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僕たちは友達…(望編)
18.桜
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ෆ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ෆ
前に働いていた美容室のオーナーが
やる気があるなら戻って来い
そう言ってくれたけれど
もうそんな気にはなれなかった
本当に触れたい髪には
もう触れられないから
美容師の僕の人生は
これで終わり──
ෆ┈┈┈┈┈┈ ෆ ┈┈┈┈┈┈ෆ
退院して店を処分して
千遥がいなくなった部屋で
毎日を抜け殻のように過ごした
腹が減ったら強い酒を買って
飲めもしないのに呷るようになった
空腹に入れて一気に胃が熱くなり
すぐにフラフラになって吐いて
元々細かった僕は
どんどん痩せていった……
あんなに愛した女を
簡単に忘れるなんて出来ないよ
忘れたくなんかないよ……
絶対に何かあったんだ……
でも……
もう僕には何も出来ない
月末にはこの部屋も出なといけない
だけど……
もう僕の物しかなくなったとはいえ
この部屋を出てしまったら
千遥と過ごした思い出も
薄れてしまう気がして怖かった……
もしも千遥が戻って来たら?
なんて……
まだそんな事を考えて
涙が頬をつたう
「ちー、ちー …………ふっぅぅぅッ
うあ゙ぁあ ・゚・(´Д⊂ヽ・゚・ あ゙ぁあ」
どれだけ泣いたら
涙って枯れるのかな?
まだまだ暑い9月
たまに様子を見に来ていた母親が
干からびかけた僕を見て
「あんた、もう帰ってきぃ!」と
その日のうちに僕を連れて帰った
結局そのままアパートを引き払い
実家に戻ることになった
実家に帰ると
姉貴が3月に生まれた
姪の桜を連れて帰省していた
「おかえり、望オジちゃん
や~っと顔見せたわね……
また痩せて……爺さんみたいやんか」
「( ̄▽ ̄;)ハハッ爺さんか……確かにな」
「桜は……ほら、大きなったやろ?」
「1番忙しい時に産まれるんだもんな
動画は観たよ、でも会いたくても
会いに行けなかったんだよ……
桜~?望おじさんだよ~?」
「ぁ~ ぁあ~ …ゔぅ」
僕に手を伸ばす桜
「僕が分かるの?ちぃさい手だな…」
「うちら顔はそっくりやもんな
抱っこする?もう首は座ってるから…」
そう言うと僕の胸に桜を押し付ける
「ええっ! 待て!うわっ!
抱っこしたことないし!怖っ!」
ぎゅうっ
桜は小さな手で僕のシャツを掴む
「ぅ……結構力強いんだな」
「せやで~髪引っ張るから気ぃつけや」
「え……うわっ!いててててっ」
「あはは、ズルズル伸ばしてるからや」
お世話になった美容院のオーナーに
最後の日に切ってもらってから
“店が軌道に乗るまで”
と願掛けで伸ばしていた髪
「もう切らないとな……」
この日から 桜の体温に
少しずつ僕も癒されていった
ෆ┈┈┈┈┈┈ ෆ ┈┈┈┈┈┈ෆ
「姉貴、いつまでいんの?」
リビングのソファで膝に桜を乗せ
くつろいでいた姉貴に聞く
「うん?そろそろ帰んないとヤバいかな」
「……だよな、義兄さん独りだもんな」
「はい」
桜を僕に差し出す
僕は宝物を抱くように受け取る
「望あんた、しばらくうちに来る?」
「……ん?」
「桜が あんたの癒しになっとるんは
私もよう分かってんねんけど
もうそろ私も帰らんといかんしな
どうしたらいいか考えたら
あんたが来るしかなくない?」
「……姉貴の家か」
腕の中の桜を見つめる
日々成長する小さな命は
僕を確実に癒してくれていた
桜がいない日々を想像してみる
「寂しいよな…(ボソッ)」
「せやろ?旦那には言うてあるから
とりま1週間と思って来てみぃ?」
「うん」
キュッと桜を抱きしめた
「あーあー!」
嫌なのか、桜は腕の中で暴れる
「嫌がるなよぉ 桜ぁ… (´;ㅿ;`)」
「あははっ 嫌われんように
気ぃ付けや?オジちゃん」
ෆ┈┈┈┈┈┈ ෆ ┈┈┈┈┈┈ෆ
29歳の姉貴の夫は
姉貴の5つ上の34歳
商社に務めるサラリーマン
給料はいいみたいで
都心のマンションに住んでいる
「いらっしゃい望くん、大変だったね」
「義兄さん すみません
しばらくお世話になります」
「構わないよ
私がいない間は叶を
助けてやってくれると助かるよ」
忙しい義兄さんは
翌日早朝から海外出張に出掛けた
「出張なら帰って来なくても
よかったんじゃねぇの?」
「はは……見送りぐらいしないとね
ずっと実家にいたら嫌味言われるし」
「嫌味?
