わけあり乙女と純情山賊

猫又

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勇猛

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 ガイツはリリカに二時間遅れでゴードンの城にたどり着いた。
「ここか……うわっ、汚ねえなあ」
 人手がやけに少なく、なんなく侵入もできた。
「おかしいな」
 ガイツは首をかしげながら、壊れかけた塀から中を覗いた。
 布切れだと思ったものが女がだらしなく寝そべっていたものだったりする。
 いつまでも覗いていても仕方がないので、塀を乗り越えて中に入る。
「おい! ゴードンの豚野郎はどこだ?」
 寝っ転がっている男を足で蹴り飛ばして聞く。
「あ? お頭なら奥にいるとさっき言っただろう……? ああ! お前!」
「うるせえ! おとなしく寝てやがれ!」
 ガイツはその男の頭を踏みつけた。男がぐえっと叫んで気を失った。
 その声に何人かが顔を出した。
「ガ、ガイツ! 貴様! こんな所にまで来やがって! おい! 仲間を集めろ!」
 ばたばたと足音がして、また男が増えた。
「ひい、ふう、みい……十人か、どうしてこんなに少ないんだ? ま、その方がありがたいがな」
 ガイツは背中から諸刃の大刀を引き抜いた。その巨大な大刀はぶんっと風をきって、男達にぎらりと凄味を見せた。
「さて、死にたい奴からかかってきな!」
 ガイツが叫んだ。
「なめやがって!」
 一人目がガイツに切りかかったが、その瞬間に男の胴体と首が離れて飛んだ。
「わわ!」
 二人目と三人目は躊躇しながら切りかかった。
 くるくると大刀を器用に操りながら、ガイツはさっと二人を切り裂き、四人目は頭を半分、はぎ落とされて息絶えた。
「おい、リリカって女がここにいるだろう!」
「リリカ……はお頭の所にいる……ぜ」
 五人目は震えて剣を取り落とした。
 ガイツはその男を殴り飛ばした。
「ゴードンはどこだ? その奥か?」
 通路をふさぐようにして立っていた六人目と七人目は剣ではなく、鎖がまを手にしていたがガイツの両手にその鎖を投げつけ、それはガイツにくるくると巻き付いた。
「何だ、こりゃ」
 ふんっとガイツは両腕に力を込め、思い切り引っ張った。
 鎖に引きずられた男達がガイツの足元によろけ転がる。
 ガイツは馬鹿にしたような目で彼らを見たが、
「お前ら……弱いだろう? 悪い事は言わんから、さっさと逃げろ。な? それとも死に急いでるのか?」
 と睨んで言った。
 ガイツの殺気のこもった目にひいっと悲鳴を上げて二人はすたこら逃げて行った。
 残った三人はさっとゴードンの寝所に走りこんで、
「お頭! 大変だ! ガイツが乗り込んで来やがった!」
 と叫んだ。 
「何だと?」
 今まさにリリカの衣服をはぎ取ろうとしていたゴードンが顔を上げた。
 リリカはゴードンの下で歯を食いしばっていたが、
「ガイツが?」
 とつぶやいた。
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