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奇跡の水の樹
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「それより、その特殊な水はどこから湧き出てくるんだ? なにか特殊な工事でもしてるのか? 天候に左右されると安定もしないだろうに」
「あの工場があるところに『水の樹』が茂っておってな。その樹から溢れ出る水が万病に効く水として利用されているのだ。銭湯に使用しているのは大量に使うわけにもいかないから井戸の湧水との混水だがな。それでも効果はあるから年に一度、無病を願って子供たちに利用してもらっている。それが先日行った遠足という形で国が提供しているわけだ。子供は国の宝だからな」
そうか、だから城から離れた不便なところに工場があるのは仕方ないことなんだな。水の樹も城も動かすにはリスクが伴うからな。
「しかし、私の入っている風呂の水は特殊な水だぞ。水の樹の枝を持って来て栽培に成功してな。その枝から摂取できた水で賄えておる。王家の特権ではないが衰退するわけにはいかないからな」
「いい身分だな。王家だから本当にいい身分なんだけど。一般市民は風呂に入るのさえも贅沢だって言ってたぞ」
「それは仕方ないだろう。各家庭に風呂に入れるほどの水が湧き出てくるのなら問題ないが」
「そうだけど…」
井戸の水で賄っている限り、水は貴重で風呂に使える程大量には利用でいないってことか。ロイエルーンの言うことはもっともだが、水道の設備が整えば国民の暮らしも良くなると思うのだが。
夏場は川辺で水浴びでも良いが、冬などはお湯でないと冷たくてできないだろうな。不憫だな。各地に温泉でも湧いていればよいのだがな。
「ちょっと待って、水の樹の枝から水が摂取できるって、万病に効く水が手に入る? その枝から水は永久に出てくるのか!?」
「枯れない限りは出てくるだろう。今の所枝からも水の樹本体からも出続けているからな」
目から鱗とはこのような時に使われるのだろうか。
この異世界に転移する前に出会った女子高生のヨーコ。彼女の身体は白血病に侵されているのだが、もしかしたらこの水の樹から出る特殊な水で治癒できるかもしれない。駄目でもともと、やってみる価値はあるはずだ。
外傷ではないが、水が足りるなら飲料だけでなく風呂にも使えば、良くなる確率も上がるかもしれない。
「俺にもその枝、分けてくれないか?」
「はいどうぞ、って簡単にあげれるものだと思っているのか?」
思っていた通りの答えが返ってきたのだが、力ずくで奪うのは容易だろう。そうして手に入れた水の樹の枝でヨーコは喜ぶのだろうか。奪取した経緯は言わなければわからないが、後味が悪い。これじゃ隣国の魔王がしようとしていることと同じじゃないか。
水の樹の枝を分けて貰えるほどの対価があれば、正当な理由で貰えるのだが。
正当な理由を考えて思いついたのは、やはり魔王軍からこの国を守ることだった。
おかげでこの異世界の人間よりチートな能力が備わっているのに気づいたから出せる答えだったのかもしれないが。
俺はその案をロイエルーンに言ったが、受け入れてもらうことはできなかった。
「魔王討伐は我が軍でもできるし、貴様が討伐する利点として現世に戻ることもあるだろ。別に枝を分けずとも戻る手段として魔王は討伐するのではないのか?」
ロイエルーンの言う通りだった。現世に戻る手段として魔王討伐という明確な答えが出ている。
軍の規模が互いの国でどれ程の実力差があるのかわからないが、想定内なら大したことはないみたいだし。魔王が隣国を支配したみたいだから魔王軍がどれ程なのかが問題なのだが。
「どうしても分けて欲しいなら条件がある」
不敵な笑みではないが、ニヤッとした顔を向けてロイエルーンは言った。
「まずは一緒に風呂でも入るか」
「あの工場があるところに『水の樹』が茂っておってな。その樹から溢れ出る水が万病に効く水として利用されているのだ。銭湯に使用しているのは大量に使うわけにもいかないから井戸の湧水との混水だがな。それでも効果はあるから年に一度、無病を願って子供たちに利用してもらっている。それが先日行った遠足という形で国が提供しているわけだ。子供は国の宝だからな」
そうか、だから城から離れた不便なところに工場があるのは仕方ないことなんだな。水の樹も城も動かすにはリスクが伴うからな。
「しかし、私の入っている風呂の水は特殊な水だぞ。水の樹の枝を持って来て栽培に成功してな。その枝から摂取できた水で賄えておる。王家の特権ではないが衰退するわけにはいかないからな」
「いい身分だな。王家だから本当にいい身分なんだけど。一般市民は風呂に入るのさえも贅沢だって言ってたぞ」
「それは仕方ないだろう。各家庭に風呂に入れるほどの水が湧き出てくるのなら問題ないが」
「そうだけど…」
井戸の水で賄っている限り、水は貴重で風呂に使える程大量には利用でいないってことか。ロイエルーンの言うことはもっともだが、水道の設備が整えば国民の暮らしも良くなると思うのだが。
夏場は川辺で水浴びでも良いが、冬などはお湯でないと冷たくてできないだろうな。不憫だな。各地に温泉でも湧いていればよいのだがな。
「ちょっと待って、水の樹の枝から水が摂取できるって、万病に効く水が手に入る? その枝から水は永久に出てくるのか!?」
「枯れない限りは出てくるだろう。今の所枝からも水の樹本体からも出続けているからな」
目から鱗とはこのような時に使われるのだろうか。
この異世界に転移する前に出会った女子高生のヨーコ。彼女の身体は白血病に侵されているのだが、もしかしたらこの水の樹から出る特殊な水で治癒できるかもしれない。駄目でもともと、やってみる価値はあるはずだ。
外傷ではないが、水が足りるなら飲料だけでなく風呂にも使えば、良くなる確率も上がるかもしれない。
「俺にもその枝、分けてくれないか?」
「はいどうぞ、って簡単にあげれるものだと思っているのか?」
思っていた通りの答えが返ってきたのだが、力ずくで奪うのは容易だろう。そうして手に入れた水の樹の枝でヨーコは喜ぶのだろうか。奪取した経緯は言わなければわからないが、後味が悪い。これじゃ隣国の魔王がしようとしていることと同じじゃないか。
水の樹の枝を分けて貰えるほどの対価があれば、正当な理由で貰えるのだが。
正当な理由を考えて思いついたのは、やはり魔王軍からこの国を守ることだった。
おかげでこの異世界の人間よりチートな能力が備わっているのに気づいたから出せる答えだったのかもしれないが。
俺はその案をロイエルーンに言ったが、受け入れてもらうことはできなかった。
「魔王討伐は我が軍でもできるし、貴様が討伐する利点として現世に戻ることもあるだろ。別に枝を分けずとも戻る手段として魔王は討伐するのではないのか?」
ロイエルーンの言う通りだった。現世に戻る手段として魔王討伐という明確な答えが出ている。
軍の規模が互いの国でどれ程の実力差があるのかわからないが、想定内なら大したことはないみたいだし。魔王が隣国を支配したみたいだから魔王軍がどれ程なのかが問題なのだが。
「どうしても分けて欲しいなら条件がある」
不敵な笑みではないが、ニヤッとした顔を向けてロイエルーンは言った。
「まずは一緒に風呂でも入るか」
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