『最後の王女』が生きた世界

なごまる

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第2章

天竜ジーザとヤルダバオート一族

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 怨竜ネメシスは、王子や王女が成獣になると国王の体に入り込み支配する。ネメシスの体はルミナ王女の父、先代ダニアトール国王のものであった。
 ネメシスは何故王家の体に憑依する必要があったのだろうか。一体何が彼を怨竜にしてしまったのだろうか。

 昔、天に住む羽衣の竜、ジーザたちが精霊を守りながら暮らしていた。その精霊は特別で、ゼニスの魂の流れと、精霊と獣の心の結び付きを司る『心の精霊』と呼ばれていた。心に属する魔法を、ジーザの一族だけが独占して操ることができたが、その力で地上の獣を支配しようとした者がいた。彼女は自ら地上へと堕ちていき、心の魔法を使って獣たちをまとめ上げ、国を建国した。それこそがヤルダバオートである。
 ジーザは王となった彼女とその国が心の魔法を乱用しないよう監視する為に、監視の一族を地上へと送り出した。彼らはネベの使徒と名乗り、ヤルダバオートの王家の側で常に国王の魔法による統治について、助言という形で干渉し続ける。やがてネベの使徒の過干渉に鬱憤が溜まり、王家側が反発し始めた。

 その頃、干ばつによる食糧難が続き、森では疫病が流行り死者が増え、更には巨獣が現れるなど混迷を極める時代であった。王家は民をまとめネベの使徒をヤルダバオートから去らせる為、「忌獣」という概念を作り、口減らしを兼ねてネベの使徒の殺害を謀った。ネベの使徒は次々と起こる災いの元凶として晒し上げられ、民衆は不満をぶつけるように彼らを責め立てて痛め付けた。
 王家はここぞとばかりに怒りの矛先となったネベの使徒を処刑していったが、最後に残った若者は国王に抵抗し続けた。若者は忌獣について民衆の面前で抗議するも、行く先の無い不満と恐れが民衆をそそのかし彼は殺された。

 魂は死後、心の精霊の元へと還り、また新たな命として生まれ変わるのがゼニスの摂理であるが、若者は死後も無念と屈辱を蓄え続けた末、精霊の元へ魂は還らず、地上を彷徨い続けた。王家と民衆への恨みを募らせ、とうとう当時の国王に取り憑くことに成功すると、その代から必ず次の世代の国王に取り憑き、ゆっくりと長い時間をかけてヤルダバオート一族を根絶やしにする事を王子と王女に宣言した。これこそが怨竜ネメシスとしての彼の報復の始まりであった。

 ちなみに心属性の魔法によって魂を抜き取られた国王は、魂を変異させられ、異質な存在『魔物』へと変えられてしまう。国王以外にも同じように多くの『魔物』を作り出し、それらを命令通りに動く兵として利用するのだが、心の魔法を悪しき事に使い始めた若者を天から見ていたジーザたちは、彼と彼の同胞や『魔物』から自分たちの住処や精霊を守る為、開いていた天への道を閉ざしてしまう。このことがルミナ王女たちの旅をより厳しいものにしてしまったのである。
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