魔王を倒した天才武道家ですが、ギルドの入り口で新人にカラむ仕事をしています。

筋肉コスメティック

文字の大きさ
3 / 4

朝も早よからギルドでは

しおりを挟む
ギルドカラミ役の朝は、早い。

いや冗談じゃなく、本当に早いんだよ。
イチノは港町だから、まず漁に出ている舟がまだ夜のうちから活動している。
朝には、市場が開くので、日が昇る頃には、子供以外はたいがい一仕事始めている。

あと、港町なので旅行者を受け入れるための、税関がある。
税関といっても、どちらかというと怪しい奴を通さないための、門番みたいなものだけど、
これが日が昇ると同時に開く。

すると、旅の冒険者が、ギルドにやってくることもあるわけで。
ギルドは、税関と同じく、日が昇る頃には、門を開いている状態だ。

というわけで、俺たちカラミ役も、だいたいこのギルドの門が開く時には、
すっかり入り口で陣取っているというわけだ。

俺は、朝、門が開く前にギルドの裏口から入ると、まずギルド長と本日の予定について話す。
特別な客が来ることはないか、魔物の生き残りが出没して、冒険者が困っている場所がないか、とか
そういうことだ。

基本的に俺たちがカラむのは、冒険者登録希望者や新人に対してなので、
特別な客には、失礼にならないように、気をつけておくようにする。
冒険者が困っているような地域があれば、日中に交代で応援に出たりもする。

そして、次に受付担当のミリアと冒険者の情報について、意見を交わす。
他の冒険者にワルさをしている奴らや、少し調子に乗りすぎて実力以上のクエストに
手を出しそうになっている奴らの情報を、教えてもらっておく。

これらの問題児の様子をみながら、適度に鼻をへし折るのも俺たちの仕事だ。

あとは、入り口の酒場の座席に陣取って、目を光らせながら、日中をすごす。
まぁ、基本的にはくだらない話をして、クダを巻いているけどな。

そして、冒険者登録希望者がやってきたら、俺たちの出番だ。

イチノのギルドは、わざと受付の位置がわかりづらいように作られている。
このため、冒険者登録希望者や、初めて訪れるものは、用件を周りに話し、案内を乞う必要がある。

ここで、冒険者登録希望者だと分かったら、俺たちがまず、声をかける。

「おうおう、またヒョロヒョロな野郎がやって来やがったぜ」
「そんな腕で剣を振り回せると思ってんのか?」

基本的にはアドリブだ。出来るだけ、そいつのコンプレックスを刺激するようなことを言うようにしている。

ここで俺たちのカラミに、気圧されるようなヤツは、ダメだ。
冒険者として登録されても、魔物と対峙した時、盗賊にあった時、気圧されて命を失うことになってしまう、

なので、出来るだけ容赦なく、迫力を込めて、カラむのが大切だ。

「なんだと、この僕を誰だと思ってるんだ、外へ出ろ!剣の腕を見せてやる!」

頭に血が上りやすく、闘いで決着をつけたがるヤツもいる。
そう言うヤツは、冒険者としては悪くはないが、念のため、軽く揉んで、腕を試しておくことにする。
ある程度の腕を持っていることが分かったら、うまく負けて受付を案内してやる。

「すげぇ、こいつの剣はホンモノだ……」
「アニキが吹っ飛ばされたぞ!」
「これは失礼いたしやした。どうぞ、こちらの受付までご案内させていただきヤス」

あとは、受付のミリアの仕事だ。
適性検査などが行われて、いい結果が出たら、大げさに驚いて、いい気分にさせて、
このギルドで活躍してもらう場を作るのも、一つの仕事だな。

「うぉお、こんな高い魔力適性は、最近みたことがないぜ」
「何者なんだ、コイツは」
「このギルドのトップランクも奪われるんじゃないか」

基本的には、こういう仕事だ。
あとは酔っ払いの片付けなども引き受けたりするが、まぁ、これはオマケみたいなものだな。

あと最近は、少なくなったが、町の防衛が必要な事態が起きた時には、そちらにかかりきりになることもある。
そういう事態はすっかり落ち着いてしまって、ありがたい限りだがな。

長期塩漬けになっている、他の冒険者がやりたがらない仕事を減らす仕事もあるが、
まぁ、ギルドは助け合いだ。こういうのは俺たちだけでなく、みんなで分担している。

そうこうしているうちに、酒場の営業も終わり、夜もとっぷり暮れる。
そしたら、もう一度、ギルド長と本日の気になったことなどや、新人冒険者について意見を交換し、解散となる。

まぁ、一日中、ギルドの中でうだうだしているだけのような仕事だ。
魔族との戦いの日々から比べれば、十分に楽をさせてもらっていると言えるが、
自分でも何やってるんだ、とは思うわな。でも、結構気に入っているんだよ。この仕事。

これが、俺たち、カラミ役の一日だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

義妹がピンク色の髪をしています

ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。

処理中です...