カテキミ ~if 家庭教師は正義と君の味方~

つきの麻友

文字の大きさ
62 / 75
第三章 嘘の幸せと真実の絶望と

62 死をも恐れず乗り越えて03

しおりを挟む
「そうだウタル、お前に新しい技を教えてやる約束だったな」

 確かに教えてくれるとは言いましたが、まさか今ですか?所長の呑気さには呆れて地球一周しそうなくらいだった。

「約束はしましたけど」

「良し、ブラックソードを構えてだな」

 教えてくれてるところに悪いんですけど、左側に倒れてる組織の”W”が一斉に襲ってきた。

 所長はブラックソードを”W”に一振りしてからまた説明に戻った。

「人間の体内に流れる"気”を掴んでる手に集中《イメージ》するんだ」

 言われるままにイメージしようとしたが、残りの右側に倒れている組織の”W”が十体はいるだろうか、全てが螺旋状に天井まで昇りうねっているのが気になって仕方がない。

「ほら、もっと集中《イメージ》して」

 言うは簡単だが、急にはできないし邪念もあるし。

「初日は無我夢中で出来ていたぞ。あれを自在にできるようにコントロールするんだ」

 確かに、曜子と初めて会った初戦の時、無我夢中で炎のような剣になって戦えた。あれをイメージして気をブラックソードに集中して......。

「今日はここまでだな。俺のをよぉく見て盗んでイメージしろよ」

 目を閉じて集中してたのに、急に終わりになって一気に気が抜けたのだが、そうもいかず目を開いたら巨大な”W”が目の前に立ち塞がっていた。

「な、なんだコイツ!合体したのか?」

 恐らくそうなのだろう、他の”W”は見えずその巨大な”W”だけになっている。頭は大きな倉庫の天井に着く程になっている。

 両手にはダンプでも真っ二つにできそうな程の爪がこちらを狙っていた。

「しょ、所長!」

「分か《わー》ってるって!」

 ブラックソードを下段に構えた所長は、大きく息を吸って、一気に吐き出した。

 一瞬!落雷でもあったかのように所長のブラックソードが光ったかと思うと電流が飛び散るように武器《ソード》に絡みついている。

「斬《ざん》……」

「あ、ちょっと待ってください。なんだか僕、できそうなのでやらせてもらえませんか?」

 集中している所長を止めて、なんだかさっきの俺が止められた仕返しみたいになってしまったが、目の前の巨大で間違いなく今まで戦った中で一番手強いだろう”W”を倒すことができたら、自分の自信になるし、今までの訓練の成果を試せる気がした。

「やれるのか?そいつは……」

 任せてください、という返事を言う時間さえも惜しく、俺は集中してそっと目を閉じようとした時、”W”が大きく口を開けて吐き出したのは、バックドラフトのように爆発的な炎が俺に遅い掛かってきた。

「え?」

 中学生の時に体験したキャンプファイヤーの時に、わりと離れていても炎っていうのは熱さを感じるものだなぁと思ったが、今はその比ではない燃え滾るような熱量が目の前から襲ってくるのだ。

 たちまち目の前が真っ赤になり、立ちすくむしかできなかったが、横から遮った風が炎を切断するという現象が起こった。

「そいつは炎を口から出すかもしれないから気を付けろ!」

 いやいやいや、先に言ってくださいよ。と言いたいのだが、唖然として言葉にならなかった。

 落ち着きを少しだけ取り戻した俺は所長の後ろに急いで身を隠した。

「すんません所長、僕にはまだ早かったみたいです!」

 ハハハと笑われたが、笑われても仕方ないくらいカッコ悪かった。

「威勢は良かったが、もう少しでウタルの丸焦げが見れてたな」

 何も言い返せない状態で所長の後ろに隠れていた。再び”W”は俺達目掛けて炎を吐き出したが、所長のブラックソード一振りで炎は切断され、威力を失った。

「斬《ざん》・邪気諦観《じゃきていかん》」

 眩しいほどに光輝いた所長のブラックソードは、下段の構えからの一振りで稲妻のように走った光が”W”を真っ二つにした。

 地に倒れた”W”から黒い煤《すす》が立ち上り灰になって消えて行った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

【アイテム分解】しかできないと追放された僕、実は物質の概念を書き換える最強スキルホルダーだった

黒崎隼人
ファンタジー
貴族の次男アッシュは、ゴミを素材に戻すだけのハズレスキル【アイテム分解】を授かり、家と国から追放される。しかし、そのスキルの本質は、物質や魔法、果ては世界の理すら書き換える神の力【概念再構築】だった! 辺境で出会った、心優しき元女騎士エルフや、好奇心旺盛な天才獣人少女。過去に傷を持つ彼女たちと共に、アッシュは忘れられた土地を理想の楽園へと創り変えていく。 一方、アッシュを追放した王国は謎の厄災に蝕まれ、滅亡の危機に瀕していた。彼を見捨てた幼馴染の聖女が助けを求めてきた時、アッシュが下す決断とは――。 追放から始まる、爽快な逆転建国ファンタジー、ここに開幕!

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

処理中です...