大嫌いで大好きな君へ

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執着心

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全ての出会いは小学5年生の秋だ。

仲の良かった友達が引っ越し時間が有り余っていた。そんな時にクラスで1人だったアイツに声をかけたのが全ての始まりだ。
彼は面白いくらいの虚言癖持ちだ。しかも執着心が強く、いつも俺と帰ろうとしてくる。それが鬱陶しくて友達に頼んで嘘をついてもらうことも多かった。でも必ず俺がいることに気がつき一緒に帰ろうとする。俺はアイツが嫌いだ。いや大嫌いだ。同じ空間にいて息をすることですら吐き気がする。だけど同時に守ってやりたくなった。


中学に上がった。
彼は俺が育て上げた性格のままだ。
人見知りで、臆病で、自分のことも出来てないのに人を助けたがる。そんな彼を見てる興奮した。
部活はあえて別のものに入った。
彼は美術部。俺はテニス部に、テニスコートからは美術室がよく見える。かわいいアイツの顔が。
部活が違っても毎日一緒に帰ろうと、待っている。そんなアイツが嫌いすきだ。

アイツが友達と喧嘩したらしい。
良かった。そう仕向けて置いて。俺以外と親しく関わったから。それから彼は誰々にいじめられたやら、自傷の後を見せてきたりだとか。精神疾患だとか色々な話をしてきた。その度に俺に頼ってきて、泣きついてきて。愛らしかった。
毎回相談に乗り、彼には「俺が居ないと生きていけない」と言わせるほどだ。本当に馬鹿らしい。全部俺のせいなのに。
俺は自傷をした。そして彼に傷を見せる。
これは「お前のせいだ」と語りながら。
その時の顔は傑作だった。ぐちゃぐちゃの顔で泣きついてきて、「ごめんなさい」の連呼。最高だった。俺は彼が大嫌いだいすきだ。

中学3年になると皆受験生になり忙しくなる。
そんな中、彼は長年通っていた塾を辞めた。
「先生やだ」そう言っていた。そこまで人間不信を極めると、なんだか安心する。受験期の精神的な誘導の効果は絶大だった。おかげで高校は彼が俺と同じところに行くと言っていた。これでまた一緒だ。愚かで、馬鹿で、それでいて可愛らしいアイツの事が大嫌いだいすきだ。
俺の思惑にも気が付かないままのこのこと着いてきて。本当に愚かだ。人の人生を縛るのは今までに感じたことがないくらいに快感だった

無事高校に受かり、俺たちは卒業した。
彼のことは今後も絶対に逃さない。
ずっと俺だけのものだ。誰にも渡さない、触れさせない。今更誰になんと言われようと、離れない。


「ずーっと一緒にいようね。」



そして高校生になる。
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