生徒会長閣下は多忙につき、令嬢の私とはなかなか会ってくれませんが......

尋近

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期末試験

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学園祭が終わって約1ヶ月。
あの喧騒が嘘のように、校舎は静けさを取り戻していた。
華やかな装飾も撤去され、いつもの白い壁と机に戻った教室は、どこか頼りなく見える。
けれどその静けさの代わりに、今度は期末試験の緊張が校内を覆っていた。

廊下は普段以上に息を潜めたような空気で、誰もが答案のことだけを考えている。
私も例外ではなく、暗記した公式や要点を心の中で必死に繰り返しながら、教室へと歩を進めていた。

角を曲がった、そのとき――。
視界に入った姿に思わず足を止める。会長だ。
端正な立ち姿は、ただそこにいるだけで場の空気を支配してしまう。

「おはようございます」
自然に背筋が伸び、言葉とともに小さく一礼する。
会長は少し口元を緩め、穏やかな声で応えた。

「今日から期末ですね」
低く落ち着いた声音が、静まり返った廊下にやわらかく響く。

「……はい」
自分の返事が少し強張って聞こえるのは、緊張のせいだろうか。

そのとき、会長の瞳が真っ直ぐに私を捉えた。
「結果を楽しみにしています」

――ただそれだけ。
けれど、その一言は私の胸の奥まで鮮やかに届いた。
心臓がどくんと跳ね、呼吸が浅くなる。
努力を見てくれている。そう思わせてくれる言葉だった。

教室に戻ると、カミルが机に腰掛けて手を振ってきた。
「お嬢様、会長と話してましたね?」
「……少しだけ」
「“結果を楽しみにしている”なんて……会長って誰にでもあんなふうに言うんですかね?」
からかうような声色に、私は苦笑を返すしかなかった。

「……ていうか、あなた中等部でしょ。自分の教室に帰りなさいよ」
「えー、せっかくお嬢様に会いに来たのになあ」
悪びれもなく答えるカミルに、呆れ半分、諦め半分のため息が漏れる。

けれど心の奥では、答えを出せないまま――会長の横顔と、その視線を何度も反芻していた。

試験開始直前。
窓から差し込む柔らかな光が、再び彼の表情を蘇らせる。
あのときの会長の瞳は、確かに私をじっと見ていた。

ただの言葉以上に、その瞳は私の心を揺さぶっていた。
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