくる。
「それはあなたが気に病まなくてもいい事よ。大事なのは、あなたが全力を尽くしてキーくんたちをちゃんと助けてくれたって事。それにキーくん言ってたわ。『タケルは兄貴の言葉も護ってくれた』ってね。キーくんにとってその言葉って本当に大事なものでね……。だからあなたはその事実をもっと誇って良いのよ。――命だけじゃなくて"心"も救ったっていう事実を」
「――はい、ありがとうございます……」
「うふふ、なんでタケル君がお礼をいってるの? 初めて会った時といい、本当に面白い子ねあなた」
初めて会った時というと、土下座しそうになったのを誤魔化した時の事だろうか。
「い、いやあれは……いえ、まあいいです……」
弁明をしようかと思ったが、事実を説明した方がかっこ悪くて恥ずかしいのでとりあえず流すことにした。
一頻りクスクスと笑った後、リオナさんは再び口を開く。
「そりゃあもちろん、みんな痛い思いも辛い思いもせずに済んで、それで無事に帰って来れたならそれが一番だけど、それはあなたには出来ない事だったんでしょ? キーくんの好きな言葉の中に『どう歩んできたかも大事だが、もっと大事なのは今どう歩んでいるかと、これからどう歩んでいくかだ』って言葉もあってね」
「ああ、それこの前話してました」
「あらあら、もう聞いてたのね。まあ要するに、反省も大事だけど次にそうならないために行動するのがもっと大事って事よ。取り返しのつかないような罪を犯したわけでもないんだから、そんなにウジウジしてないでいいの」
――言いたい事は概ね理解が出来た。
「……そう、ですね」
「むぅ……納得してないって顔ね」
「え? いや、納得してますよ?」
嘘ではない。
納得はしている。
ただ少しだけ引っかかっただけだ。
――自分には当てはまりきらないな、と。
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