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第二章 軍属大学院 入学 編
122.風見鶏からの招待状-Ⅱ
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「今更だけど、その子精霊よね? 精霊使いなの……?」
キュウと会話をしている様子を見てか、ハルカ先輩がそんな質問をしてきた。
そういえばハルカ先輩にはまだキュウの紹介をしていなかった。
「はい、こいつは僕の契約精霊で名前は――」
「キュウッ!」
「――っていいます!」
完璧だ。
阿吽の呼吸とはこの事をいうのだろう。
心が通じ合っているからこそのこの芸当にきっとハルカ先輩も圧倒されて――
「え、えっと……キュウちゃんで、良いのかな?」
「あ、はい、そうです」
上手く伝わっていなかったようだ。
確かにキュウの鳴き声はキュウと聞こえるだけで、人が発する音とは若干違うのだ。
同じ人間でも地域によって鶏の鳴き声が「コケコッコー」だったり「クックドゥルドゥー」だったり「ココリコ」だったり違って聞こえるのだ。
正直最後のにはあまり共感できないが、つまりは鳴き声だけでは正確に同じ擬声語としては伝わりづらいという事だ。
伝わりづらいというのは芸としてはよろしくないだろう。
「これは改良点だな……。よしキュウ、次はとりあえずいつものに戻すぞ!」
『どっちでもいい~』
「どっちでもいいとはなんだこいつめ!」
『うわわ! くす、くすぐったい~♪』
適当な返事を返すキュウにくすぐりの制裁を与えていると、ハルカ先輩そんなこちらの様子を見つめているのに気が付いた。
そういえば会話の途中であった。
「あっ、す、すみませんこっちだけで勝手に……」
「へ? ああ、ううんいいのよ。何だか楽しそうって思っただけだから」
自分の謝罪にハルカ先輩は少し微笑みながらそう答えた後さらに続けて口を開く。
「そっか、精霊使いなんだ……気を付けてね」
先ほどとは対照的に相変わらず乏しいながらも何故かその表情は少し悲し気に見えて違和感を覚える。
「えっと、気を付けて……ですか?」
「……う、うん。私は詳しく知らないけど、その、精霊化って結構危険だって聞いた事があるから――っていっても、あなたくらいの魔力制御力があれば大丈夫かもねっ……。あはは……」
なるほど、そういう意味での「気を付けて」だったわけだ。
何とも優しい人である。
「ほらほら二人とも、置いて行っちゃうわよ~」
話しているうちにいつの間にか足を止めてしまっていた様で、そんな自分たちに向かってすでにモートゥスとやらに乗り込んでいるリオナさんが声をかけてきた。
そういえば次の利用者が来てしまうのであったと思い出して慌てて乗り込む。
「リオナとオシウミもロビーで良いよな?」
「はい、私も早く帰ってキーくんのご飯作ってあげないとですから」
「私も今日はもう帰るのでそれで大丈夫です」
ティストさんの問いかけに二人がそれぞれ肯定を返す。
ボタンも何も無いが、いったいどうやって操作するのだろうか。
「んあ? なんだボウズ、そんなにジロジロ見て?」
「え、いや、どうやって操作してるのかなーって思いまして……」
そんなに見ていたつもりは無かったのだが、好奇心からか傍から見るとそう感じる程に見てしまっていたのかもしれない。
「ああ、そうか。ボウズは初めてだからわからねぇのも無理はねぇか……。まあ一回やればわかるからまた今度にしとけ。私はこの後疲れんのがわかってっからさっさと帰りてぇんだ」
「疲れるって……あぁ、猫被りですか」
「ちっ……めんどくせぇ……」
(そうまでしてやらなきゃならない事情ってどれだけ複雑な事情なんだ……?)