義兄さんってそんなタイプ?」
「人は見た目に寄らないわよ~」
「あぁ、まぁ……そうだな」
姉貴は両親の前でだけ方言で話す
理由は義兄さんが嫌がるから
とか言ってたっけ……
みんな色々あるよな……
「さて、掃除するから
桜 連れて散歩でも行って来てよ
近くに公園あるからさ」
「おっけ」
ෆ┈┈┈┈┈┈ ෆ ┈┈┈┈┈┈ෆ
前に働いていた美容室のオーナーが
やる気があるなら戻って来い
そう言ってくれたけれど
もうそんな気にはなれなかった
本当に触れたい髪には
もう触れられないから
美容師の僕の人生は
これで終わり──
ෆ┈┈┈┈┈┈ ෆ ┈┈┈┈┈┈ෆ
退院して店を処分して
千遥がいなくなった部屋で
毎日を抜け殻のように過ごした
腹が減ったら強い酒を買って
飲めもしないのに呷るようになった
空腹に入れて一気に胃が熱くなり
すぐにフラフラになって吐いて
元々細かった僕は
どんどん痩せていった……
あんなに愛した女を
簡単に忘れるなんて出来ないよ
忘れたくなんかないよ……
絶対に何かあったんだ……
でも……
もう僕には何も出来ない
月末にはこの部屋も出なといけない
だけど……
もう僕の物しかなくなったとはいえ
この部屋を出てしまったら
千遥と過ごした思い出も
薄れてしまう気がして怖かった……
もしも千遥が戻って来たら?
なんて……
まだそんな事を考えて
涙が頬をつたう
「ちー、ちー …………ふっぅぅぅッ
うあ゙ぁあ ・゚・(´Д⊂ヽ・゚・ あ゙ぁあ」
どれだけ泣いたら
涙って枯れるのかな?
まだまだ暑い9月
たまに様子を見に来ていた母親が
干からびかけた僕を見て
「あんた、もう帰ってきぃ!」と
その日のうちに僕を連れて帰った
結局そのままアパートを引き払い
実家に戻ることになった
実家に帰ると
姉貴が3月に生まれた
姪の桜を連れて帰省していた
「おかえり、望オジちゃん
や~っと顔見せたわね……
また痩せて……爺さんみたいやんか」
「( ̄▽ ̄;)ハハッ爺さんか……確かにな」
「桜は……ほら、大きなったやろ?」
「1番忙しい時に産まれるんだもんな
動画は観たよ、でも会いたくても
会いに行けなかったんだよ……
桜~?望おじさんだよ~?」
「ぁ~ ぁあ~ …ゔぅ」
僕に手を伸ばす桜
「僕が分かるの?ちぃさい手だな…」
「うちら顔はそっくりやもんな
抱っこする?もう首は座ってるから…」
そう言うと僕の胸に桜を押し付ける
「ええっ! 待て!うわっ!
抱っこしたことないし!怖っ!」
ぎゅうっ
桜は小さな手で僕のシャツを掴む
「ぅ……結構力強いんだな」
「せやで~髪引っ張るから気ぃつけや」
「え……うわっ!いててててっ」
「あはは、ズルズル伸ばしてるからや」
お世話になった美容院のオーナーに
最後の日に切ってもらってから
“店が軌道に乗るまで”
と願掛けで伸ばしていた髪
「もう切らないとな……」
この日から 桜の体温に
少しずつ僕も癒されていった
ෆ┈┈┈┈┈┈ ෆ ┈┈┈┈┈┈ෆ
「姉貴、いつまでいんの?」
リビングのソファで膝に桜を乗せ
くつろいでいた姉貴に聞く
「うん?そろそろ帰んないとヤバいかな」
「……だよな、義兄さん独りだもんな」
「はい」
桜を僕に差し出す
僕は宝物を抱くように受け取る
「望あんた、しばらくうちに来る?」
「……ん?」
「桜が あんたの癒しになっとるんは
私もよう分かってんねんけど
もうそろ私も帰らんといかんしな
どうしたらいいか考えたら
あんたが来るしかなくない?」
「……姉貴の家か」
腕の中の桜を見つめる
日々成長する小さな命は
僕を確実に癒してくれていた
桜がいない日々を想像してみる
「寂しいよな…(ボソッ)」
「せやろ?旦那には言うてあるから
とりま1週間と思って来てみぃ?」
「うん」
キュッと桜を抱きしめた
「あーあー!」
嫌なのか、桜は腕の中で暴れる
「嫌がるなよぉ 桜ぁ… (´;ㅿ;`)」
「あははっ 嫌われんように
気ぃ付けや?オジちゃん」
ෆ┈┈┈┈┈┈ ෆ ┈┈┈┈┈┈ෆ
29歳の姉貴の夫は
姉貴の5つ上の34歳
商社に務めるサラリーマン
給料はいいみたいで
都心のマンションに住んでいる
「いらっしゃい望くん、大変だったね」
「義兄さん すみません
しばらくお世話になります」
「構わないよ
私がいない間は叶を
助けてやってくれると助かるよ」
忙しい義兄さんは
翌日早朝から海外出張に出掛けた
「出張なら帰って来なくても
よかったんじゃねぇの?」
「はは……見送りぐらいしないとね
ずっと実家にいたら嫌味言われるし」
「嫌味?
義兄さんってそんなタイプ?」
「人は見た目に寄らないわよ~」
「あぁ、まぁ……そうだな」
姉貴は両親の前でだけ方言で話す
理由は義兄さんが嫌がるから
とか言ってたっけ……
みんな色々あるよな……
「さて、掃除するから
桜 連れて散歩でも行って来てよ
近くに公園あるからさ」
「おっけ」
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