わけあり乙女と純情山賊

猫又

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キングゴードン

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 リリカはスターキングの根城に舞い戻ってきていた。
 ここはガイツの所ほどアットホームでもないし、居心地のいい場所でもなかった。
 古い廃墟となった城跡に根城を構えているが、どうにも嫌な雰囲気である。
 粗野な男達がくたびれた顔で賭事をしたり、うろうろと俳徊している。辺りには酒瓶が転がり、腐った獣の肉が散らばっていた。
 さらわれてきた女達からは日に日に品が失われていき、誰が見ていようが所構わずに抱き合い喘ぎ声を上げるのだった。
 リリカは馬から飛び下りて城の中に入って行った。
「キングゴードンは?」
 暗がりに寝っ転がり、危うく踏みかけた男に聞く。
「お頭なら、さっき戻ってきたぜ。奥にいなさるだろうよ」
 リリカはその男をまたいで、キングゴードンの寝所に顔を出した。
「リリカか」
「ええ」
 リリカは入り口でキングゴードンを眺めた。
 やけに白い肌で、やけに太っている。ぶよぶよとした肉がたるんでゴードンが動くたびにぷるるんと震える。頭髪は少なく、頭のてっぺんははげあがっているが、少しだけのばした後ろの髪をひっつめている。
 ゴードンは艶のない毛皮に寝っ転がり、砂糖菓子を食べていた。
 指先に絡まる甘い砂糖をぺちゃぺちゃと舐めながら、満足げな顔をしていた。
 リリカは吐き気を覚えた。こんな男に抱かれるのは嫌だ。砂糖を舐めるようにリリカの身体を舐めまわすだろう。ぞっとする。鳥肌が立つ。だが、そうでもしなければゴードンを殺すには至らないだろう。
 この男にはすきがない。恍惚状態で菓子を食っていても、必ず手の届く場所に剣を置いているし、また剣の腕もすさまじく強い。太っているわりには動作も俊敏で、軽やかなフットワークをする。何度かゴードンの戦いを見たリリカにはゴードンの凄さは充分に理解していた。剣の技量ではガイツと五分五分という噂もうなずける。
「リリカ、今夜は宴会だぞ」
「何かいい事でもあったの?」
 リリカはこの醜い男をなるべく見ないようにしながら聞いた。
「ガイツの野郎が大馬車を襲うという噂だ。大馬車には都の警備兵がわんさかついてるんだ。いくら奴でも苦戦するだろうよ。双方相打ちで弱まった時に俺達が息も絶え絶えのガイツをぶっ殺しに行くって寸法だ。手はずはつけてある。だから、今夜は宴会だ。皇太子の貢物だ。かなりの財宝が手に入るだろうよ」
「人のお宝の横取りなんてださいわね」
「ま、そう言うな。何せ人手が足りないんでな」
「あんたがすぐに殺しちゃうからじゃん」
 ゴードンは、げはげはと下品な声で笑った。
「手下の者はもう出発してるんでな、俺ももうすぐ出発しなけりゃならねえ。リリカ、こっちに来い」
 ゴードンの太った指が虫のように蠢いて、リリカに手招きをした。
 その手を見て、リリカはのどの奥がおえっとなるのを必死にこらえた。
 ガイツはゴードンの策略をまだ知らないだろう。ここでゴードンの息の根を止めてから知らせに走っても間に合うだろうか? ゴードンがいなくても手下は略奪を実行するだろうから、一刻も早く知らせに行ったほうがいい。
 せめて夜の闇に紛れてゴードンを殺そうと思っていたが、そんな暇はなさそうだ。
「リリカ! こっちへ来いと言ってるだろうが!」
 ゴードンの怒鳴り声にリリカの身体がびくっとなった。
 それでも仕方がない。リリカは腰にさした剣を手で確認してからゴードンの方へ足を進めた。
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