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第五章 おもい
50.その後のお話
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あのあと、私たちは颯馬くんの両親にも怒られた。
そしてびしょ濡れの颯馬くんたちがお風呂に行った後、感謝の言葉とともに巻き込んで申し訳ないと謝罪の言葉をいただいた。
あんなにも気品がある大人に頭を下げられたのは初めてのことで、私もアキくんも大いに慌てて笑わせてしまったけど。
そんな二人に本当のことを全部話せないのは申し訳ない。私たちの話に明らかに不自然な点があったのに、全部気づかなかったことにしてくれたんだ。
しかも、もう遅いからって家まで送ってくれた。
突然家の前に留まったリムジンから降りてきた私に、お母さんはたいそう驚いていたのはいい思い出だ。
でもその反応で、私は一気に現実に帰ってきたような気分になった。
あんなに危ないことなんてそうそう起きないし、月曜日から私はいつもの生活に戻ることになる。
依頼があったから颯馬くんたちと関われたものの、これからはすれ違ったら挨拶する程度の関係になるのかな。そう思うと、眠ってしまうのがとても嫌になった。
だけどどうしようもなく疲れていたのも本当で、私はベッドに入ったら一瞬で眠ってしまった。
次の日も結局何をする気にもなれなくて、私はそのまま月曜日を迎えた。
着替えて朝食を食べようとリビングにいけば、そこにはあたり前のようにトーストを食べているアキくんの姿が。
「おはようユキちゃん、今日もかわいいね」
「…………??」
「そんなぼうっとしてないで、早く食べようよ。冷めちゃうよ」
何が起きてるか分からず、私は促されるままトーストをかじる。
うん。今日も完璧な焼き加減で――
「なんでアキくんが私の家にいるの!?」
「ダメ?」
「ダメじゃない、けど」
アキくんの家の方が学校に近いじゃん……?
何一つ納得してない私に気付いたアキくんは、柔らかい笑みを浮かべた。
「毎日でも来たいのは本音だけど、今日はちょっと用事があってね」
なるほど、そういうことか。理解した私は再び食べ始めたが、アキくんの声が少し低くなったことに気が付かなかった。
そして私は何も知らないまま玄関を開けて。
「おはよう、雪乃」
目に飛び込んできた高級車と太陽のような笑顔に、全力で扉を閉めた。
間おかず、外から桜二くんの笑い声が聞こえる。近所迷惑にもほどがある大爆笑だ。
(颯馬くんたちのことを考えすぎて、とうとう幻を見るようになった?)
そうっと振り返る。アキくんが疲れた笑顔を浮かべていた。
「残念だけど、あれは現実だよ。ユキちゃんにもこの気持ちを味わってもらおうと思ってね」
なるほど。アキくんも同じ目にあったらしい。
しかも朝五時半に。かわいそう。
こうして、私たちは颯馬くんたちと一緒に登校することになった。私の昨日のしんみりとした気持ちを返して欲しいと思ったが、二人の全く変わらない態度が何よりも嬉しかった。
あんな依頼がなくても、私たちは友達なんだって、そう思えたから。
「いやー、笑った笑った。アキと全く同じ反応をするの、面白すぎでしょ」
「いつまで笑ってんの」
「じゃあ別の面白い話をしてあげるよ」
アキくんににらまれて、桜二くんは半笑いのまま話を変えた。
アキくんににらまれて、桜二くんは半笑いのまま話を変えた。
「オレ正直さ、ソウのお母さんは買い物しに行ったと思ってたの」
首を傾げかけるが、土曜の話だと分かってそのまま聞くことにする。
「でも、本当に鍵屋に行ってたの」
「俺も驚いたぞ。風呂あがったらお前らは帰ってるし、大広間には職人が何人もいるし」
その時のことを思い出しているのか、颯馬くんは苦い顔をした。
「でも、鍵は見つかったよね。結局取り換えることにしたの?」
「いや、そっちはそのままだ」
「そっち?」
アキくんが首をひねる。桜二くんはまた笑い出して、うつむいてぷるぷる震えていた。
「椿の間とかの鍵を変えたんだ。どっかの技術顧問が簡単にピッキングしてったから、防犯に不安を感じてな」
「まあ、セキュリティが上がるのはいいことだよ。なんなら今度正門で試してあげるようか?」
「二度と俺の家に来るな」
私も思わず笑ってしまった。まあ、職人たちが何もしないで帰らなくてよかったんじゃないのかな。
颯馬くんはしばらく恨めしそうにアキくんをにらんでいたが、ふとその顔に影が落ちる。
「それでさ、万が一開かなかったら面倒だからって、あの後別邸に行ったんだ」
