令嬢である妹と一緒に寝ても賢者でいられる方法を試してたらチート能力が備わった件

つきの麻友

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はじめましてこんにちは、魔王ですか?

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「カイト!!」

「カイト様!!」

 受け止めることなどできもしないのに、避けることが見捨てることとの錯覚に陥ったのだろうか、セリカはその場から避けようとしなかった。もしくはできなかったのかもしれない。

 氷の十字架は勢い止まらず迫りくる。氷上ということを気にして滑らないように気を使いながらセリカの前に移動して、左手で十字架を受け止めた。

 初めて間近で見たカイトの顔色は白かった。だがその真後ろにはクラッチロウが既に迫ってきていた。

 右手に持っていた聖剣ヨシミツでクラッチロウの攻撃を防ぐ。

「クラッチロウ、そういった戦法は卑怯と言われるんだよ」

 力任せに押してくる剣の圧力をやれやれと言った力で押し返す。クラッチロウが後ろに弾かれた瞬間に魔導士のような者が詠唱し氷の矢が浴びせられた。

「捲土重来!」

 ルーチェの詠唱と共に氷上から盛り上がってきた氷の壁が敵の攻撃を防いだ。

「手出しするな! 元々貴様は攻撃に向いてないんだからよぉ!」

 氷の壁を軽々と超えるほどジャンプしてきたクラッチロウが頭上から襲い掛かってくる。

 弓を向け、セリカは矢を放ったがクラッチロウの剣によって弾かれる。二本目の矢を準備するも迫りくるクラッチロウの方が早い。

「近距離には不向きだろう?」

 狙いはミゼルだった。

 ルーチェは杖から炎を浴びせる。しかしクラッチロウが左手で空を切ると炎は沈下される。迫る勢いはそのままミゼルの元に。

「ぬるい! ぬるいんだよぉ!」

 真上から振り落とした剣はミゼルの頭上の少し上で止められた。

「お前の相手は俺なんだろ?」

 クラッチロウの脳裏に怒りと理解不能が交互に過ったのだろうか。着地したクラッチロウは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。

 剣を止めたのがヨシミツの先端だったからだろう。

 渾身の一撃を巨大とはいえ剣の先端で防がれるのは屈辱以外の何物でもないのだろう。

 手を休めていなかったルーチェの攻撃でミゼルから遠ざかる。

「ミゼル大丈夫か? 死んだかと思ったわ。それにあれ……」

「私もそうかなと思ってたんや。あの魔導士、〇〇先生や!」

「な? 知っているのか?」

「あぁ、我が軍の魔法士官だったお方だ」

 だったという過去形が引っ掛かった。

「数年前に姿を消したと言われている。噂では単独で山賊討伐に出向いたって話だったのだが」

「まさか敵さんの仲間になっておるとは驚きやわ」

 少し焦っている表情は寒さのせいではなさそうだった。

「フンッ。有名人だなぁ」

「……」

 黒の頭巾を被ったままなので表情は分からなかったが、返事もなく只々こちらを見ていた眼光だけはわかった。

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