Dark world~Adventurers~

yamaken52

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第十七話 祭りの前の人々

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オリディオール島中央にある町、レイアーク。

そろそろ春の豊穣を祝うための祭り、「ヴァルプルギスの夜」が始まるため、人々は忙しそうにその準備に追われていた。

飲食店はその日、特別の料理を出すとかで、その準備を既に始めているようだった。

食材集めに奔走している姿があった。

また、他のお店は飲食店と露店以外は閉まり、祭りを楽しむ。

そして、特に大変なのが町の中央にある広場に設置される、かがり火であった。

辺りにある建物よりも、高く積み上げるのが毎年の恒例となっていた。

そのため、ラオルバの木が大量に運ばれ、人々は必死になって汗を掻きながら木材を組んでいた。

そして、様々な飾りつけをしている人々もいて、町は普段に比べて活気付き始めていた。


ここは、レイアークの町の中。

浅黒い肌に銀髪の髪の女の子が、町の入り口付近にある、朝市の露天に並んでいる品物を見ていた。

(……あ、なんか新しい野菜みたいなのがある!どんなのだろ……)

その人物は、それが気になったのか、露天の店主に尋ねていた。

「おじさん、それって何?」

「ん、これかい?」

「うん、それ」

それは、やや赤みがかった細く柔らかい枝に、いくつも小さな黄緑色の葉を付けたものだった。

「こりゃあ、あれだよ。マジョラムって名のハーブさ」

「ハーブなんだ。どんな香りがするの?」

「ほれ、嗅いでみな」

店主は、彼女にハーブを一本渡した。

「ありがとう………」

そして香りを嗅いだ。

(ちょっと、スパイシーですっきりとした感じの香りね……ふーん……)

何の食材に合うか、彼女は考えた。

(この香りだと……そうだなぁ……)

「お嬢ちゃん、どうする、これ買うかい?西の大陸で発見されたっちゅう話だ」

女の子は枝をくるくる回しながら匂いを嗅ぎ、考えていた。

「へぇ……そうなんだ……」

そして、彼女は何か閃いたようだった。

「―――そうだ!これとチーズを合わせたらいいかも!おじさん、これ頂戴!」

「おう!まいどありー!」

彼女は、お金を渡すとマジョラムを受け取った。

「うん、それじゃ、また来るねー!」

そして、店を後にした。

(良い物買っちゃった……ふふ……エル先輩と試してみよっと!)

彼女は、デュラン・マーベリックの妹のシュリン・マーベリックだった。

シュリンは良く、この朝市を利用していた。

最近は特に、西のエルフィニア大陸からもたらされる、新しいハーブなどに興味が湧いているようだった。

(パンに挟んで……お肉にもいけそうかも!)

