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第三章 嘘の幸せと真実の絶望と
63 隠密刺客
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「所長って強いんですね」
初めて見る所長の戦いに、嬉しさと驚きが共存して少し興奮気味だった。
「ウタルも今まで通りに訓練続ければ、これくらいはできるよ。お前には素質もあるからな」
誉めて伸ばす。例えその言葉が過剰であっても俺は素直に嬉しく思い、朝からの訓練も続けようという励みになる。
「こいつら意識戻すのに時間かかりますね。それだけ重い犯罪者ってことですよね」
基準を法律に乗っ取ってるわけではないのだが、人の心を浄化するのに、モラルも含めて基本的に重罪の奴等が意識を戻す時間は長かった。
浄化された犯罪者は心新たにして自首するのだが、一斉に自首するのも不自然だということで、今回のような場合は警察の検挙で終わらせる。
「そろそろ豚平《とんぺい》に連絡しとくか。鮭島って刑事は直接の知り合いじゃないからな」
「それにしても今日の"W"は合体なんかして、口から炎も出してヤバい奴でしたね。所長はいつもあんなのと戦っているのですか?」
「あぁ」
所長の返事は重いように感じた。所長にしては特にピンチではなかったと思うのだが、何か府に落ちない様子だった。
それに、今日のような"W"を俺一人の時に出くわしたら本当に戦えるのか不安にもなった。所長が使った今日の技を早めに修得しなければと強く思うと、明日からの訓練が少し楽しみにもなった。
「豚平《とんぺい》、終わったぞ。けど、いつもと様子が違うというか、なんていうのかなぁ……」
『日比谷君、気をつけた方がいい。何か探りを入れてる奴等がいるみたいだ』。
「……探り?」
『詳しいことはまた明日、そっちにいってから話すよ』。
電話の内容が良くなかったのか、切った後スマホをポケットに仕舞わないで何か考えているようだった。
その時、背中越しから大きな音が聞こえ、即座に振り向くと、二階建ての家程ある倉庫の本扉が勢いよく開いていたるところだった。
分厚い鉄板の扉を、玄関扉を開けるかのうに片手で易々と動かした奴は、二メートルは軽く越えているような巨漢だった。
対照的に隣にいる奴は細身で小柄に見えたが、あの巨漢が隣に並ばれると誰でも小柄に見えるだろう。
上下白っぽい同じ服を着た二人はおそらく男だろう。小柄な方は色白く整った顔立ちだが、冷めた目が印象的だった。
一瞬、ここに来るのなら鯱島という刑事かと思ったが、腰に差している刀を見て違うとわかった。
「誰ですか?」
所長は応えず、暫く二人を見ていたが。
「こっちもお客さんのようだな」
こっちも?電話相手の豚平《ぶたひら》さんにも何かヤバイお客さんが来たのだろう。
とにかくあの巨漢の怪力、腰に差した刀、油断できるはずないが戦闘態勢であるのは間違いない。いつもの“W”との対戦とは空気が違う気がした。
たった今、凶悪な“W”と対戦したというのにだ。
初めて見る所長の戦いに、嬉しさと驚きが共存して少し興奮気味だった。
「ウタルも今まで通りに訓練続ければ、これくらいはできるよ。お前には素質もあるからな」
誉めて伸ばす。例えその言葉が過剰であっても俺は素直に嬉しく思い、朝からの訓練も続けようという励みになる。
「こいつら意識戻すのに時間かかりますね。それだけ重い犯罪者ってことですよね」
基準を法律に乗っ取ってるわけではないのだが、人の心を浄化するのに、モラルも含めて基本的に重罪の奴等が意識を戻す時間は長かった。
浄化された犯罪者は心新たにして自首するのだが、一斉に自首するのも不自然だということで、今回のような場合は警察の検挙で終わらせる。
「そろそろ豚平《とんぺい》に連絡しとくか。鮭島って刑事は直接の知り合いじゃないからな」
「それにしても今日の"W"は合体なんかして、口から炎も出してヤバい奴でしたね。所長はいつもあんなのと戦っているのですか?」
「あぁ」
所長の返事は重いように感じた。所長にしては特にピンチではなかったと思うのだが、何か府に落ちない様子だった。
それに、今日のような"W"を俺一人の時に出くわしたら本当に戦えるのか不安にもなった。所長が使った今日の技を早めに修得しなければと強く思うと、明日からの訓練が少し楽しみにもなった。
「豚平《とんぺい》、終わったぞ。けど、いつもと様子が違うというか、なんていうのかなぁ……」
『日比谷君、気をつけた方がいい。何か探りを入れてる奴等がいるみたいだ』。
「……探り?」
『詳しいことはまた明日、そっちにいってから話すよ』。
電話の内容が良くなかったのか、切った後スマホをポケットに仕舞わないで何か考えているようだった。
その時、背中越しから大きな音が聞こえ、即座に振り向くと、二階建ての家程ある倉庫の本扉が勢いよく開いていたるところだった。
分厚い鉄板の扉を、玄関扉を開けるかのうに片手で易々と動かした奴は、二メートルは軽く越えているような巨漢だった。
対照的に隣にいる奴は細身で小柄に見えたが、あの巨漢が隣に並ばれると誰でも小柄に見えるだろう。
上下白っぽい同じ服を着た二人はおそらく男だろう。小柄な方は色白く整った顔立ちだが、冷めた目が印象的だった。
一瞬、ここに来るのなら鯱島という刑事かと思ったが、腰に差している刀を見て違うとわかった。
「誰ですか?」
所長は応えず、暫く二人を見ていたが。
「こっちもお客さんのようだな」
こっちも?電話相手の豚平《ぶたひら》さんにも何かヤバイお客さんが来たのだろう。
とにかくあの巨漢の怪力、腰に差した刀、油断できるはずないが戦闘態勢であるのは間違いない。いつもの“W”との対戦とは空気が違う気がした。
たった今、凶悪な“W”と対戦したというのにだ。
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