アポロの護り人 ―異世界夢追成長記―

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第二章 軍属大学院 入学 編

126.治らぬ悪癖-Ⅲ

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「まあもう目的地は見えてるんだけどね」

 メアリーに注意した手前、自分も誰かにぶつかるなんて事になるわけにはいかないので、注意しながら通りを進む。
 とは言っても城へと通ずる大通りに比べれば、この通りは殆ど学生しかいない分比較的空いている。
 まあ大丈夫だろう。

(なんかフラグみたいになってるけど……大丈夫だよね?)

 そんな思考をしてしまったせいで、残りの道中ずっと妙な緊張感を抱く破目になってしまったが、結局何事もなく軍属大学院へと辿り着く。

(実に無駄な緊張感だったな……)

 そんな事を考えながらロビーへと入り受付へと進むと、昨日と同じお姉さんがそこには座っていた。
 自分が気が付いたのとほぼ同時に受付のお姉さんも自分に気が付いた様で、瞬時に表情が固まったのが見て取れた。

「おおおおっ、おはようごじゃいましゅっ!」

 相変わらずの緊張具合だ。

「あ、あの……別に僕はティストさんの知り合いってだけで偉くはないので、そんなに緊張しなくてもいいですよ……?」

 今日は隣にティストさんもおらず、本当に彼女が緊張する理由など一つもないので、緊張をほぐそうと思いそう伝える。
 学院に入学すれば頻繁に顔を合わせる事になるかもしれないのに、この調子のままではその内に舌を噛んでしまいそうだ。

「へっ!? そ、そうなんですかっ!? なぁんだ、緊張して損を――って、別にあなたを軽んじてるわけじゃないですよっ!?」

「ああ、別に気にしてないですよ」

「あぁ、ありがとうございますぅ……。つ、告げ口とかしないでくださいね! ここをクビになっちゃったら本当に……」

 どんな事情があるのかは知らないが、自分がティストさんに告げ口した時の事を勝手に妄想したのか顔を青ざめさせながら「あわわわ……」などと言いつつ口を震わせている。

「あの……大丈夫ですから、入館手続きさせてもらえますか?」

「は、はいぃ! わ、わかりましたぁ!」

 緊張をほぐしたはずなのに、結局緊張させてしまっているのは何故であろうか。

(僕、別に悪い事してないよね……?)

 まあその内にましになるだろうと諦め、入館手続きを済ませてからモートゥスへと向かう。

「……そういえばこれ、どうやって動かすんだ?」

 辺りを見回すが知り合いがいるはずもなく、かと言って受付のお姉さんに聞きに行ってまた緊張させるのも気が引ける。

「確か昨日ティストさんが『一回使えばわかる』とか言ってたよな……」

 ものは試しだと、昨日ティストさんがやっていた様に扉の部分に触れて魔力を流してみる。
 その瞬間、頭に何かを差し込まれた様な感覚に見舞われる。
 ほんの僅かに実体のあるその何かの侵入は、痛みは伴わずとも違和感を覚えるには十分であった。

――行先はどこだい?

 初めての感覚に戸惑っていると、そんな文字――いや、言葉が脳裏に浮かびあがる。

(な、なんだこれ……?)

 音として聞こえるわけではないのだが、確かに話しかけられている様な気分になるのだ。
 キュウと話している時とも全く違うその現象に引き続き困惑していると、再び脳裏に言葉が浮かびあがる。

――行先は、どこだい?

「え、えっと、第十二訓練場……?」

 心なしか語気が強まった様な気のするその言葉に、思わず目的地を口にする。

――わかった、早く乗って。

 促されるまま乗り込むと、頭から違和感が消えて扉が閉まる。
 相変わらず何の気配も感じないが、今は恐らく目的地に向けて動いているのだろう。
 いや、それよりもだ。
 何だか会話が成立していたが、いったいどういった技術なのだろうか。

(意思を持った魔道具とか……なのかな……?)

 魔法とは意思まで作り出せるものなのだろうか。

(だとしたら本当に魔力って何なんだ――)

 そんな事を考えていると、再び頭に先ほどの妙な感覚が差し込まれる。

――早く、降りてくれないか。

 いつの間にか到着していた様で、既に扉は開いていた。

「あっ、すみません!?」

 促されて慌てて降りると、扉が閉まっていき頭から違和感が消えていく。

「あの、ありがとうございました!」

 迷惑をかけてしまった事へのお詫びも含めて、違和感が消えきる前にモートゥスの方を振り返りそう言ったのだが、果たしてあの意思に伝わっただろうか。

(まあ、次利用する時に改めて伝えるか……)

 そう思い改めて訓練場の方を向くと、リオナさんらしき人がお腹を押さえて小刻みに震えながら蹲っている。

「ど、どうしたんですかリオナさん!? 大丈夫ですかっ!?」

 何事かと思い慌てて走り寄ったのだが、近くまで行くと自分の心配がただの取り越し苦労である事がわかった。

「ぷふっ……も、モートゥスに、お礼って……ぶふっ……」

 ただ単に腹を抱えて笑っていたのだ。
 まったく失礼な。

「何をそんなに笑ってるんですかリオナさん」

「だ、だって……ぷふっ……魔道具にお礼を言う人なんて……ぶふっ……初めて見たんだもの……」

 そんなにおかしな事だろうか。

「それは、あのモートゥスって魔道具に意思があるからでして……」

「へ? 意思って何の事?」

「え、いや、使う時に頭の中に語り掛けてくるじゃないですか」

「……?」

 本気で「何を言っているのかがわからない」といった感じの表情をしている。

(どういうことだ……?)

 認識の齟齬に困惑していると、モートゥスの到着を知らせる鉦の音が響く。

「……おはようございます」

 相変わらず抑揚の少ない声で挨拶をしながら中から降りてきたのはハルカ先輩であった。
 ちょうどいい、ハルカ先輩にも聞いてみよう。

「おはようございますハルカ先輩。あの、お聞きしたい事があるんですけど、モートゥス使う時って頭の中に直接話しかけてきますよね?」

「話しかけて……? いや、そういう事は無いと……思うけど……?」

 リオナさんの時と同じく何を言っているのかわからないといった感じだ。

(でも、確かにあれは話しかけてきてたよな……?)

 だとしたらやはり自分が特殊だという事だろうか。

「面白い子よねぇ本当に。さっ! みんなそろった事だし、今日も元気に講義を始めましょう!」

「あ、やっぱりこれで全員なんですね」

「……うん、今までは基本的に私一人だったから……」

 理由はわからないままだが、わからない事をいつまでも考えていても仕方がない。
 とりあえず、特訓に集中するのであった。







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