色々、レシピを考えているようだった。

そして、気分良く歩いていると、ある人物が視界に入った。

知っている人物だった。

その者は、燃えるような赤い髪を持った青年だった。

そして、地面に這いつくばり、何かを探しているようだった。

「くそっ!どこにいきやがったんだよ……」

シュリンは静かに、その男に近づいた。

そして、彼女の影が赤い髪の青年の視界に入った。

彼は地面に這いつくばるのを止め、シュリンの方へ顔を向けた。

「……ん?」

最初に話しかけたのは、シュリンだった。

彼女は呆れた表情で、その男に話しかけていた。

「……何やってんのよ……バカ兄貴」

そう呼ばれた男の名は、彼女の兄のデュラン・マーベリックだった。

彼は土のついた両手を軽く叩きながら、渋々立ち上がった。

「……久しぶりの再開だってのに、随分な言い方じゃねぇか、シュリン」

「こんな町の真ん中で、そんなことしてたら、そう言われても仕方がないでしょ、何やってんのよ!」

「うるせー。金を落としちまったんだよ。しょうがねえだろうが!」

「恥ずかしいわ……ほんと……」

「お前な……少しは成長してるかと思ったが、ほとんど変わってねぇな……もっと、大人になってるかと思ったのによ。もう少し上品に言いやがれってんだ!」

「それは、そっちもでしょ……それに、何で兄貴が……」

その時、パールティールの髪の色をした女性が、デュランに声をかけてきた。

その女性は手に一枚の銀貨を持ち、両頬は砂がつき、汚れていた。

「デュラン!こっちにありました!」

「おい、エリーシャ……なんでそんなに汚れているんだよ……」

その女性は、人魚の娘のエリーシャだった。

どうやら2人は、レイアークの町にたどり着いていたようだった。

そしてデュランは、自分のポケットに入っていた小さな布で彼女の頬を拭いていた。

「もう少し、お前は身だしなみを考えろ……」

「だってこれ、レンガの壁の隙間に入ってましたよ。なかなか取るの大変だったんです」

そんな2人を見た、シュリンは一瞬驚き、そしてすぐに意地悪な表情になり、兄に話しかけていた。

「あら、あらあら!そちらの方はどなたかしら? お・に・い・さ・ま!」

「てめぇ、シュリン!こんな時だけ言いやがって……」

シュリンは、紙に包まれたハーブの茎の部分を握り締めながら、言い返していた。

「何よ!そっちは、実家の宿屋が大変なときに、こんなところで女の人と遊んでるんじゃない!お母さんに言いつけてやるんだから!」

そう言われたデュランは、ややうろたえながら、話していた。

「おい、待て。お袋には許可は貰ってあるんだ」

シュリンは疑いの眼差しを兄に向けた。

「ほんとにぃー?」

「本当だ!」

「じゃあ、その女の人は?」

「こいつは……いや、この人は俺の依頼主だ。だから俺は今クエスト中なんだ」

「ふう~ん……」

シュリンは、まだデュランの言葉を信用していないのか、先ほどと変わらぬ表情のまま、今度はエリーシャに目を向けた。

(見たことない髪の色……それに優しそうな感じの人……)

シュリンに見つめられたエリーシャは、何が起こっているのか理解できていなかった。

そして、シュリンのことを、デュランに聞いていた。

「……あのデュラン、この子は?」

「……ああ、こいつは、俺の妹のシュリンだ。この町で魔道師になるために、勉強しているんだ」

それを聞いたエリーシャは、両手を合わせて驚き、そして喜んでいた。

「まあ!デュランに妹さんがいたんですか!あたしは、エリーシャって言います。よろしくお願いします。可愛い妹さんですね!」

シュリンは、兄が言っていることが本当なのか信じることができなかった。

(なんの仕事やってるんだろ……こんな女の人連れて……それに、顔なんか拭いて……ようし!……)

シュリンは、思い切ってエリーシャにも尋ねることにした。

「……あの、エリーシャさん。兄とは、どういう関係なんですか?」

「デュランと私ですか……えっと………人には言えなくて……それから……離れられない関係です!」

それを聞いた赤毛の青年は、慌てて人魚の娘を黙らそうとした。

「おい、エリーシャ!その言い方は……」

エリーシャの言うとおり、デュランと彼女は、見えない魔法の制約で結ばれていた。

しかし、他人が聞けば、違う聞こえ方になってしまっていたが、人魚の娘にはそれが分からないようだった。

それを聞いたシュリンは、しばらく目と口を開け、驚き固まっていた。

「あ……ああ……」

そんな妹の姿を見たデュランは、片手で顔を覆っていた。

「あっちゃー……(完全に誤解させたぞ、こりゃあ……)」

しばらくして、少し気持ちが落ち着いたのか、シュリンは兄に話しかけた。

「ふ、ふーん、そうなんだ……良かったじゃない……兄貴ってそういうの疎いと思ってたし……」

デュランは、必死に弁明しようとした。

「お、おい、シュリン。これは、違うぞ……これはだな」

「なーにが違うって言うのよ!やっぱり、遊んでるんじゃない!」

デュランは、エリーシャが人魚で、彼女の住んでいる場所を助けるためのクエストだと言いたかった。

しかし、言ってしまえば、エリーシャは死んでしまうため、絶対に言えない。

そのジレンマに、つい、カッとなってしまったのか、声を荒げた。

「違うっつってんだろうが!」

だが、そんな兄を見てもシュリンはなれているのか、怯むことなく、すぐに返していた。

「絶対に、お母さんに言ってやるんだから!」

そして2人は睨み合った。

その時、エリーシャが珍しく怒りを込めて、デュランに話しかけた。

「デュラン!兄は妹に、優しくするものです!」

突然のことで驚いたデュランは、表情を緩めた。

「なんだよ、急に……」

「私にも、兄がいることは知ってますよね?私の兄は、無口でしたけど、いつも優しくしてくれました。それが兄のすることだと思います。だから、デュランもシュリンには、優しくしてあげてください!」