桜二くんも笑うのをやめて、真剣な顔になる。車内から話し声が一瞬途切れた。
そしてびしょ濡れの颯馬くんたちがお風呂に行った後、感謝の言葉とともに巻き込んで申し訳ないと謝罪の言葉をいただいた。
あんなにも気品がある大人に頭を下げられたのは初めてのことで、私もアキくんも大いに慌てて笑わせてしまったけど。
そんな二人に本当のことを全部話せないのは申し訳ない。私たちの話に明らかに不自然な点があったのに、全部気づかなかったことにしてくれたんだ。
しかも、もう遅いからって家まで送ってくれた。
突然家の前に留まったリムジンから降りてきた私に、お母さんはたいそう驚いていたのはいい思い出だ。
でもその反応で、私は一気に現実に帰ってきたような気分になった。
あんなに危ないことなんてそうそう起きないし、月曜日から私はいつもの生活に戻ることになる。
依頼があったから颯馬くんたちと関われたものの、これからはすれ違ったら挨拶する程度の関係になるのかな。そう思うと、眠ってしまうのがとても嫌になった。
だけどどうしようもなく疲れていたのも本当で、私はベッドに入ったら一瞬で眠ってしまった。
次の日も結局何をする気にもなれなくて、私はそのまま月曜日を迎えた。
着替えて朝食を食べようとリビングにいけば、そこにはあたり前のようにトーストを食べているアキくんの姿が。
「おはようユキちゃん、今日もかわいいね」
「…………??」
「そんなぼうっとしてないで、早く食べようよ。冷めちゃうよ」
何が起きてるか分からず、私は促されるままトーストをかじる。
うん。今日も完璧な焼き加減で――
「なんでアキくんが私の家にいるの!?」
「ダメ?」
「ダメじゃない、けど」
アキくんの家の方が学校に近いじゃん……?
何一つ納得してない私に気付いたアキくんは、柔らかい笑みを浮かべた。
「毎日でも来たいのは本音だけど、今日はちょっと用事があってね」
なるほど、そういうことか。理解した私は再び食べ始めたが、アキくんの声が少し低くなったことに気が付かなかった。
そして私は何も知らないまま玄関を開けて。
「おはよう、雪乃」
目に飛び込んできた高級車と太陽のような笑顔に、全力で扉を閉めた。
間おかず、外から桜二くんの笑い声が聞こえる。近所迷惑にもほどがある大爆笑だ。
(颯馬くんたちのことを考えすぎて、とうとう幻を見るようになった?)
そうっと振り返る。アキくんが疲れた笑顔を浮かべていた。
「残念だけど、あれは現実だよ。ユキちゃんにもこの気持ちを味わってもらおうと思ってね」
なるほど。アキくんも同じ目にあったらしい。
しかも朝五時半に。かわいそう。
こうして、私たちは颯馬くんたちと一緒に登校することになった。私の昨日のしんみりとした気持ちを返して欲しいと思ったが、二人の全く変わらない態度が何よりも嬉しかった。
あんな依頼がなくても、私たちは友達なんだって、そう思えたから。
「いやー、笑った笑った。アキと全く同じ反応をするの、面白すぎでしょ」
「いつまで笑ってんの」
「じゃあ別の面白い話をしてあげるよ」
アキくんににらまれて、桜二くんは半笑いのまま話を変えた。
アキくんににらまれて、桜二くんは半笑いのまま話を変えた。
「オレ正直さ、ソウのお母さんは買い物しに行ったと思ってたの」
首を傾げかけるが、土曜の話だと分かってそのまま聞くことにする。
「でも、本当に鍵屋に行ってたの」
「俺も驚いたぞ。風呂あがったらお前らは帰ってるし、大広間には職人が何人もいるし」
その時のことを思い出しているのか、颯馬くんは苦い顔をした。
「でも、鍵は見つかったよね。結局取り換えることにしたの?」
「いや、そっちはそのままだ」
「そっち?」
アキくんが首をひねる。桜二くんはまた笑い出して、うつむいてぷるぷる震えていた。
「椿の間とかの鍵を変えたんだ。どっかの技術顧問が簡単にピッキングしてったから、防犯に不安を感じてな」
「まあ、セキュリティが上がるのはいいことだよ。なんなら今度正門で試してあげるようか?」
「二度と俺の家に来るな」
私も思わず笑ってしまった。まあ、職人たちが何もしないで帰らなくてよかったんじゃないのかな。
颯馬くんはしばらく恨めしそうにアキくんをにらんでいたが、ふとその顔に影が落ちる。
「それでさ、万が一開かなかったら面倒だからって、あの後別邸に行ったんだ」
桜二くんも笑うのをやめて、真剣な顔になる。車内から話し声が一瞬途切れた。
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