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第二章 軍属大学院 入学 編
125.治らぬ悪癖-Ⅱ
しおりを挟む「どうしたの? 本当に大丈夫?」
「……いえ、だから、その……も、申し訳無かったですわ……色々と……」
何か葛藤をするかの様に表情をころころと変えた後にようやくメアリーの放ったその言葉に、自分は疑問符が浮かべる。
「『色々と』って、何の事?」
「い、今ぶつかった事もですし……その、この前の事も、ですわ……」
この前の事というと、初めて会った時の事であろうか。
「ああ、別に気にしなくてもいいのに。この前のは僕にも悪い所があったし、今のだって僕も考え事してたから歩くのがゆっくりになってたかもしれないし……」
そう考えると実は自分の方が悪かったりしないだろうか。
「いや、そうだな……じゃあどっちもどっちって事にしとこうよ」
「ど、どっちもどっち……ですの?」
「うん、だから僕も謝らなきゃね。勘違いさせるような事してごめんね。許してくれるかな?」
「え? は、はい……って、なんであなたが謝罪してるんですの!?」
「へ? なんでって……メアリーちゃんはもう謝ってくれたし……」
「いや、どう考えても悪いのは私の方で……はぁ、あなたがそれでいいならもういいですわ……。お姉様が言ってた通り変な方ですわねあなた……」
「え? ソフィアって僕の事を変って思ってたのか……」
ちょっぴりショックな事実である。
確かにこの世界の常識には疎い上に、誤魔化すためとはいえ地面を褒め称えるという様な奇行なども見られ、さらに素性も定かではないが――
(いや、どう考えても変な奴だな……)
自分で認識していた以上に自分が変な奴だった。
なんだこのとびっきりに怪しい奴は。
(そう考えるとみんなよく僕の事を受け入れてくれたな……)
自分は本当に人との出逢いに恵まれていると改めて認識させられる。
(そもそもキュウやおじいちゃんと出逢ってなかったら、とっくに死んでたんだもんな……)
ソフィアたちにしても、出逢って尚且つこんな自分を受け入れてくれていなければ、あの森を出るのはもっと後になっていただろう。
(本当に、みんなに感謝しなくちゃダメだな……)
「――ちょっと聞いてますの!? 本当にお姉様は良い意味で言ったのでして、そんなに落ち込む事ないんですのよ!? というか落ち込まないでくださいまし! またお姉様に怒られてしまいますわ!」
「ふへ? な、何が?」
「何がじゃありませんのよ! またあなたに粗相をしたなんてお姉様に知られたら、今度こそ大目玉をくらうのですわ! というよりやっぱり私の話を聞いてませんでしたのね!?」
突然肩を揺さぶられながら捲し立てられたので、困惑して思わず「何が?」と返答してしまったが、どうやらまた会話中に考え込んでしまっていた様だ。
自分の成長の無さに思わず呆れてしまいそうだ。
「ご、ごめんね? 別に落ち込んでないから、ゆ、揺さぶるの、やめてっ」
「はっ!? ご、ごめんなさいですのっ――いや、あなたが話を聞いてないのが悪いのでありましてっ!」
ごもっともである。
「う、うん……本当にごめんね?」
「い、いえ……そもそもは私が誤解を招くような言い方をしたのが原因ですし……ああもうっ! わけがわかりませんわっ!」
どうやらソフィアの言った「変」というのは悪い意味ではないらしいので一安心なのだが、悪い意味であってもあながち間違いではないという事に気が付いてしまったために誤解とも言い難く、自分もよくわからなくなってきた。
『武が悪い癖を治さないのが悪いの!』
「や、やっぱりそうだよなぁ……」
「――どうしてお姉様はこんなおかしな人をあんなに……」
「ああっ!? ごめんっ、また聞き逃して――」
キュウの声に耳を貸していたためにまたメアリーの言葉を聞き逃してしまった。
呟く様な小さな声だった気もするが、つい先ほどの失態を鑑みればそんな言い訳をするわけにもいかないだろう。
そう思い素直に謝ってもう一度言ってもらおうと思ったのだが――
「なっ、なんでもありませんわっ! そっ、それよりも、私はこの後用事がありますので、この辺で失礼いたしますわっ!」
そう慌て気味に言うや否や自分の横を通り過ぎて足早に軍属大学院の方向へとメアリーは向かっていく。
先を急ごうとするその小さな背中に、思わず声をかけてしまう。
「慌てるとまたぶつかっちゃうよ!」
「ッ――!?」
先ほど自分に衝突した事がフラッシュバックしたのか、メアリーは肩をピクリと振るわせて止まったが、数秒で気を取り直したのかまた足早に歩いていってしまった。
「大丈夫かな……? って、僕もそろそろ行かなきゃか」
時間までにはまだある程度余裕はあるが、早く着くに越したことはないだろう。
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