そう疑問に思い少し聞いてみようかと思ったが、鉦の音が鳴った事でそれもふいになる。
「はぁ……」
首をコキコキと鳴らしたティストさんは一つため息をつくと、扉が開いた瞬間に雰囲気を一変させる。
例の猫被りモードになったのだろう。
まだ特に何かしたわけでもないのに、後ろ姿を見るだけで背筋がゾワゾワとして落ち着かなくなる。
受付につくと退館手続きとやらを始めるのだが、話し言葉を聞いているとより一層悪寒が走ってしまう。
正直見ていられなくなって余所に目を逸らした時、逸らした先に見覚えのある人を発見した。
(あれは確かソフィアの妹の……)
思い出しながら少し見つめていると、あちらも自分に気が付いたのか視線がこちらに向く。
(……そうだ、メアリーちゃんだ!)
名前を思い出せたので挨拶をしておこうと手を振ろうとしたのだが、彼女の視線はすぐに別の方向へと向いてしまい、そのまま歩き去っていってしまった。
視線があったと思ったのだが、ひょっとしたら有名人であるらしいティストさんの事を見ていたのかもしれない。
「ほら、タケル君も退館手続きを早く済ませなさいな」
「え? あ、はい……」
猫を被ったティストさんの丁寧な物言いと微笑みの裏に、「さっさとしろ」といった感じの圧力を感じたので慌てて退館手続きとやらを済ませる。
「ここっ、こここっ、こちらに、ま、魔力を流してくだしゃぁっ!」
入館の時と同じく魔力を流すだけの様なのだが、朝と同じ受付のお姉さんは案の定ガチガチに緊張しているのかとんでもない噛み方をしている。
何だかもう見ていて可哀そうであるし、ティストさんからの無言の急かしも感じるのでさっさと終わらして受付を離れる。
その後はリオナさんとハルカ先輩にお礼と別れを告げてから各々家路へとついた。
相変わらず屋敷までの道のりは居心地の悪いものであったが、屋敷に近づくにつれて一日の終わりをひしと意識し始めると、思い出したかのように体と脳が疲れを主張し始めたため、視線もそれほど気にならなくなっていた。
夕飯を済ませ、お風呂から上がれば、半分無意識で疲れに誘われるままベッドへと倒れこみ、そのまま意識を暗転させたのであった。
キュウと会話をしている様子を見てか、ハルカ先輩がそんな質問をしてきた。
そういえばハルカ先輩にはまだキュウの紹介をしていなかった。
「はい、こいつは僕の契約精霊で名前は――」
「キュウッ!」
「――っていいます!」
完璧だ。
阿吽の呼吸とはこの事をいうのだろう。
心が通じ合っているからこそのこの芸当にきっとハルカ先輩も圧倒されて――
「え、えっと……キュウちゃんで、良いのかな?」
「あ、はい、そうです」
上手く伝わっていなかったようだ。
確かにキュウの鳴き声はキュウと聞こえるだけで、人が発する音とは若干違うのだ。
同じ人間でも地域によって鶏の鳴き声が「コケコッコー」だったり「クックドゥルドゥー」だったり「ココリコ」だったり違って聞こえるのだ。
正直最後のにはあまり共感できないが、つまりは鳴き声だけでは正確に同じ擬声語としては伝わりづらいという事だ。
伝わりづらいというのは芸としてはよろしくないだろう。
「これは改良点だな……。よしキュウ、次はとりあえずいつものに戻すぞ!」
『どっちでもいい~』
「どっちでもいいとはなんだこいつめ!」
『うわわ! くす、くすぐったい~♪』
適当な返事を返すキュウにくすぐりの制裁を与えていると、ハルカ先輩そんなこちらの様子を見つめているのに気が付いた。
そういえば会話の途中であった。
「あっ、す、すみませんこっちだけで勝手に……」
「へ? ああ、ううんいいのよ。何だか楽しそうって思っただけだから」
自分の謝罪にハルカ先輩は少し微笑みながらそう答えた後さらに続けて口を開く。
「そっか、精霊使いなんだ……気を付けてね」
先ほどとは対照的に相変わらず乏しいながらも何故かその表情は少し悲し気に見えて違和感を覚える。
