底辺Dランクのおっさんが拾った剣が女子っぽいんだが、魔剣で悪役だった。

猫又

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魔剣を奪われるおっさん

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「嘘……じゃないかもよ」
 とニールが言った。
「はあ? ニール、何言ってんだ?」
 ニールは俺の背中の剣を見た。
「だって、おっさんの背負ってる剣、魔剣だろ。凄い魔力を持ってるのを感じる」
「は? 魔剣?」
「そうだ。あんな大きな魔剣……見た事ない。それに凄まじい魔力を感じる」
 ニールの言葉にケントは俺を見た。
「魔剣? おっさん、それ寄越せ。おまえみたいな底辺が持ってていい剣じゃねえ。俺みたいな強え剣士が持つに相応しいだろ。寄越せ!」
 ケントは俺の方へ手を出した。
「さっき魔剣に拒否されて吹っ飛ばされたの忘れたのか」
 そう言い返すとケントの顔が赤黒くなった。
「うるっせえ! お前みたいな底辺が魔剣なんぞ使いこなせるわけもねえ! 渡せ!」
 ケントが背中に背負った剣を取り上げようとして、また吹っ飛ばされるだろうと思ったが、剣のヴァレーリオは何の反応もしなかった。
 ケントはするりと背中の鞘から剣を抜き出して、格好良く構えた。
「すっげー、この重圧感、この刀身の鋭さ! 俺が持つに相応しい!」
 とケントが言った。
 ヴァレーリオの刀身は魔力を纏った漆黒で、刃先は見るだけでぞっとする。
 彼女は自ら動き、魔力を発動させる事が出来る。
 凄まじい威圧感と、美しさ、目を離せば次の瞬間に切り捨てられてしまうかもしれない危機感。ぞっとする恐怖と冷酷、生み出したのは神か魔王か、素晴らしく魅力的な魔剣。 誰もが一目で虜となる。
 そこにいた全ての物がケントが振り上げたヴァレーリオを見上げ、その美しさ、その魔力の高さにため息をついた。
 ケントは自慢げな顔で周囲を見渡し、そして俺を振り返る。
「えー。Aランクパーティの剣士が泥棒とか」
 と俺は言った。
 ケントはむっとした顔で、俺を睨んだ。
「おっさんみたいな役立たずが持つにはもったいねえ魔剣だ! 俺に相応しいだろうが!」
「相応しいかどうか知らんが、無理矢理奪い取って行くのは盗賊だろ。ここに来た時点で、剣もブラッドリーキングベアの毛皮の俺の所持品だ。金銭で売ってくれと打診するならまだしも、似合うとか似合わねえとか難癖つけて奪いとって、それが是とされるのがここのギルドのやり方か?」
 と俺は言った。
 ケントもニールもミントも若くして腕が立つ冒険者だ。
 自分らの言い分を大きな声で通すのは彼らの得意だが、穴がない事もない。
 ただいつも多勢に無勢、ランクの高い冒険者の言い分がまかり通る世の中でもある。
 かといってヴァレーリオは俺の剣でもないので、俺にもこの剣をどうこうする権利はない。
 眠れる場所を探す約束だが、それも俺が勝手に言い出した事なので、魔剣ヴァレーリオがケントを選ぶならしょうがない。
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