令嬢である妹と一緒に寝ても賢者でいられる方法を試してたらチート能力が備わった件

つきの麻友

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女子学園の遠足

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「三十分後に出発するので遅れないようにねー」

 担任教師の指示を聞いたかどうかのタイミングでミゼル達生徒は散らばって行った。

 駅のホームを出ると、両サイドに商店が並んでいる。その間の広い通路にはパラソルを広げてテーブルで飲食を楽しむ人々もいる。

 用を足す為に向かったトイレで固まった。

 それは、便器の代わりにスライムがいたからだ。

「ちょ待てよ」

 テレビで聞いた時代遅れのセリフを吐いて扉を閉めた。

「我慢できる範囲なので後でミゼルにやり方を聞こう」

 トイレを出て噴水の方に行って探したが見当たらず、飲食店を覗きながら歩いていた時に椅子の足を引っかけてしまった。

「すいません」

 パラソルの下で飲食を楽しんでいるその人たちに謝り、顔を上げて固まった。さっきから固まってばかりなのだが。

「気を付けろよ。殺すぞ」

「ハハハハハ」

 俺が固まったのは、吐かれた言葉の内容ではなく言った奴の顔にあった。

 見覚えのある顔。名は確かダンパーと言ってた。

 現世で一度戦った相手だ。二メートル程あるような大柄な男。爬虫類のような冷めた目。真っ白な服が印象的だったので間違いない。

 あの時は俺にマグレのような力が出て、最後は相手が引き上げて行ったのだが本来の実力で勝負すればわからないはずだ。それ程自分の実力が未熟なのは自覚している。

「本当にすいません」

 顔を下に向けてなるべく思い出されないようにしたのが功を奏したのか。

「消えろ、ぶっ殺されないうちにな」

 中指立てて言われたが、俺はその場をそそくさと立ち去った。

「ウタルー見っけー」

 ミゼルに後ろから飛び乗られて、不意を突かれた俺は一瞬焦ったが、気持ちを落ち着かせてからミゼルに真剣に言った。

「スライムトイレの使い方を教えてくれないか」

「ふぇ?」

 ダンパーに会ったのもミゼルに飛びつかれたのも色んなものが重なって、俺は今猛烈にトイレに行きたかった。今ダンパーに襲われたら確実に漏らす。間違いなく漏らす。それは俺にとっての汚点よりも一応兄として参加している立場上、ミゼルの汚点にもなるのだ。ヤバイヤバイ成り行きでも兄が遠足でお漏らししましたってシャレにならん。早く、一刻も早くスライムトイレの使い方を伝授するのだ。伝授伝授伝授マン。伝授スパークだ。

 第一この異世界、パンツなるものが無いのが許せん! どうりでロイエルーンにパンツ穿かせてくれと頼んだ時に、「戯言を!」と言われたか分かったぞ。パンツの意味が分かってなかったからなのだ。いかん!一滴も漏らすわけにはいかんのだよ!

 さあ行こう、早く行こうミゼル!

 俺はその後、ミゼルの見てる前で初めてのスライムトイレを体験した。

 つまり十歳にトイレの仕方を教えてもらう屈辱を異世界で味わったのだった。

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