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外出の理由
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「お嬢様、また会長の外出が続いていることが気になるんですか?」
放課後の生徒会室で、書類をまとめながらカミルが声をかけてきた。
私は一瞬手を止め、曖昧に笑う。
「……別に、気にしてるわけじゃないけど」
「そうですか? ずっと机の端を指で叩いてましたよ」
彼はからかうように目を細める。
「だったら理由を知ってるんでしょう?」
思わず問いかけると、カミルは肩をすくめて答えた。
「うーん……それは僕から言うべきじゃないですね。説明は会長から聞くほうがいい」
はぐらかされたと分かっても、深追いできなかった。
知りたい気持ちが膨らんでいく一方で、胸の奥に小さな棘のようなもやもやが残る。
* * *
その日の夕方。廊下を歩いていると、向こうから会長が現れた。
堂々とした姿に、すれ違う生徒たちが思わず道を開ける。
今なら――聞けるかもしれない。
鼓動を押し殺すように、思い切って口を開いた。
「……また、今日もこれから外出ですか?」
会長は一瞬だけ立ち止まり、私を見た。
深い藍色の瞳が、何かを伝えようとしたように思えた。
けれど返ってきたのは言葉ではなく、柔らかな、けれどどこか意味深な微笑みだけ。
そのまま彼は歩き去ってしまった。
残された私は、その背中を見送りながら胸の奥がじんと痛むのを感じていた。
――勇気を出して尋ねたのに、答えはもらえなかった。
その事実が、思っていた以上に心を揺さぶった。
きっと、婚約者に関わることなのだ。
公にできないプライベートな事情だから、私に説明してくれるはずがない。
気づけば、夕陽が差し込む廊下は人影もまばらになっていた。
私は慌てて教室へ戻り、机の上に置きっぱなしにしていた鞄を肩にかける。
窓の外では部活動の掛け声が響き、どこか遠い世界の音のように聞こえた。
階段を下りながら、いつもの日常がまた始まるのだと自分に言い聞かせる。
授業の予習も、課題も、明日の支度も――やらなければならないことは変わらない。
それでも、あの微笑みの意味だけが、心の中で静かに波紋を広げ続けていた。
放課後の生徒会室で、書類をまとめながらカミルが声をかけてきた。
私は一瞬手を止め、曖昧に笑う。
「……別に、気にしてるわけじゃないけど」
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彼はからかうように目を細める。
「だったら理由を知ってるんでしょう?」
思わず問いかけると、カミルは肩をすくめて答えた。
「うーん……それは僕から言うべきじゃないですね。説明は会長から聞くほうがいい」
はぐらかされたと分かっても、深追いできなかった。
知りたい気持ちが膨らんでいく一方で、胸の奥に小さな棘のようなもやもやが残る。
* * *
その日の夕方。廊下を歩いていると、向こうから会長が現れた。
堂々とした姿に、すれ違う生徒たちが思わず道を開ける。
今なら――聞けるかもしれない。
鼓動を押し殺すように、思い切って口を開いた。
「……また、今日もこれから外出ですか?」
会長は一瞬だけ立ち止まり、私を見た。
深い藍色の瞳が、何かを伝えようとしたように思えた。
けれど返ってきたのは言葉ではなく、柔らかな、けれどどこか意味深な微笑みだけ。
そのまま彼は歩き去ってしまった。
残された私は、その背中を見送りながら胸の奥がじんと痛むのを感じていた。
――勇気を出して尋ねたのに、答えはもらえなかった。
その事実が、思っていた以上に心を揺さぶった。
きっと、婚約者に関わることなのだ。
公にできないプライベートな事情だから、私に説明してくれるはずがない。
気づけば、夕陽が差し込む廊下は人影もまばらになっていた。
私は慌てて教室へ戻り、机の上に置きっぱなしにしていた鞄を肩にかける。
窓の外では部活動の掛け声が響き、どこか遠い世界の音のように聞こえた。
階段を下りながら、いつもの日常がまた始まるのだと自分に言い聞かせる。
授業の予習も、課題も、明日の支度も――やらなければならないことは変わらない。
それでも、あの微笑みの意味だけが、心の中で静かに波紋を広げ続けていた。
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