シュリンは、エリーシャに近づいた。

「エリーシャさん……良いお兄さんをお持ちなんですね……あたしなんて……」

そして、デュランを一瞬だけ見た。

「てめぇ……」

エリーシャは、近づいてきたシュリンの頭を撫でていた。

「大丈夫ですよ、シュリン。デュランは、ああ見えても、頼りになる人です!」

そんな2人を見た、デュランは深くため息を付いた。

「はあぁー……。もういい、好きにしやがれってんだ……」

会話の中からシュリンは、エリーシャが、変な人物ではないことを悟ったようだった。

(ちょっと、変わってる所もあるみたいだけど……良い人みたい……じゃあ、ちゃんとした仕事なのかな?……だけど、言えない事って……)

なんとか気を取り直した彼女は、顔を上げ、兄に尋ねた。

「兄貴、この町にいるの?それとも、西にでも行くの?」

「……ん、しばらく、ここの大図書館で少し調べものだ」

「大図書館で?……ふーん(色々な本があるから、何かはわからないなぁ……)」

そして、エリーシャが楽しそうに会話に入ってきた。

「あと、バード(吟遊詩人)の試験も受けるんです!」

「―――え、エリーシャさんが?」

デュランが思わず、エリーシャに小声で注意していた。

「おい、エリーシャ。あんまり話すのはよせ」

それを聞いたシュリンは、再び兄を睨んでいた。

「なによー!少しくらい話してもいいじゃない、ケチッ!」

エリーシャは、デュランに近づき小声で話した。

「デュラン、彼女は大丈夫ですよ、私には分かります」

そして、シュリンの方へ顔を向けた。

「シュリン、私、歌が得意なんです。だから、受けてみることにしたんです!」

「へぇー。ちょっと聞いてみたいかも」

「それはまあ、また今度な」

そしてシュリンは、突然、何かを思い出した。

「―――あ、そろそろ、授業だから行くわ。兄貴、この町にしばらくいるなら、食事ぐらいしてあげてもいいわよ。お母さんの事も聞きたいし」

「ああ……わかった」

そして、走り去ろうとしたシュリンは、何かを思い出したのか、立ち止まった。

そして振り返えると兄に話しかけていた。

「あ、そうだ、エリーシャさんに変なことしたら、承知しないわよ、いい?」

そう妹に言われたデュランは、顔をしかめた。

「……こいつ……うっせぇ!とっとと行きやがれ!」

そんなデュランの態度を見たシュリンは、兄と同じように顔をしかめ、舌を出した。

「べーっだ!」

そして、エリーシャには笑顔で話していた。

「それじゃ、エリーシャさんもまた!」

「はい、シュリン、また!」

どうやら、2人はなぜか自然に打ち解けているようだった。

去っていくシュリンの背中を見ながら、エリーシャは感想をもらした。

「元気で可愛らしくて、しっかりした妹さんですね」

デュランは、しかめっ面のまま、エリーシャに話していた。

「うるせぇだけだぜ……」

しかし、すぐに、穏やかな表情になっていた。

(だけど……元気にやってるみたいだな……失踪したあいつのことを思って、まだ泣いているときもあるのかな……)

デュランは、実家の宿屋で共に生活していた頃を思い出していた。

そして自分の部屋で父親が居なくて寂しくて、たまに人知れず泣いていたシュリンの事を思った。

(あるんだろうな……あいつは、そういう奴だからな……)

デュランは不甲斐無い自分自身と、そして父親に対して、怒りを感じた。

(……くそっ!シュリンに会ったら、宿屋に客が戻ってきたことや元気になったお袋の事を話して、安心させてやろうと思ってたのによ……何やってんだ俺は!……エリーシャの言う通り、俺は兄としてもっと、ちゃんとするべきだったんだろうな……くそっ……しかし、あの野郎はやっぱり許せねぇ!)

