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転移後に判明した俺の能力は煉丹術だった。薬剤師免許は持っていないが、薬学部卒で知識はある。適性があると言われればそうかと思える。
毒薬という言葉があるように、毒と薬は同じ物質として定義されている。よい影響を及ぼす物を薬と呼んで区別しているだけの、生体に影響を及ぼす性質を持つ化合物。過去に魔が差して一服盛ったことも適性に影響したのかもしれない。
異世界に永住すれば警察を気にせずに生きられる。人生をやり直す機会と考えれば悪くない誘いだった。
当初は無作為に集められたと思い込んでいた俺たちだが、異世界で過ごす内に嬉しくない共通点が判明した。
鈴木は見た目通りの凶悪犯だった。強盗殺人で指名手配されていたらしい。佐藤はボンボンではなく、ホスト崩れの詐欺師。どちらも偽名でご同類だった。
三人の犯罪者が異世界で勇者になった。そんな偶然もあるのかもしれないが、滅多にないだろう。恐らく故意に選んだのだ。だが、目的がわからない。何故そんなことを……?
あの白い部屋で俺たちに提示された選択肢は選択の余地が無いも同然で、死にたくなければ異世界転移しろという極端なものだった。まさかこの世界は、あのぼさ神が要らない人間を棄てる場所なのだろうか?
いや、それはあまりにも荒唐無稽な発想だ。ここが人間の処分場として使われているのなら、この世界は犯罪者だらけになってしまう。神殿や神官の存在はこの世界にも神がいることを示唆している。犯罪者を不法投棄すればこの世界の神が黙ってはいないだろう。
(魔の森に百年周期で魔王が誕生して災厄を振り撒くのです)
(勇者様はいずれかの国の中央神殿に顕れて世界を救ってくださると伝えられています)
(先代勇者様の御来訪から百年後に顕れた異邦人だからです)
……百年? 魔王の誕生には周期がある。そして魔王は勇者が……。
これが事実なら、魔王と勇者は同じ周期で定期的に出現していることになる。この世界の神が盆暗だとしても、千年も前から不法投棄が続いていればさすがに気づくだろう。
恐らく魔王と勇者はこの世界の神の管理下にある存在だ。そうでなければ魔王と勇者の出現周期が一致しているわけがない。
そもそも魔王とは何なのだろうか。魔物は動物の姿をしているのに魔王は魚人だった。明らかに種族が違い、森の中での生活には向かないように思える。
そしてあの魔王は、この世界の人間とは違う魔法を使った。この世界には存在しないはずの、攻撃手段となり得る威力の魔法を使っていた。まるでお伽噺で語られている初代勇者のように。
まさか……勇者だけではなく、魔王も異世界からの転移者なのか?
管理されているのなら不法投棄ではなく合法処理だ。だが不用意に犯罪者を受け入れれば治安は悪化する。気軽に許可を出せることではなく、実行する意味もない。
リスクに見合うだけの見返りがあれば実行する理由にはなるが、よほどの利点がなければそんなことはしないだろう。
犯罪者を受け入れることで何らかの対価を得ている世界。核廃棄物の処理を外国に依頼することがあるが、似たような感覚で地球や異世界の神がこの世界の神と取引をして悪人を押し付けているなどということがあり得るのだろうか?
毒薬という言葉があるように、毒と薬は同じ物質として定義されている。よい影響を及ぼす物を薬と呼んで区別しているだけの、生体に影響を及ぼす性質を持つ化合物。過去に魔が差して一服盛ったことも適性に影響したのかもしれない。
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(魔の森に百年周期で魔王が誕生して災厄を振り撒くのです)
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(先代勇者様の御来訪から百年後に顕れた異邦人だからです)
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これが事実なら、魔王と勇者は同じ周期で定期的に出現していることになる。この世界の神が盆暗だとしても、千年も前から不法投棄が続いていればさすがに気づくだろう。
恐らく魔王と勇者はこの世界の神の管理下にある存在だ。そうでなければ魔王と勇者の出現周期が一致しているわけがない。
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まさか……勇者だけではなく、魔王も異世界からの転移者なのか?
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