令嬢である妹と一緒に寝ても賢者でいられる方法を試してたらチート能力が備わった件

つきの麻友

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あなた本当に魔王ですか?

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「スペンサー様……」

「あぁ、痛みも随分引いたよ。流石に奇跡の水と呼ばれるだけあるな。フッ、まさか己の復活の為に手に入れようとした水なのに、敵の治療によって頼ることになるとはな」

「何を仰いますか。三千年の封印から解かれて直ぐに全力で戦うなどという行為は、例えスペンサー様でも至難だったかとお察し致します。出直せば必ずや……」

「もう良いのだ、クラッチロウ」

 片手で遮り、魔王は話を止める。少し間を置いてから魔王は口を開いたのは、クラッチロウのやりきれない気持ちを少し落ち着かせる為なのかもしれない。

「私は過去の闘いで神としてのおごりがあった。そして己の不甲斐無さで今がある。力をセーブして闘うほど今の私に余裕はなかったよ」

「しかし、実力は拮抗、いえスペンサー様が圧していたかのようにさえ思えます」

「クラッチロウ、お前との戦いを見ていて私は気付いたのだよ。彼は力を相手に合わすリミッターが無意識のうちに働いているようだ。私との闘いで勝機はそこにあると思っていたんだがね。己の先を見る能力に頼り過ぎたのだが、最後のリミッターを解除した彼と対峙してわかったよ。彼の本気はまだまだ上にあるということを」

「あれが全然本気でなかったと言うのか……」

「そうだろう? 月野ウタル」

 闘いが終わって俺は初めて、スペンサーと呼ばれる魔王と目を合わした。いや、魔王に仕立て上げたのは人間の方で、実は神だった。しかも現世の神……。

 しかもいつの間にか憑りついたか、自身の邪悪な心が増殖したか、闇の心は本体から消え去ったはず。

 あの闇を抹消できなかたのは気がかりではあるのだが。

 闇の心を退治した魔王を簡単に信じてしまうのも良くないことなのだが、つい信じてしまうのは本当に神たる力が備わっているということなのだろうか。

「い、いやぁ、結構本気だったような本気じゃなかったような、自分でもよくわからないっす」

 俺は神と聞いてから実は緊張していたと言っても過言ではないほど緊張していたのだ。

「おい! その、っすとか言うのやめろよ! ちゃんと敬語使えよ馬鹿野郎!」

「うっす。って、いやいやおいクラッチロウ、お前にとやかく言われる程お前の事は見上げていないんだよ!」

「なんだと、この野郎! この俺に特大ホームランかましやがって! 俺だってお前の事は許した覚えがないからな!」

「こっちだって、許される覚えなんかねーんだよ!」

 お互い胸ぐらを掴みながらにらみ合ったが、浴槽に浸かったスペンサーに咎められる。

「よさないかクラッチロウ。すまない月野ウタル。彼は真っ直ぐな男でね、口は悪いが悪気は無いはずなんだ」

「いえ、悪気もあります」

「コノヤロー!!」

 罵声を浴びせながら再びお互いの胸ぐらを掴み合う。

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