シュリンの居なくなった方角を拳を握り締め、睨みつけるように見ていたデュランの顔を見たエリーシャは驚き、不安な表情になり、尋ねていた。

「そんな顔をして……どうかしたんですか、デュラン?」

デュランは彼女の声を聞いたことで、父への強い思いから解放された。

そして、普段通りの表情に戻っていた。

「……なんでもねぇ。ちょっと昔を思い出しただけだ……」

「そうですか……そう言えば、デュランとシュリンってあまり似てませんよね?」

エリーシャの言うとおり、デュランとシュリンは、容姿があまり似ていなかった。

特に違うのは、髪の色だった。

彼女の問いに、デュランは答えた。

「……ん、ああ、よく言われるんだが、あいつは父親似らしいんだ。んで、俺はお袋に外見が似たんだと……なぜか、はっきりと分かれたって言ってたな……だから、ちゃんと血の繋がった兄弟だぜ」

「そうなんですか……」

「それより、俺たちも調べに行こうぜ!」

「はい!」

デュランとエリーシャは、ダゴンやハイドラの事などを調べるために、大図書館へ向かった。

そして、学院に向かっているシュリンもまた、兄のことを考えていた。

(兄貴は、相変わらずだったけど、冒険者を再開したってことは、お母さん元気になったんだろうな……良かった……だけど、あたしもあんな乱暴なのじゃなくて、もっと優しい人が良かったなぁ……)

そしてシュリンは、自分にとって姉のような、優しい人物の事を思い出した。

(エル先輩、そろそろ帰ってくるはずなんだけど……何も起こってないよね?……クフィンさんとカーリオさんの2人もいるし……とにかく無事で……)

シュリンは、エルディアの事を思いながら、学院へ向かっていた。

ニーフェの森から帰還したエルディアたちは、レイアークの町に無事たどり着いていた。

町に着いたのは、昼食前ぐらいの時間だった。

疲れた表情で、3人はレイアークの町の入り口にいた。

「やっと着いたわ……」

「そうだな……」

「すぐにでも、ベッドで眠りたい気分です……」

「カーリオ、報告だけはしないと……」

「エルディアの言う通りだ。カーリオ、少しは我慢しろ。報告が終われば報酬がもらえるはずだ」

それを聞いたカーリオは、元気を取り戻していた。

「……そうでしたね……じゃあ、行きましょう!」

そんなカーリオを見たクフィンは、彼を睨みつけていた。

「現金な奴め……」

エルディアは、町を見ながら、なぜか懐かしい気分になっていた。

(色んなことがあったからかな……長い間旅に出ていたみたいに感じるわ……)

バルガの魔道師が、エルディアに声をかけてきた。

「それじゃ、学院に行ってラドラー学院長に報告しに行きましょう!」

カーリオが、先導して馬を走らせた。

「ええ、そうね……」

3人は、ラドルフィア魔法学院へ向かった。


学院に着くと、学生たちが祭りの準備をしていた。

「おーい!それこっちに持ってきてくれ!」

「待って!それ順番が逆よ!」

「どいた、どいたー!」

みな忙しそうに、花の飾りつけの準備や楽器の演奏、それから踊りの練習や衣装を作っている者たちもいた。

エルディアたちは、その喧騒の中を歩き、学院長のいる部屋へ向かった。

歩きながらエルディアは、シュリンが楽しみにしていた事を思い出していた。

(シュリン……このクエストが終わったら、彼女と祭りに……)

「そう言えば、ヴァルプルギスの時期でしたねぇー」

カーリオは、楽しそうに辺りを見ていた。

そして、そんなカーリオとは対照的に、クフィンはあまり楽しそうではないようだった。

「……飲んだくれの馬鹿どもが、騒ぎを起こさなければいいがな……」

どうやら毎年、彼は喧嘩の仲裁などを自警団員として、していたようだった。

そして、学院長の部屋の扉が見えるところまで彼らがたどり着いた時、その部屋から出てくる者がいた。

ふくよかな体型をした女だった。

その人物は、学生寮の寮母をしているリーネ・パルトワだった。

口うるさい女で、3人にとって苦手な人物でもあった。

部屋を出て小さくため息を付くと、彼女は歩き出し、エルディアのところまで来ると、彼女たちに気づき、話しかけてきた。

「……あら、エルディアにカーリオ、それにクフィンじゃない」

「こんにちは……」

「これは……リーネさん、どうも……(これは少し参りましたね……)」

「………」

「確か……シュリンから聞いたけど、クエストをやっていて、この町を出て行ったって言っていたけど……?」

「……はい、それが終わったので、それを報告しにラドラー学院長に会いに来たんです」

「あらそう……だけど、学院長……今は居ないみたいよ。中に掃除しているおばさんがいて、杖?だったかしら……そう言うのを家に取りに帰ったって言っていたわ……あの人、居ないことが結構多いのよ……何やってんだか……あたしも用事があったのに!」

