15 / 17
臆病者でも恋をする
14
しおりを挟む
「だったら丁度良い働き口があるって、彩乃を連れて来たんだよ。良いタイミングだよなぁ」
だからこの娘は最初に、よろしくお願いしますって元気に言ったのか。本人は既に話が通っていると思っているのだろう。俺が求人募集をしてると思っていたなら働くことに何の迷いも無いくお互い、願ったり叶ったりか。五十嵐さんも悪い人ではないのだろうが、こういう状況になると一人走りが過ぎる傾向にある。
そもそも俺の人手が足りないって話題だって、恐らくもっと客を廻して稼ぎに走れっていつもの説教的な会話に尾鰭が付いた程度だろう。ただ、言った本人は良い事言ったって思い自己完結しているのが厄介なだけで。
「良かったじゃない、若い子が入ってくれて。それじゃ私、仕事があるから」
結局、軽蔑をした様に取れる瞳を戻すことなく店の扉から桜井さんは帰って行った。丁度、扉を開けた所に立っていた二人は邪魔にならない様に桜井さんを避ける形で店内に入ってきた。
「早速、明日からでも入れるよな?」
「はい!」
「おい夜神、何時から入ればいいんだ? 早朝は寮の掃除してるからダメだぞ」
俺の知らないところで話は勝手に進んで行く。まるで雇うのが確定したかの様に。この田舎町にどれだけの人がこの状況で五十嵐さんの提案を拒否できる同世代がいるのだろうか。勿論五十嵐さんだって、毎日閑古鳥が鳴いている経営者にはこんな無茶な押し付けはしないだろうが、俺には言い易いというのもあるのだろう。実際、勝手に話が進んでも絶対無理と拒否的な発言をしていないのは事実。
人を雇うことによってのメリットとデメリットは以前から考えていたが、こうも急にしかも自分の判断以外の所で話が進むとどうするのが正解なのか既にわからなくなっている。
間違いなく言えることは、桜井さんが俺を軽蔑したまま立ち去ったことである。
桜井さんはどう思っていたのかわからないが、少なくとも嫌で一秒でも早く立ち去りたいと思っていたら、毎朝俺と二人でコーヒーを飲んではくれなかった筈だと。そこを俺は信じたい。
俺の様に、一日の中で一番の至福な一時ではないとは思うが。今日に限って言えば俺も、至福の一時を邪魔された方なのだが、軽蔑な眼差しはそれが理由ではない。
雇うなら若い子がいいなって発言、それが本当かどうかとかどんな流れで言ったとかはあまり気にしていないのかもしれない。
一番の理由は、鈴木彩乃が可愛らしいことの事実ではないかと俺は思っている。
第一印象は大事で、雇い主である俺に最初から不愛想では話にならない。だから今日の愛想が作ったものなのか素の状態なのかわからないが、好印象だったのは間違いない事実。
その上で整った顔立ちで可愛らしく、しかも若いときたら、三十手前の桜井さんからしたら面白くなかったのかもしれない。
勝手な憶測で色々考えたけど、結局自分の中途半端な立ち位置が招いた結果なのだろうか。
本当は一緒に働けたらいいなって思ってたなんて、今更言ったって遅く、白々しく思われたらそれこそ逆効果にもなる。
それに、桜井さんの気持ちも考えずに言ったところで、キモイなんて思われたりしたら店を閉めて旅立たねば顔も合わせられない。
いつまでもずっと続くと思っていた、幸せな時間。
この町に住みだしてから異性とも縁が無く、平平凡凡と過ごしてきた中で芽生えた幸せな気持ち。
毎朝、二人だけの至高の時間が麻痺をお越し、まるで桜井さんも幸せで喜んでくれていると錯覚を起こす。
※
だからこの娘は最初に、よろしくお願いしますって元気に言ったのか。本人は既に話が通っていると思っているのだろう。俺が求人募集をしてると思っていたなら働くことに何の迷いも無いくお互い、願ったり叶ったりか。五十嵐さんも悪い人ではないのだろうが、こういう状況になると一人走りが過ぎる傾向にある。
そもそも俺の人手が足りないって話題だって、恐らくもっと客を廻して稼ぎに走れっていつもの説教的な会話に尾鰭が付いた程度だろう。ただ、言った本人は良い事言ったって思い自己完結しているのが厄介なだけで。
「良かったじゃない、若い子が入ってくれて。それじゃ私、仕事があるから」
結局、軽蔑をした様に取れる瞳を戻すことなく店の扉から桜井さんは帰って行った。丁度、扉を開けた所に立っていた二人は邪魔にならない様に桜井さんを避ける形で店内に入ってきた。
「早速、明日からでも入れるよな?」
「はい!」
「おい夜神、何時から入ればいいんだ? 早朝は寮の掃除してるからダメだぞ」
俺の知らないところで話は勝手に進んで行く。まるで雇うのが確定したかの様に。この田舎町にどれだけの人がこの状況で五十嵐さんの提案を拒否できる同世代がいるのだろうか。勿論五十嵐さんだって、毎日閑古鳥が鳴いている経営者にはこんな無茶な押し付けはしないだろうが、俺には言い易いというのもあるのだろう。実際、勝手に話が進んでも絶対無理と拒否的な発言をしていないのは事実。
人を雇うことによってのメリットとデメリットは以前から考えていたが、こうも急にしかも自分の判断以外の所で話が進むとどうするのが正解なのか既にわからなくなっている。
間違いなく言えることは、桜井さんが俺を軽蔑したまま立ち去ったことである。
桜井さんはどう思っていたのかわからないが、少なくとも嫌で一秒でも早く立ち去りたいと思っていたら、毎朝俺と二人でコーヒーを飲んではくれなかった筈だと。そこを俺は信じたい。
俺の様に、一日の中で一番の至福な一時ではないとは思うが。今日に限って言えば俺も、至福の一時を邪魔された方なのだが、軽蔑な眼差しはそれが理由ではない。
雇うなら若い子がいいなって発言、それが本当かどうかとかどんな流れで言ったとかはあまり気にしていないのかもしれない。
一番の理由は、鈴木彩乃が可愛らしいことの事実ではないかと俺は思っている。
第一印象は大事で、雇い主である俺に最初から不愛想では話にならない。だから今日の愛想が作ったものなのか素の状態なのかわからないが、好印象だったのは間違いない事実。
その上で整った顔立ちで可愛らしく、しかも若いときたら、三十手前の桜井さんからしたら面白くなかったのかもしれない。
勝手な憶測で色々考えたけど、結局自分の中途半端な立ち位置が招いた結果なのだろうか。
本当は一緒に働けたらいいなって思ってたなんて、今更言ったって遅く、白々しく思われたらそれこそ逆効果にもなる。
それに、桜井さんの気持ちも考えずに言ったところで、キモイなんて思われたりしたら店を閉めて旅立たねば顔も合わせられない。
いつまでもずっと続くと思っていた、幸せな時間。
この町に住みだしてから異性とも縁が無く、平平凡凡と過ごしてきた中で芽生えた幸せな気持ち。
毎朝、二人だけの至高の時間が麻痺をお越し、まるで桜井さんも幸せで喜んでくれていると錯覚を起こす。
※
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
Husband's secret (夫の秘密)
設楽理沙
ライト文芸
果たして・・
秘密などあったのだろうか!
むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ
10秒~30秒?
何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。
❦ イラストはAI生成画像 自作
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる