アポロの護り人 ―異世界夢追成長記―

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第二章 軍属大学院 入学 編

145.悪癖の一因-Ⅲ

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「そういやタケルって義姉さんの講義は軍属大学院の訓練場で受けてるんだよな?」

「え? うん、そうだけど」

 唐突な問いかけをしてきたサキトにそう肯定を返すと、今度は残念そうな表情が返ってきた。

「そっか……じゃあ結局この中だと、俺が魔力登録一番最後なんだな……」

「それってそんなに残念な事なの?」

 あの魔力を流すだけの行為に特にそれ程の価値があるとは思えない。
 なんならこの帝都ヴェルジードに入る時の魔力登録の方が特別だと思えるくらいだ。

「タケルはなんかサラッと登録済ましちまったみてぇだけど、軍属大学院って本来そんな簡単には入れない所なんだぞ?」

「え? でも一般開放もされてるって言ってなかったっけ?」

 サキトの言葉に疑問を返すと、アイラが答える。

「一般開放されてる所は割りと簡単に入れるけど、地下に広がる施設はある意味貴重な遺跡みたいな物だから、魔力登録をした人じゃないと入ることすら出来ないのよ。逆に言うと、利用する資格を持つ者が魔力登録を出来るって感じね」

「あそこって遺跡なの!?」

 どこもかしこも綺麗にされているからか、寧ろ最新鋭の施設だと思っていたのだが違うのだろうか。

「そっか……タケルって『イオカラ』って聞いた事ある?」

「えっと確か、建国当時に活躍した凄い魔術師だっけ?」

 以前ティストさんがそんな風に言っていたはずだ。

「凄く大雑把だけど、まあそれだけ知ってれば十分ね。建国当時って今から二千年くらい前の話なんだけど、軍属大学院はその頃にイオカラが作った施設なのよ」

「ああ、確かそんな事言ってたなぁ。でも作ったのはその人でも、色々設備とかって最新の物に更新されてたりするんじゃないの?」

 二千年も経てば普通、旧式なんて話ではなくなるだろう。

「されてないわよ」

「えっ!?」

「私も専門じゃないから詳しくは知らないんだけど、現在の最新の研究すらもまだそのイオカラの技術を解明しきれてないらしいのよ。だから遺跡だけど最先端ってわけ。そんで再現不可能で施設数に限りがあるから、使用にも制限がかかってるって事」

「なるほど……。なんとなくで魔力登録してたけどそんな意味があったんだ……」

 思いがけず貴重な体験をしていた事実に驚いていると、今度はソフィアが話に入ってくる。

「まあ他にも大事な理由があるんですけどね」

「え? 他にもあるの?」

「はい、タケルくんは『アトクラス』って知ってますか?」

「いや、初めて聞いたや。何の名前なの?」

 名前からも何の事だか全く想像出来ない。
 また人の名前だろうか。

「第二の魔術師って呼ばれるカーサルって人が作った、帝都だと王城に設置されてる大規模魔力探知の魔道具の事です」

「へー、大規模ってどれくらい?」

「帝都全体くらいですかね? 最大範囲は流石に私も知らないんです。すみません……」

「い、いや、別に全然謝る事ないよ。それで、それがどうかしたの?」

「は、はい。この魔道具って一般に普及してる魔力探知妨害の魔道具も無効化しちゃうくらい強力な魔道具なので、軍が不法に出入りしてる人がいないか探したりするのに使ってるんです」

「ああ、じゃあもしかして帝都に入る時の魔力登録って……」

「個人の魔力波長をアトクラスの管理下に置くための登録ですね。この魔道具を使えば、軍が調べようとすれば誰がどこにいるのかが一発でわかるので、治安の維持に凄く役立ってるんです」

 つまり帝都内だと常に発信器をつけられている様なものだと言う事だろうか。
 何か罪を犯してどこかに潜伏しても一発でばれるとあれば、そもそも罪を犯さなくなるわけだ。
 行き過ぎた管理社会な気もしなくはないが、それで治安が維持されているのならば万々歳なのだろう。

「ただ、そのアトクラスであっても突破できない程の強力な魔力探知妨害の施されている施設があるんです」

「ああ、それが軍属大学院なのか!」

「はい、なので学院は学院で独自に管理するためにも、魔力登録が必要なんですよ。地下施設に移動するのにはモートゥスを利用しないと駄目なんですけど、そのモートゥスにも魔力登録を済ませた人しか乗れない様になってますから、セキュリティー面を考えても軍属大学院は王城に並んで帝都で――いえ、帝国で一番かもしれないですね!」

 二千年前に作られた施設が世界一のセキュリティーを誇るというのもなかなか耳を疑う様な話である。
 凄いとしか聞いていなかったが、きっとそのイオカラという人はそれこそ伝説級の人物なのだろう。

(あれ? そういえばティストさんがその技術の一部をおじいちゃんが解明したとか言ってなかったっけ……? というよりおじいちゃんでも一部なのか……)

 上には上がいるという事は理解していても、自分の中では何においてもおじいちゃんが一番だという認識があったので、こう明確におじいちゃんでも理解しきれない物を作った人がいると言う事を示されると、何だか複雑な気分である。

「さて、じゃあ時間も遅いし、そろそろお開きにしましょうかね」

 一人勝手に落ち込んでいると、アイラがそう口にした。
 確かに普段ならばもう寝ていてもおかしくはない時間だ。

「そうだね。キュウもロンドももう眠そうだし帰ろうか。ソフィアも今日はお疲れ様」

「はい! 今日は本当に来てくれてありがとうございました!」

「おう! また招待してくれよな!」

 各々別れの言葉を告げ、ソフィアの部屋を後にして屋敷の出口へと向かう。
 この屋敷内での自由を保証してくれていた深緑の小鳥は門を抜けると共にかき消え、今日という日が終わりを迎えようとしている事を感じさせられた。
 良い事ばかりではなかったが、終わってみれば楽しかったと、そう思える一日であった。

「さて、明日もまた特訓があるし、帰ったら僕もさっさと休もうかな」

「帰りは近くまで送っていってあげるわよ」

「別に――いや、お言葉に甘えようかな。お願いするよ」

 時間も時間であるので人目はもう特に気にはならないが、また明日から学院の入学までは、ひたすら特訓をするだけの何でもない平穏な日々が続くのだと思うと、もう少し余韻を味わっていたいと、そう思ったのだ。

 そんな何でもない愛すべき日々が揺らがされるのは、それから数日の後の事であった。





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