カテキミ ~if 家庭教師は正義と君の味方~

つきの麻友

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第三章 嘘の幸せと真実の絶望と

65 隠密刺客03

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「麻薬組織《アイツら》が喰われるのを黙って見てたのは、恐ろしくて手が出せなかったのか?それとも、麻薬に手を出した屑は助ける余地がなかったということか?あぁ!?」

「さぁな」

 ダンパーと呼ばれていた巨漢の男はその間に元の人の姿に戻って行った。竜か人かどちらが本来の姿なのかはわからないが。

「正義の味方と言っても、悪人は見捨て、勝てない敵には手を出さないってことか?からし屋マタジのエージェントよぉ」

 俺は背中が凍り付いたようだった。突然現れたこいつらが平気で人を殺し、しかも喰うような奴らがマタジの存在を知っていることに。

「こいつは驚いた」

「ハッン!」

 セルフィーオと呼ばれていた小柄の男は所長の言葉を聞いて得意げに笑みを浮かべた。

「あんなに巨大になっても破れないんだな、その服。伸縮自在に驚いてるぜ」

「貴様ぁ!!」

 来る!初心者の俺でもわかるくらいセフィーオの気が大きく爆発しそうなのを感じ取った。

 腰に差した剣を抜いたセルフィーオだったが、突然現れた男に制止された。

「お待ちください、セルフィーオ様!ダンパー様もセルフィーオ様をお止め下さい!」

「あぁ!?殺《や》ったらいいんだよ!こんな奴等ぁ!」

 ダンパーも臨戦態勢に入る。対戦は免れないのだろうか。

「落ち着いてください!お二人とも!我々の任務は隠密情報収集です。戦闘は極力避けよとの命令です!」

「極力ってのは、時と場合によるんじゃねぇのかよ!」

 セルフィーオは制止できない怒りが爆発してるかのようだった。

「ダンパー様!」

「フンッ、仕方ねえなぁ。セルフィーオ、まあ落ち着け。殺すのは今でなくてもできるだろう」

 ダンパーがセルフィーオを抑えるように片手を出した。

「しかも相手はあの四大明王の一人、日比谷です」

「なに!だったら尚更今殺しとけばいいじゃねぇか!それともなにか?俺じゃ明王共には勝てないって言いたいのか?」

 後から来た三人目の男は跪《ひざまず》き、黙っていた。

「くそっ!」

 セルフィーオは怒りを誤魔化すように跪いた男を蹴飛ばし、鞘に剣を戻した。

「なんだ?戦わないのか?」

 その光景を見て、ニヤけながら煽る所長に俺は茫然とした。

「命令だから逃がしてやるが、王の復活まで命拾いしろ」

「王の復活?」

 セルフィーオの言葉に俺は反応した。こいつに命令出している組織もあるということか。その王を復活させる為にコイツ等は動いているということなのか。

「我らの王が復活されれば、貴様らなど取るに足らんのだ!」

 自信に満ちたセルフィーオの顔はハッタリではない、王の復活が本当に起こるのだという現れなのだろうか。

「王についてもっと教えてくれよ、おチビちゃんよぉ」

「ぐぬぅ」

 今にも飛びかかってきそうな雰囲気だが、ダンパーが再々制止する。

「我らの王の復活は近い。この国は王の復活の為に破壊され、復活と共に破滅する。数千年の怒りと共に」

 周りの空気が張り詰めた感じになる。

「だが安心しろ日比谷。王が復活して我らの力が全開に戻ったら四大明王は俺がまとめて地獄に落としてやるからな」

「まだ、全開じゃないだと…?」

 俺は驚愕だった。ダンパーの変身も恐らく途中形態だろうが、あの鋭さと凶暴さを備えていた。それがまだ全開じゃないなんて、一体。

 セルフィーオもダンパーと同じかそれ以上の実力だとしたら……。

 王の復活とやらが目前なのかまだ時間が掛かるのかはわからないが、阻止できるものなら復活させない方が良いのだろう。だが、その術が全く見当もつかない。

 もしかしたら所長は戦闘する為に煽っていたのではなくて、何かを聞き出すためだったのだろうか?しかし相手の実力もわからない状態でリスクが高すぎると思うのだが。

「お前らエージェントも薄々おかしいと思っていたんだろ?先の大戦が終わってからは悠々自適に過ごしてきたのに最近、動きが活発になってきてるの知ってるぜ、からし屋マタジの連中がよぉ」

「あぁ、最近の“W”がやけに戦闘的なのと、悪人が“W”を生み出しているというより、“W”が人を飲み込んで悪人に仕立て上げていると思ってたがな」

 先の大戦?俺の知らない大きな戦いが以前にあったということか。

 それに、所長も“W”が今までより違うことに気付いていたのか。俺が最近入社したのも関係あるのだろうか?それは考えすぎか。

「ぬるま湯に浸かったお前等からし屋マタジ、王の復活まで精々命乞いしてろ」

 三人は暗闇に消えていこうとしたが、所長の声で足を止めた。


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