「えっと、気を付けて……ですか?」
「……う、うん。私は詳しく知らないけど、その、精霊化って結構危険だって聞いた事があるから――っていっても、あなたくらいの魔力制御力があれば大丈夫かもねっ……。あはは……」
なるほど、そういう意味での「気を付けて」だったわけだ。
何とも優しい人である。
「ほらほら二人とも、置いて行っちゃうわよ~」
話しているうちにいつの間にか足を止めてしまっていた様で、そんな自分たちに向かってすでにモートゥスとやらに乗り込んでいるリオナさんが声をかけてきた。
そういえば次の利用者が来てしまうのであったと思い出して慌てて乗り込む。
「リオナとオシウミもロビーで良いよな?」
「はい、私も早く帰ってキーくんのご飯作ってあげないとですから」
「私も今日はもう帰るのでそれで大丈夫です」
ティストさんの問いかけに二人がそれぞれ肯定を返す。
ボタンも何も無いが、いったいどうやって操作するのだろうか。
「んあ? なんだボウズ、そんなにジロジロ見て?」
「え、いや、どうやって操作してるのかなーって思いまして……」
そんなに見ていたつもりは無かったのだが、好奇心からか傍から見るとそう感じる程に見てしまっていたのかもしれない。
「ああ、そうか。ボウズは初めてだからわからねぇのも無理はねぇか……。まあ一回やればわかるからまた今度にしとけ。私はこの後疲れんのがわかってっからさっさと帰りてぇんだ」
「疲れるって……あぁ、猫被りですか」
「ちっ……めんどくせぇ……」
(そうまでしてやらなきゃならない事情ってどれだけ複雑な事情なんだ……?)
そう疑問に思い少し聞いてみようかと思ったが、鉦の音が鳴った事でそれもふいになる。
「はぁ……」
首をコキコキと鳴らしたティストさんは一つため息をつくと、扉が開いた瞬間に雰囲気を一変させる。
例の猫被りモードになったのだろう。
まだ特に何かしたわけでもないのに、後ろ姿を見るだけで背筋がゾワゾワとして落ち着かなくなる。
受付につくと退館手続きとやらを始めるのだが、話し言葉を聞いているとより一層悪寒が走ってしまう。
正直見ていられなくなって余所に目を逸らした時、逸らした先に見覚えのある人を発見した。
(あれは確かソフィアの妹の……)
思い出しながら少し見つめていると、あちらも自分に気が付いたのか視線がこちらに向く。
(……そうだ、メアリーちゃんだ!)
名前を思い出せたので挨拶をしておこうと手を振ろうとしたのだが、彼女の視線はすぐに別の方向へと向いてしまい、そのまま歩き去っていってしまった。
視線があったと思ったのだが、ひょっとしたら有名人であるらしいティストさんの事を見ていたのかもしれない。
「ほら、タケル君も退館手続きを早く済ませなさいな」
「え? あ、はい……」
猫を被ったティストさんの丁寧な物言いと微笑みの裏に、「さっさとしろ」といった感じの圧力を感じたので慌てて退館手続きとやらを済ませる。
「ここっ、こここっ、こちらに、ま、魔力を流してくだしゃぁっ!」
入館の時と同じく魔力を流すだけの様なのだが、朝と同じ受付のお姉さんは案の定ガチガチに緊張しているのかとんでもない噛み方をしている。
何だかもう見ていて可哀そうであるし、ティストさんからの無言の急かしも感じるのでさっさと終わらして受付を離れる。
その後はリオナさんとハルカ先輩にお礼と別れを告げてから各々家路へとついた。
相変わらず屋敷までの道のりは居心地の悪いものであったが、屋敷に近づくにつれて一日の終わりをひしと意識し始めると、思い出したかのように体と脳が疲れを主張し始めたため、視線もそれほど気にならなくなっていた。
夕飯を済ませ、お風呂から上がれば、半分無意識で疲れに誘われるままベッドへと倒れこみ、そのまま意識を暗転させたのであった。
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