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家は半焼で近所への延焼も逃れたが、1人眠っていた愛衣だけが命を落とした。
その時、夫は義母と理沙を連れて買い物に出ていて無事。
3歳の子を一人残して行かなければならないほど大事な買い物だったのか!
と夫を問い詰めたが、愛衣の誕生日プレゼントを買いに行ったと言う。
「どうして……どうしてよ! 買い物くらい連れてってあげれば良かったじゃない! それか別の日でも良かったんじゃないの?! 子供を残して行く?!」
私は夫に詰め寄り、夫は黙ったままだった。
「あんただって子供を残して出かけてたじゃないの!」
と言ったのは姑だった。
「愛衣を見ててねってお願いして、達雄さんは承諾したじゃないですか! それにお義母さんも理沙さんもいたんでしょう? どうして火が上がったんですか!」
「それは……」
姑は不満げな顔で黙った。
「こんなお葬式の場でぇ、言い争うなんて愛衣ちゃんがかわいそうですぉ」
と理沙に言われて私達は黙った。
私は目の前の小さな棺を見た。
「美咲さんもぉ、達雄兄さんを責めるのは違うんじゃないですか? 実際、あなたはその場にいなかったわけですし」
理沙が夫の隣に座っていた。
「あ、そうそう、これ、棺に入れてあげようと思って」
買い物袋から出したのは子供服だった。
フリルとリボンがたくさんついたピンクのスカートに、お姫様みたいなワンピース。
「やめて、いりません!」
棺には私が買った愛衣のお気に入りの玩具や洋服を入れてある。
他人が選んだ物など入れたくなかった。
私が理沙の手からそれを払い落とすと、ぱしっと音がした。
「あなた……」
「理沙のせっかくの厚意を!」
夫が私の頬を軽く叩いた音だった。
「あー、いいの、達雄兄さん、美咲さんは今は混乱してるだけだからぁ」
仮にも自分達の過失で子供の命が消えたのに、この人達は何を言ってるんだろう。
夫は憔悴していたが、姑と理沙は綺麗に身支度したブラックフォーマルだった。
以前の物は火事で焼けて使い物にならないと、今朝早くから買いに走った品だ。
この二日間、私は焼け残った屋根の下で過ごしたが、夫と姑は近所の理沙の家でくつろいだそうだ。家族ぐるみのつきあいらしいから、是非、家に来て、と理沙が言ったそうだ。
私は断った。
そんな私の態度に姑は怒り、夫も「意地をはるな」と言った。
ああ、信じられない。
愛衣との思い出を語るでもなく、彼らは理沙の家でゆるりと過ごしたのだ。
そして愛衣との最後の別れの時に、私は夫に頬を打たれるのだ。
「ちょっと! 達雄君! 酷いじゃないか。どういうつもりで美咲をぶったんだ? ええ?」
兄がやってきて抗議してくれたが、
「どういうって、こんな場で理沙の厚意を踏みにじったんですよ?」
と夫が言った。
理沙はにやりとして、姑もふんっという風な顔で、
「貧乏人が余計な口を挟んでくるんじゃないわよ? これはねえ、躾けよ! 達雄の顔に泥を塗ったんだから! これだから親のない女は嫌なのよ! 常識ってもんを知らないんだから!」
と言った。
その時、夫は義母と理沙を連れて買い物に出ていて無事。
3歳の子を一人残して行かなければならないほど大事な買い物だったのか!
と夫を問い詰めたが、愛衣の誕生日プレゼントを買いに行ったと言う。
「どうして……どうしてよ! 買い物くらい連れてってあげれば良かったじゃない! それか別の日でも良かったんじゃないの?! 子供を残して行く?!」
私は夫に詰め寄り、夫は黙ったままだった。
「あんただって子供を残して出かけてたじゃないの!」
と言ったのは姑だった。
「愛衣を見ててねってお願いして、達雄さんは承諾したじゃないですか! それにお義母さんも理沙さんもいたんでしょう? どうして火が上がったんですか!」
「それは……」
姑は不満げな顔で黙った。
「こんなお葬式の場でぇ、言い争うなんて愛衣ちゃんがかわいそうですぉ」
と理沙に言われて私達は黙った。
私は目の前の小さな棺を見た。
「美咲さんもぉ、達雄兄さんを責めるのは違うんじゃないですか? 実際、あなたはその場にいなかったわけですし」
理沙が夫の隣に座っていた。
「あ、そうそう、これ、棺に入れてあげようと思って」
買い物袋から出したのは子供服だった。
フリルとリボンがたくさんついたピンクのスカートに、お姫様みたいなワンピース。
「やめて、いりません!」
棺には私が買った愛衣のお気に入りの玩具や洋服を入れてある。
他人が選んだ物など入れたくなかった。
私が理沙の手からそれを払い落とすと、ぱしっと音がした。
「あなた……」
「理沙のせっかくの厚意を!」
夫が私の頬を軽く叩いた音だった。
「あー、いいの、達雄兄さん、美咲さんは今は混乱してるだけだからぁ」
仮にも自分達の過失で子供の命が消えたのに、この人達は何を言ってるんだろう。
夫は憔悴していたが、姑と理沙は綺麗に身支度したブラックフォーマルだった。
以前の物は火事で焼けて使い物にならないと、今朝早くから買いに走った品だ。
この二日間、私は焼け残った屋根の下で過ごしたが、夫と姑は近所の理沙の家でくつろいだそうだ。家族ぐるみのつきあいらしいから、是非、家に来て、と理沙が言ったそうだ。
私は断った。
そんな私の態度に姑は怒り、夫も「意地をはるな」と言った。
ああ、信じられない。
愛衣との思い出を語るでもなく、彼らは理沙の家でゆるりと過ごしたのだ。
そして愛衣との最後の別れの時に、私は夫に頬を打たれるのだ。
「ちょっと! 達雄君! 酷いじゃないか。どういうつもりで美咲をぶったんだ? ええ?」
兄がやってきて抗議してくれたが、
「どういうって、こんな場で理沙の厚意を踏みにじったんですよ?」
と夫が言った。
理沙はにやりとして、姑もふんっという風な顔で、
「貧乏人が余計な口を挟んでくるんじゃないわよ? これはねえ、躾けよ! 達雄の顔に泥を塗ったんだから! これだから親のない女は嫌なのよ! 常識ってもんを知らないんだから!」
と言った。
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