「杖……ですか……」

3人は、それを聞いてピンと来るものがあった。

それは、このクエストを依頼された時に、彼が持っていた不気味な杖だった。

「あたしは、用事があるから行くわ」

「はい……」

そしてリーネは、歩き出そうとしたが何かを思い出し、エルディアたちに話かけた。

「あ、思い出したわ!カーリオ、あなた生徒に声をかけ過ぎよ。少しは自重して頂戴!それから、エルディア、シュリンに、あまり部屋に鉢植えや植物を入れないように言っておいて!虫が湧いて、困るのよ」

「は、はあ……善処してみます(この場合は……口答えしない方がいいですからね……)」

「すいません……私からシュリンに言っておきます……」

「とにかく、頼むわよ!」

「はい……」

そう言って、リーネはどこかへ行った。

残された3人は、リーネが言っていた、杖について話していた。

「やはり、あのとき見た杖のことなんだろうな」

「気に入っていた様子でしたしね。恐らく、何か分かったんでしょうかね」

エルディアは、どうしていいのか分からなかった。

そして、どうするかクフィンとカーリオに聞いていた。

「じゃあ、どうしようか……」

するとカーリオが、扉の前まで歩き出した。

「……私が、掃除の方にいつ頃出て行ったのか、聞いてみますよ」

そう言って、カーリオは学院長室に入り、中で掃除をしている人物にオイゲルが出て行って、どれぐらい経つのか聞くために部屋に入った。

そして、すぐに部屋から出てきた。

「聞いてきましたよ」

カーリオが聞いたところによると、朝すぐに彼は家に取りに行ったまま、帰ってこないと言うことのようだった。

「朝なら結構時間が経ってるわ……」

「そうだな……」

エルディア達は、少しの間考え込んだ。

ここで待つか、学院長の自宅まで報告に向かうか。

そして腕を組みながら、考えていたカーリオが2人に聞いていた。

「うーん……ここで待っていても仕方が無いので、我々から学院長の自宅へ向かいますか?」

「さっさと終わらせたいし、そうしよう。クフィンそれでいい?」

「わかった、すぐに行こう。俺にもカーリオに付いていた睡魔とやらが、襲ってきたようだ……少し目蓋が重い……」

「ふふっ、クフィンも睡魔には、勝てそうにありませんね」

「そうね……じゃあ、2人とも行こう」

エルディア達は、魔法学院から南にあるレイアークの町の学院長の住んでいる場所へ向かった。

オイゲル・ラドラーが住んでいる場所は、レイアークの町の中でも、特に地位の高い者や、富裕層が住んでいる場所であった。

町の北東にある地区だった。

ここには、エレーナ・マキュベルの実家もあった。

その地区へ、エルディア達は、睡魔と戦いながらたどり着いていた。

学院長の家にたどり着くまでに、様々な豪邸を目にしていた3人は、世の中の不条理をなんとなく感じたのであった。

「はぁ……持っている方は、持っていますね……」

「ここの警備をしている者から話を聞いたことがあったが、東のマルティウスにも、別荘を持っている者がたくさんいるらしいぞ……」

「そう……」

辺りは町の中心地ではないため、人気の無い、静かな場所だった。

また、家と家の間隔が町の中と比べると、大きい場所でもあった。

学院長の家は、鉄の大きな柵で囲まれた立派な家だった。

エルディアは、家を見た。

(大きな良い家……)

敷地全体を囲むように、庭師が手入れしたと思われる整った形の生垣があり、中を見ると季節の花がいくつか咲いていて、その近くに小さな人工の池があって、魚が何匹が泳いでいた。

そして門から家まで続く石畳の一本の道を進むと、赤茶色の屋根のある、白い壁の家が見えた。

そして、門の前に近づいた3人は異変に気づいた。

最初に気づいたのは、エルディアだった。

「……ねえ。この家……門と家の両方の扉……開いてない?」

エルディアの言うとおり、門はそのまま開いていて、家の方も良く見ると、ドアが僅かだが開いているのが見えた。

「……ん、本当ですね……」

「無用心だな……」

そして、3人はすぐに胸騒ぎを覚えた。

「……おかしいわ。普通開けっ放しなんてしないはず……」

「確かに……おかしいな……」

「エルちゃん、クフィン。様子を見に行きましょう!」

3人は開いていた門を通り、家の中へ入った。
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