生徒会長閣下は多忙につき、令嬢の私とはなかなか会ってくれませんが......

尋近

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三人の邂逅

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放課後、私は生徒会室に書類を届けるために廊下を歩いていた。
扉の向こうからは人の声が漏れてくる。立ち止まって耳を澄ませると、聞き覚えのある二人の声――会長とカミルのものだった。

「それで、次の班の調整は――」
「任せてくださいよ。会長がいなくても俺が仕切りますから」
「頼もしいな」

いつになく楽しげな雰囲気に、少しだけ胸がざわめく。
けれど、ためらってばかりはいられない。ノックをして扉を開けると、二人の視線がこちらへ向いた。

「失礼します。書類をお持ちしました」

私が一礼すると、先に口を開いたのはカミルだった。
「おやおや、お嬢様。会長と仕事中に突撃ですか?」
わざとらしい声音に、思わず言葉を詰まらせる。

その隣で、会長は小さく笑った。
「クラリスなら歓迎だ」

さらりと告げられたその一言に、胸の奥が一気に熱を帯びる。
声の温度も、視線の深さも、どうしてこんなに私の心を乱すのだろう。

「会長、そんなこと言うとお嬢様が照れてしまいますよ」
「……っ! カミル!」
慌てて声を上げると、カミルは楽しそうに肩をすくめた。

会長もふっとした笑いを浮かべ、場の空気は和んだ。
けれど、胸の高鳴りだけは収まらなかった。

* * *

「じゃあ俺、さっそく交渉してきますんで」
「ああ、頼む」

カミルが書類を抱えて生徒会室を出ていくと、室内は急に静かになった。
会長と二人きり。さっきまでのざわめきが嘘のように消え、鼓動の音だけがやけに大きく感じられる。

気まずさを隠すように切り出した。
「そういえば、最近は外でのお仕事も多いようですが……」
「ああ、まあ、各所への対応がね」

会長はふっと言葉を濁し、書類に視線を落とす。
どこか言いにくそうなその横顔に、これ以上は聞いてはいけない気がした。
沈黙が流れ、胸の奥に切なさが広がっていく。

「……ご無理なさらないでください」
そう言うのが精一杯だった。

会長は一瞬だけ驚いたように私を見つめ、すぐに柔らかい笑みを浮かべた。
その微笑みに射抜かれるように視線を外せず、呼吸が浅くなる。

* * *

そのとき、生徒会室の扉が再び開き、カミルが戻ってきた。
「すみません会長、一つ確認事項を忘れてまして」
「ちょうどよかった。その件だが――」

二人が再び仕事の話を始めるのを聞きながら、私は慌てて立ち上がる。
「お先に失礼します」

廊下に出ると、背中にまだ熱が残っていた。
――あの一瞬の笑みだけで、胸がこんなにも揺さぶられるなんて。
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